10話 アクセス承認
■海軍捜査局 局長室
「既に使えそうなものは、殆ど目星が付けられている。これはまともなリストね」
海軍捜査局の局長、アルテミス艦隊の司令であるメリナ・ハイマン提督。彼女から提供されたゼノ・テック……マスター・パワーを使うことを前提に製造された兵器群。データ・デバイスのリストを精査していたアンジェラの一言目がこれ。目星が付けられている、とは?
「エレナ・ローデンシア提督やらクラウディアが検討をつけていた、ということ。作った人間の理性的な部分が残る兵器群は……再生者が頭領となる統合軍で運用できるだろうとチェックされているの」
あぁ、そこで出されたリストの一部を見てみると……立体的に投影されるデータに見覚えがある。例えば惑星ヤマト04で使われたタイタン用の刀剣。武器といえば小さいカテゴリーのものはそれで、艦船のような大きいカテゴリーでは次元潜航艇のようなもの。
「クセがないものは殆ど統合軍で運用される前提で引き抜かれる予定、つまり私に見せたい方は」
「いやそんな、クセがあるモノの方って言うのォ?」
「いえ、クセしかないものです」
在庫品処分どころか、手に負えないものをこっちに投げているだけではありませんこと!?そんな視線で見てもメリナ・ハイマン提督は笑顔一つ崩さない。一方これらを抱えて、こちらに派遣される予定のクレア少佐は「もうどうとでもなってくれ」って顔だ。ううん、頼もしかったんだけど……だいぶかわいそうになってきたな。
そもそもクセのありなしで押収品を検証どころか運用するぞってやっていいんだろうか?とんでもないその……よくないことが隣で行われている気がする。気がするどころじゃない、これよくないやつだな?ようやくわかってきたぞ……ハイマン提督のやりたいことが。
「あの、今更なのですがアンジェラが使うとか精査するとか試験するモノはいいとして……この、既にチェック付けられているものらを統合軍で運用するというのは大丈夫なのでしょうか?条例とか法令的に」
「何をおっしゃりますか。捜査局長でありアルテミス艦隊の司令である私と、統合軍総司令官であるあなたが承認したものではありませんか」
アンジェラのはさておき、そっちはした覚えがない!した覚えがないが……次元潜航艇艦艇のところ、監獄要塞で使われた履歴!もしかして完全に事後承認でコトを進めていたってコト!?クラウディアなんてことを!まぁ……うん、まぁその……助けられたし、いいよもうそういうことで。絶対よくないだろうが。
「仮想実験の話なのです。どの程度ゼノ・テックを含むものなのか……非常時には通常の技術に切り替えられるのか。それらが比較的担保されているものは、工業的に設計する段階で運用に余裕があります」
つまり担保されてないわけだね、この新しいリストは。
そのクセモノばかりの兵器リストは……文字列ばかりで、小さく読みにくいなと思っていたら。アンジェラが私のスマート・ウォッチを使う様に伝えてくる。こういう複雑で読みにくいデータも、私に分かり易いように処理変換してくれるものだというが。はてさて……と、スマート・ウォッチとデータ・デバイスの接続を承認すると……私の手元に浮かびだすデータ!画像と文章でわかりやすく整理してくれている!
カラフルな画像データと、ひらがな交じりの文章で。
扱うのがタイタン用、つまりアンジェラのもう一つのボディであるため……銀のボディに赤でマーキングされた巨人の姿がでんと中央に描かれて。そのサイドのスペースに彼女の得意とする戦法や、攻撃方法が写し出されている……彼女の融合時のポーズや、デバイスも含めての紹介で始まる見開き。
そして隣のページ……ページ?捲ると彼女が望むような利用に使えそうなモノを、押収品リストからピックアップしてくれている。ただし、その……児童誌の会社が出しているようなムック……そんな体裁で綴られるようなコマ割りで。
結晶鉱石体で作られた巨大な炎の鳥や、稲妻と共に走るこれまた巨大なライオン、氷と水球と共に宇宙空間を泳ぐ海洋類……シャチ?イルカ?とか。すごいかっこいいエフェクトと切り抜きに解説を添えて!それらを外装として纏い、武器ともして戦うアンジェラの雄姿!やったー!かっこいー!
いや、これはだいぶおもちゃすぎないか!?
私にわかりやすいように変換してくれているらしいが、ちょっと恣意的すぎる?流石にこれはどうなんだ、とアンジェラを見るが……滅茶苦茶嫌そうな顔をしている!そこまで嫌がらなくてもさ……!私もびっくりだし、このぐらいにこう……理解度をダウングレードされても困るよ私も!これ海軍捜査局が押収した違法兵器のリストを元にしているんだよね!?
「バファムトの外装使用を再度要請するわ」
「似たようなもんだし……こっちの方がまだ安全そうじゃない?」
「全然ッ違う。この珍妙な巨大生物は何?この絵もふざけすぎ」
「まぁその……この表現はさておき、今のアンジェラがバファムトみたいなのと戦うには決め手がないのも事実じゃないか?決め手となるようなものは多い方がいいよ」
図星、というよりも現状考えていることに至った事実。巨大遺跡構造体で使った……巨大工具?みたいなブレードは戦うための強力な武器としてはまぁいいだろう。しかしあれもプリムが作ったもの。バファムトがアース・ゼノンをボコボコにしたように……何かしら対策を使ってくる相手とカチ合うかもしれない。
それこそ機械福音教団の、ネフィリムⅢと呼ばれる……彼女らが融合した巨大人型兵器のように。あの時の私は彼女らと戦う初回だったから有利に運べたものの、次に会う時は絶対に対策されているだろうなという確信がある。それこそアンジェラなんて、勝利を呼ぶものとしての二つ名があるくらいであるし。後手に回るしかない……緊急事態が多いのなら相手がこっちと戦うつもりで準備をしていることが殆どだろう。
「まぁこれだけあればミカエラやカナタも一緒に何かできるかもしれないし」
「現状では考えられないわね、私が試してみないと」
「えぇ、そんなアンジェラがまず試す必要があるの?」
「アンジェラは特殊技能兵、タイタンとの融合係数が最も高い適合者です」
えっそれはすごい!たぶんすごいんだよね?いや……たしか、彼女の戦いぶりを見ていると他のミカエラやカナタより軽妙さがあった。あれだけ巨大な体を身軽に……本当に自分の体として扱えるからこその勝利をもたらす者ということなのだろうか。それはすごいじゃないか。
「それが故に条例や前例に倣いタイタンの方で係数調整をしていたのですが、対ゼノ・テック運用を省みて完全に機械駆動式のタイタンに変えたと聞いています」
「生体サイボーグの適合率を上げるにはタイタンの構造内部に生体パーツを使うのが一番なのよ、今はそれを全て機械駆動式に置き換えている。だから、私がやるのよ」
だから故に一度の融合で極端に消耗しているんです、とクレア少佐が補足してくれる。取り締まりの対象であるタイタンの専門知識があるのだから、この人物選定や自薦がどういうことかも理解しているようだ。ちょっと彼女を見てるとそこから詳しい説明を入れてくれる。
機械式だから、それらのゼノ・テックを運用している最中に何か起きた場合。中断手段として該当箇所を爆破し切除すれば……最悪の事態は防げる。バファムトの場合は最悪の事態にそれらシークエンスが正常に行えない可能性があると。
「いや融合しているのに爆破して体の一部をパージって!そんなことを……それが必要な時にやったら!」
当然危険だ。これらなんか、超巨大な超人造?生物?のと融合して戦っている時に「ダメだったから爆破します」とかで腕を吹っ飛ばしてしまったら、痛みもそうだが何が出来るというのだ?おそらく戦っている相手もいる状況だろうに!
「そのデバイスはそうならなそうなものを、選んでいるのではないの?」
「う、う~ん……そう言われればそうかもしれない」
バファムトのようなのとは違うから……大丈夫、などとは言えない不安だが。デバイスから送られてくるデータで「既に姿が見えている」というビジュアル面での安心感がやはりある。その……デバイスの私への理解度推定のグレードがここまで低いのどうかだが、わかりやすいことは伝わりやすく。ここからのことを考えやすくもなる。
「このビースト?が選定された理由もあるはずだし、まずこの……この?この彼らからで考えてみよう」
「いいわね、クレア少佐。あなたはこの……鳥とライオンとイルカを連れてくることになるのだけど」
「もうちょっと、もうちょっと違う職務内容だと思っていたことは今伝えておきます……!」
「スター・ブレイザーにはまだまだ余裕があるとアヴァロンから聞いています。エレナにも通達しますが、そこに専用のスペースを作らせましょう」
クレア少佐、私もだよ。 この各々のスペース・ビースト?の彼らはなんか……説明のところに知らない惑星とか星系の名前があるけど何?まず説明をして欲しいんだけど説明がないしで。これって明らかになるのかな?後ろのページ捲っても用語解説はないしさぁ。
えっ彼らに聞けば明らかにしてくれるんだ。
バファムトは物知りだな~




