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オリジン・シード  作者: 草間
アース・エンパイア~地球帝国~
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6話 デカい令嬢提督とリアル

■夜 セカンドアース ニューブリュッセル 郊外 厳戒態勢 が解放されたレストラン


 地球帝国の名家の令嬢であり海軍提督のエレナ。滅茶苦茶緊張しているのか、挙動があやしい彼女へ……泣く子も休暇を取る20世紀最強洋画名言集を用いた社交トークでまず対話を切り出したが失敗。あんまり遊ばずに、話したほうがいいかなと思ったもので……お互い席について、アルコールではなくお茶で一息をつくことを提案した。


 ついでにレストランの周囲に控えている海軍女性兵士ら……も緊張状態を解いてもらうようカタリナ副長に頼み。現在エレナは230はある体を小さく震わせ混乱しているものだから、次の指揮権限を持つカタリナ……モノクル美女に対して総司令が命令を出すという形で態々となるが。


 そういうわけで指揮系統を無視したものではないもの、集まっている女性兵士らもあぁもういいのかと緊張を解いてフェイスガード等を外し一息。この部屋はいいから、適当に飲み食いしてください。経費は……私持ちなのこれ?とカタリナに聞けば頷く。私有財産の管理はクラウディアがしているとも。すごいなクラウディア、私のお財布管理までしている。うちの大蔵大臣だよ。


 というわけでみなさまに出払ってもらい、部屋には私とエレナ。そしてカタリナ副長のみとなった。


「エレナは昨晩のことで、あなた方に働いた無礼を詫びようとしていたのですよ」


「えぇ、何を?そりゃ食事の時に来たのはびっくりしたけど、何かあったの?」


「……私的に他の男性の方と会合をしているときに、無断で割り込んできたことです」


 あぁそれで?というあたりでカタリナも私に、エレナが思うようなことを感じていないことを感じたか。彼女のもつサーベルを取り上げて預かり2歩下がる。その顔には本当になんでこんなことになっているのだか、という顔。お疲れみたいだな……いやそりゃそうか、私はカタリナに連絡して食事の席とかそういうのでと頼んだにこれだから。


「まぁその件は置いておいて……カタリナ副長、カタリナも楽にして。とりあえずお互いの認識がズレているのを調整しよう。すり合わせ?」


「ズ、ズレているんですか!?いえそんな、私の方が至らないばかりで先走り」


 まぁまぁ、まぁまぁと……だいぶテーブル席の距離が離れていたもので、席だけ運び。エレナのほぼほぼ対面に持ち込み、そこに腰を下ろす。本当に至近距離なもので、私の顔の位置が彼女の胸の位置にあるのだが……下心はない。


 うお、でっけぇな!でっけぇな!二度目はヤマビコだよ、ダハハハ!と言いたくなるものだが……だ。決してスケベ心はない。21世紀でも34世紀でも……私とエレナ、60以上ある身長差(ヒールもあるしもっとか?)でこの距離は身の脅威を感じるかもしれないが、とにかく間近で……物理的距離で身近にまで寄ったことで、こちらに警戒心はないことを示した上で。歩み寄っていることを、まず自分の身をもって示して対話の席にいることを伝えないといけない。


 エレナは滅茶苦茶同様してまぁ目の前の胸がそこそこ揺れている、すげぇ迫力だがさておく。カタリナの目がちょっと「ほぉ……」というような目なので怖い。モノクルのフォーカスがこちら、いかん目の魔で大波を作る胸で思考がズレる催眠術かな?さておくったら……さておく。


「まず初めに。男女の……そういうのが乏しく機微に疎い私でも、夜にアルコールもって部屋に入られればどう思われているかは察しがつくのだけど。そこまで慕われる心当たりがない」


「それはありえません!」


「ありえませんね」


 何が?えぇ?と困惑していると……先ほどまで動揺していたエレナですら、カタリナを見て「間違っていないよね?」という顔をしている。カタリナは、また溜息をついて……ちょっと腰を据えて話さないといけないと感じたのか……彼女も席をひっぱってきて隣に座り始めた。私の顔の隣に、これまた制服に包まれる豊かな胸部を並べるように。ぐぅ視線がバレてる。


 「まずもって、あなたが目覚めた時……私も巨大遺跡構造体(メガストラクチャー)にいたのは覚えていらっしゃるでしょうが。エイリアン・モンスター。宇宙怪獣の艦隊を単独で殲滅できた存在はいません。地球帝国や銀河連邦人類にとって異例だった、第一次地球防衛戦の時のような状態……1000年前の恐怖の歴史的事象を一人で阻止したのです。その神話の再来のような出来事。目撃したものは皆、真の救世主が現れたと思うでしょう」


 それは箇条書きマジックではないか?


 目覚めて訳の分からない時期にやらかした出来事でしかない。あの時はアンジェラやみんなが、私の身のために……遺跡に残って囮になりというようなことを言い出すものだから。何も考えずにやってしまった結果でしかない。私はそれを正直にカタリナとエレナに伝えたが、それでもカタリナの……今度はエレナからの弁が始まる。


「目覚めて次に行ったのが、海賊軍になるしかなかった退役軍人の救済!ギルドとも同一視され、海兵隊や軍人のセカンドワークになっているような……現役の人間だからこそ耐え難い状況を変えてくださったのがあなたなのです!おわかりですか?地球帝国を構成する女性のほぼ全てを救済し、未来を保証したようなものなのです!」


 それは言い過ぎだし、困っている人はもっといる。いた、のだ。それを見せつけられたのが……機械福音教団(エヴァンゲリウム)。彼女らの方が、私よりずっと早かった。もちろんやり方は到底受け入れられないが。でも彼女らは救っていた、それを認めなければならない。じゃぁお前は何してたんだよと、私は自分へずっと思っているわけだし。


「それはあなたが思うことでは。第一眠っている間に起きていたことではありませんか。あなたは目覚めて、成すべきことを成している……いえ。成してほしいことを成している」


「そして銀河連邦と地球帝国のみの問題にあらず、長らく闇に潜んでいたエルダーとの戦い!エルダー大戦という銀河神話の時代に退けられた……ダーク・エルダー!そのバファムト、宇宙を崩壊させるために姿を現した宇宙超獣バファムトを見事うち倒したではありませんか!」


「エルダーは文字通り宇宙長命種とされて、不死の存在と思われていましたが……それをまさか滅ぼせるとは」


「いや()()()()()()。ちっちゃくなって、私の中にいるかな。私とクオンとで一緒に見てるけど、かわいくなっている。最近ねんど遊びがね……うわっ」

 

 エレナとカタリナが、同時にお茶を噴き出し咽た。本当に至近距離だったもので、彼女らの十字砲火(クロスファイア)を受けてしまうが。カタリナでさえモノクロにひっかぶってしまい、ナプキンを取り。慌ててエレナとで私を拭こうとしたが衝突したもので、自分で拭くからと各々自身を任せ。


 しかしそんなに驚くことか?あのファンタジー存在たちが私の中でわちゃわちゃやっているの、何ら不思議じゃないだろうに。この宇宙には()()()()だか黒だの白だの灰色だのの()()使()いがいるようなもんじゃないか?とんでもないな、この宇宙は。


「大変、大変失礼しました。聞かなかったことにしておきます」


「と、とにかく!あなたはすごいんです!我々が共にあれる、同じところにいれるというのは大変光栄で名誉で……終生の誇りになれるもので!なにかこう……どうにかして統合軍という軍籍以外でもお近づきになれれば、と!ですから!昨晩は!」


「それで会ってどうだった?」


 それは、それは。とエレナは言い淀んでしまった。目の前いる……君らが噴き出して頭からひっかぶったお茶を拭いている私はどうだったか。いやそんなもの言わないでもわかる、珍妙でよくわからない存在だろうと。ジェネレーションとかジェンダーなギャップっていうのだろうか。


「よく、わかりません」


「人物像として掴みにくいところはありますが、我々を受け入れてくれているとは」


「それでいいでしょうさ、まだ会ってそんなに経っていないし。正直に伝えてくれたことがうれしいよ」


 彼女ら曰く伝説とか神話みたいなことをしているらしいが、それでも私はリアル。現実に存在している。自分でいうのもなんだが、彼女側からするとレジェンド・ヒーローではなくリアル・ヒーロー、いる側。だから現実として向き合い、人と人として認識を合わせて対話する必要がある。合わせられる存在でもある。


「君らがどう思っているのかはわかった。でも実態としての私はそうではない、自分の認識がそうではない。だからこそ……男女間の、はだ。10代の頃なら若い男女の熱で認識のズレなんて誤魔化せるが、我々は大人だしね」


 おまけに提督とか司令とか総司令官なんて立場もある。お互いの認識がズレたまま……どのようなものであれそのまま関係が続くと悲劇が生まれる。取り返しのつかないことになる前に、こうして話し合う時間が必要だったのだ。こればっかりは大人同士だからできることではないだろうか?


「私は急いでどこかに行くこともないし、君らから離れることはないから。そんな焦らないで、まずは……そう、友達から始めよう。ありきたりな言い方が、関係性を始めるのならそれが一番では?」


 そこでようやく落ち着いたようで、急いていたことを詫びるエレナの所作は美しく。流石は貴族の令嬢だなぁという具合で……本来に予定されていた食事を始めようという気持ちになってくれたのか。ちゃんとレストランの、テーブル席との配置に自らの手で変えていく。


 私もマナー的に席を戻したほうがいいだろう、と席を立ち……持ったところで。カタリナがオーダーをレストラン側に伝えるために出るからついでと私の椅子を持ち、 そのまま移動させてくれたもので着席するが。彼女は私から離れる間際に一言、耳元で囁く。


「我々のことを受け入れてくれるのはよろしいのですが、まず我々に慣れていただきませんと。他の男性ではありえない視線の動き、すぐわかりますよ」


 慣れて来たつもりだったんだがなぁ~!だめかぁ~!


 食事はおいしかったけど、まぁまぁ目のやり場に困る状況だったな……本日の夕食はさ!


 対面にいるエレナとの距離がそこそこあったのが救いか。これ以上恥をかかずに済んだし。 

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