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オリジン・シード  作者: 草間
アース・エンパイア~地球帝国~
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2話 太陽系惑星地球圏内慰霊式典

■ 地球帝国 首都惑星セカンド・アース 首都ニュー・ブリュッセル


 国際的な会合の場、即ち外交の中心地というのは目的によって場所どころか様相も変わる。


 例えば銀河連邦首都フィナメスはその首都機能の殆どを外交と商業機構に開拓事業と大使館や駐在、銀河連邦政治という機能に集中させている。それは地球帝国も同じであり、首都惑星であるセカンド・アースもまた同じくして。


 地球帝国と呼ばれる巨大な軍事国家と……その植民惑星の統治統制という機能の集約となっている。ここ首都ニュー・ブリュッセルも宮殿を中心に省庁という内外政治機能が集中しており、式典の会場である記念公園墓地も広大なものだった。初代とされる皇帝の石像であったり……池だったりバカでかいモニュメントがデンとあったり。


 式典であるこの日は、統治している植民惑星が殆ど集まるため……それぞれ国旗のようなシンボル・マークが記念公園にずらーっと並んで掲揚されているのだ。オリンピックかワールドカップか、それ以上の規模にも思える壮観さを際立てているのは……続いて軍旗も並んでいるからだろう。それらがどこがどうであれというのは、別に待機しているクラウディアが解説してくれている。手短なものでありがたい。


 紹介が終わると、次はこれと公務用衣装の仮面の下……に備えてあるサブ・ディスプレイに写るのは上空。そこには皇帝用の巨大戦艦、近衛騎士団の戦闘艦の戦列。それらにマーキングされた皇帝のものらしきエンブレムが海軍や海兵隊等のシンボルの列を従えているように見せつけている。天に軍艦、地に国旗と兵隊たち。まさしく軍事帝国の祭典というヴィジュアルをこれでもかと私に見せつけている。


 私?私は来賓席にいる。パワー・アーマーのフレームを装着し、その上にハリボテの再生者と呼ばれる仮面や装束……宗教?外交?用の公務衣装を被せられて座っているのが仕事。被りっぱなしで外から見ても中身が何がどうとかわらかないもので、寝ていてもわからないだろうが……流石にそういうところまではしない。小学校の朝礼じゃないんだからさ。


 マニュアルに従って、ただ座り予定の通りの所作を行い。そうこうしていると式典の来賓である私の挨拶のタイミングとなり。代読と言う形となるのでフィオナが代わって読み上げてくれる。しかし改めて思っても惑星国家の最高権力者に任せていいのだろうか?


 いや……そういえば私の公的な仕事をサポートしてくれる人は誰だろう?と考えてしまうとネロしかいないのではと思うのだが。そのネロではなくフィオナとなると……場合によりけりなのだろうか。地球帝国の、公的な式典となると彼女が出る他ないのか。他にポストがないのか……それともそういうものを含めてなのか。後で聞かないといけないかもしれない。とかく駆け足でやってるものだからさ、わからないところが多くて。


「……以上を持ちまして再生者の言葉と代えさせていただきます」


 自分の言葉とされるもの、文書作成の場にもいてリハーサル行っていたもの。ここで聞いているとドコか他人事であるような実感の湧かなさが困る。本当に大事な局面を迎えたのだろう具合だろうに、だ。文章の内容も了解しているし、これから世相?がよくなっていくだろう……()()()()()()()というのもわかる。


 しかしこの後の予定とされる晩餐会やらも……この衣装で続くだろうし、なんだ()()()()()()()日中の時間が過ぎてしまう。自由時間になったのは、晩餐会の前の夕暮れ時。フィオナを始め主要な要人はこの後の準備は我々に任せて、と私に休憩時間をくれたもので……だ。


 そこで一番手が空いてそうな、私の護衛でありロメオ分遣隊のリーダーであるアンジェラを……日中で気になった場所があるのでと誘い連れて行ってもらうことにしたのだ。頼みこんで。ここへ来るためスター・ブレイザーに乗船してからどうも余所余所しいアンジェラは、移動の車内でも言葉数が少なく。こっちがぺらぺら聞いてもあんまり答えてくれず。現地に着いたら教える、というものぐらいで……聞きたいことって現地に着く前に教えてもらいたかったものだが。


 そんな微妙な時間が過ぎ、目的地に着いたらついたで……もっと微妙に、困るような時間となってしまった。

 

■夕暮れ時 記念碑 墓地公園


「そろそろ晩餐会の準備を始めないといけない時間なのは、わかっているわよね」


「まぁ、そうだね。うん……そうだね、そろそろか」


「別に戻らなくてもいいわ。迎えが来るまで一緒にいてあげる」


 アンジェラの優しい言葉も、半分ぐらいしか入ってこない。彼女が最大限気遣ってくれているのも十分にわかる。私はただ……この巨大で幅広く伸びていく記念碑の前で立ち尽くしていた。沈みゆく陽光が磨き上げられた記念碑に反射し、私の姿を鏡のように写す。その鏡の世界の私は……数多く刻まれた名前の上に写し出されている。アンジェラは立ち位置のせいか、写し出されてない。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()連なっている。


 ……私はただ、ぼんやり立っているわけではない。


 フィオナ曰く高度に情報化され統制されている34世紀の地球帝国では、こうして記念碑の前にある機材にアクセスし……自分と関係ある近親者や血縁者。すなわち縁者を探すことが出来るというのだ。地球を脱して以後の数世代は……ここに集まり亡くなった家族や知り合いに想いを馳せて偲んでいたいたようだが今は珍しいもので……管理や清掃のドロイドが巡回するぐらい。


 無論そのデータは当時のものだけには留まらない。


 21世紀初頭には既に個人の情報はある程度国家で管理され、国民は行政との間での情報利便性を得ていた。なので私の情報を入れれば当然出てくるはずなのだろうが……私個人のものは特に目立つものがなく。失踪扱いになっている上に……失われたデータの一部。宇宙怪獣の地球侵攻時に欠けたデータの中にあった、と出てきたのだ。


 血縁者や知人や友人の名前を入れれば……数世代先の者たちぐらいは出て来てくれたが。私の知っている人や時間は……この中にだけ、残されていた。石碑に写る私の鏡像と同じく。


 私は本来()()()()()()()()()なのだ、ということを……今ようやく実感をもって理解してしまった。


 ことここで……今回の式典の前に第一執務室に集まっていたフィオナ達が、異様に緊張した空気を纏っていたことが(なんか式典自体を楽しみにしていた軍人であるアメリアやエレナはどうだかわからないが)何を意味していたかをも理解する。


 今も私の後ろで、私と記念碑から離れた場所で腕を組み……黙って私を見ているアンジェラの優しさも。


 自分の鏡像と向き合ったことで、例えようのない寂しさと悲しさ……虚しさが湧きあがってきてしまい、その虚像に向かって手を伸ばしてしまうが。私の後ろにいるアンジェラが……その存在が、私の手と心を鏡像から引き戻す。彼女の差し出した手を取ったあの時から、私はこの世界にいるのだから。


 私が取った手は、彼女の手であり……差し伸べる相手はは鏡像の自分ではない。今にいる彼女達へ、だ。


 空に浮いてしまった手のひらを強く握り、また開いて……アンジェラへ振り返る。


「34世紀の世の中は、ずいぶん困っているのがよくわかったよ。蘇った21世紀の人間に頼らないといけないなんて……しかもあんなに、大艦隊でだ!」


「あれでもまだ一部。どうしようもない時代が今……ハルカの時にも言ったのは覚えている?墓を暴いてあなたを引っ張り出すぐらいには破綻しているのよ」


「墓を暴いている自覚はあったんだ!」


 暴いた人が言うのかよ~と、笑うとアンジェラの厳しい顔が返って来たもんでそれ以上の言及はやめて……肩を竦めて顔を背けるシットコム・ドラマ仕草で流した。これ以上つつくとマジな言葉が返ってきそうだし、夕飯前に重たいものを腹に入れたくなかった。本当になんだか、ここ最近のアンジェラは嫌にヒリついている。


 配慮と心配に助かってはいるが、みんなそんなにマジにならないでほしい。困るよ!


「まぁあれだよ、そのあたりもわからないし……今回の訪問でさぁ~色々知るかなって!参謀の人も来てるんでしょ?アンリとは毎度食事しながらだからさ、長時間むずかしい話を聞けないんだよね」


「知らない方がいいこともあるわ、ここでの事のように」


「いやぁそれはよくないでしょ。もう事態が大きくなりすぎているし、知っておかないと取れる責任も取れないよ」


 一応の名目として宇宙怪獣(エイリアン)機械福音教団(エヴァンゲリウム)対策で銀河連邦統合軍は出来ている。しかしそれ以外は?そもそもなぜあそこまで地球帝国の離反者が集まらなければならないのか?銀河連邦の思惑は?惑星開拓機構のもだ。地球帝国も……なぜ私の下に軍事力が集まるのを許しているのか?


 他の惑星と同様に地球を再生させるには?させたいのか?とかとか。私が求められている、今の状況の真実を……何のフィルターも保護もなく見なければならない時がきた。


 エヴァンゲリウムのマシウスが言っていたように、私は今まで多くの事柄から目を背けていた。無論殆どアンジェラや彼女達の配慮によって目隠しをされていたわけだが……それでも、だ。フィオナが今回同行したのも、ここに来ることをそれとなく薦めていたのも……知る時が来たのだろう。知らなければならない時とも。目覚めたばかりの私で触れるには厳しい世界を、見せる時が来たと。


 受け入れられる準備が出来たのでは?と彼女らが下した判断を信じよう。判断する彼女らを信じる。


「よし、戻ろう。お腹が減った。どんな料理が出るのかな?アンジェラは知ってる?」


「知ってたとしても、あなたも私も食べれないわよ。座ってるか立ってるだけの違いなんだから」


「そんなぁ!楽しみにしていたのに!」


 地球帝国の首都惑星、ここに訪れるときはまたこの記念碑に来よう……来て、忘れないようにしようと。既に車に向かっているアンジェラの下へ早歩きで向かう。過去と今のどちらにでもいる私だから、できること……成し遂げられることもあるのだと。そういう証明は彼女らがしてくれているのだから、その報告に来るのがいいだろう。


 そのためにまだやることは高くそびえ、知らなければならないことは多く海より深く。そこへ登って潜ることを決めた心を……胸に詰め込みながら。

来年ぐらいから地べたに座って酒のみながら集まるやつなんですよ、今回のこう…あれは…

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