36話 降臨!嫉妬の魔女!
キィー
山道を車で駆け、鉱山付近に止まる。
「ありがとう。ここで降ろしてくれ。君も速めに避難してくれ。」
「3人とも、くれぐれも無茶はしないように、ご武運を。」
楽海さんが車で後を去る。
5分ぐらい歩いたのち、広めの採掘地帯にでる。
「反応があったのは、この辺りのはずだが…」
辺りには何か嫌な、雰囲気が漂う。
「妙に威圧感があるねぇ~、この感覚はあまり体験したことがないね。」
私はこの心臓をなぞられるような、首元に吐息が当たるような、死を直感させる、この感覚を知っていた。
「大魔女が来る…」
震えながら口にする。
シャン…シャン…
鈴の様な音色が響く。
岩と岩の隙間からドロドロとした赤黒い液体が流れ出て、形を作る。
頭には禍々しい、角が2本生え、右顔面は頭蓋が丸出し。髪は、ほどほどに長く、ウェディングドレスの様な黒い衣装を身に纏う。巨大な女の子。
「ほう、これが!」
炉さんが輝かせつつ、警戒を含んだ眼を見せる。
「いいなぁ…いいなぁ…皆、人間で…」
「すまないが質問させてくれ!君は大魔女かい?」
「うん、エルは嫉妬の魔女?ってやつらしいよ?」
その場の全員が驚いた。
理由は明白、一人称だ。
名前だった。魔女にだ。
「エル君といったかい?その名は誰から貰ったんだい?」
狂喜を孕んだ目で炉さんが嫉妬の魔女に語り掛ける
「え~とね、確か、お父さんがつけてくれたって、お母さんが言っていたの。」
本日2度目の驚きだ。
魔女に家族がいる。
魔女は形作るのは、人間の負の感情…
それなのに嫉妬の魔女は、まるで人間のように家族がいると。
「エル君!君は素晴らしい!ここまで意志疎通が取れるなんて!君が人間に危害を加えなければ是非!僕の研究に携わって欲しいよ!」
歓喜に満ちた声で嫉妬の魔女に語り掛ける。
「ごめんなさい。お姉ちゃん達からね、人間は殺しなさいって、言われてるの。だからごめんなさい。」
「そのお姉ちゃん達と言うのは、他の大魔女かい?」
嫉妬の魔女がこくりと頷く。
「ここまで人語を操れて、かつ、魔女の軍勢が、徒党を組んで家族ごっこをする?なんて、なんて、なんて、面白いんだ!」
俯き、顔を手で覆い、笑みを隠そうとするも、小さな声色から笑みが零れる。
「嗚呼こんなにも、死を予感させる物があるのに、どうしてこうも、ワクワクが止まらないんだ!」
「もう殺してもいいー?」
指を咥えながら恐ろしいことを口にする。
「2人は後方支援を頼む。」
小さな声で私達に合図を送る。
「いいだろう!エル君、君をこの手で消滅させなければ、ならないのは、とても残念だが…殺ってみなよ!僕達と君!どちらの信念が強いのか!勝負といこうじゃあないか!」
「これより業務を実行する!」
「「「変身!」」」
嫉妬の魔女との戦いが今、幕を上げる。




