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名前のない英雄譚【無能の白銀騎士】  作者: 木ノ添 空青
神殺しの少女編

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小さな流れ星

 賑やかな大通りを抜け、落ち着いた雰囲気の漂う噴水広場。

 少し用事があるからと、私とティナちゃんを残し、風花さんたちとは暫しの別行動を取っていた。


「かぐやはお腹減ってない?」

「あんなに食べたらお腹いっぱいだよ」

「そう? かぐやは小食なのね。いっぱい食べないとおっきくなれないわよ?」

「もう十分だよ。ティナちゃんは意外と食いしん坊だね?」

「むっ! 今馬鹿にした!?」

「してないしてない」


 ついさっきまでは『“ちゃん”っていうなぁ!!』とか『子供っぽいからヤメロー』とか言っていたのに、パンチさんたちと別れたとたんに何も言わなくなっちゃった。

 ……ちょっとだけからかってみようかな。


「……ティナさん。さっきはすみません。やっぱり馴れ馴れしかったですよね? 私生意気でした……」

「ふぇっ? な、なによ、今さら、そんな……」


 あっ、少し戸惑ってる。ここからどんな反応が返ってくるんだろう?


「ちゃ、“ちゃん”は友達の証だって、風花が言ってた。だから! だから……その、かぐやは、いいの」


 予想以上に可愛い反応を打ち返されちゃって、少し申し訳なくなっちゃったなぁ。

 戸惑いと恥じらいからか顔を伏せ、ぶつくさと呟くティナちゃんに再び飛びつく。


「~っ、嘘だよ! ティナちゃん!」

「んなぁ!? まさっ、あんたもあのマッチ棒と同じ部類なのね!?」

「ティナちゃんは友達だもんね」

「んがぁ~!!」


 本当にありがとう。ティナちゃん。


 でも、どうして私をこんなに気にかけてくれたんだろう。

 風花さんの言っていた通り寂しいだけのかな? それとも……。


「……ねぇ、ティナちゃん。どうして私を友達にしてくれたの?」

「はぁ? べつに理由なんていらないでしょ?」

「そうなんだけど、風花さんからもちょっと話を聞いちゃってね」

「風花ったら余計な事を……。まぁその、私も、辛い一人ぼっちを知ってるからよ」

「……ティナちゃん」

「っとにかく!! ジンだけじゃなくて、あたしも傍にいてあげる! あんたはもう一人ぼっちじゃないの! それに、あいつは必ず目を覚ますんだから」

「っ……、ありがと。優しいね」

「べ、別にいいわよ」


 そっぽ向いてしまった小さな頭に手を添える。

 すると突然、あっ! と声をあげ、夜空を指差した。


「見て見て! 星がすごくきれいに見える!!」


 暗くなった空に、光の大河のような星々が瞬いていた。

 そこから零れ落ちるように、欠けた月へ向かって一粒の流星が駆けて行った。


「――ッ!」


 その流星に、例えようのない胸騒ぎを感じた。

 いつかの宵の屋上で、突然名前を呼ばれた時を思い出す。


「ティナちゃん……。あの、私」

「迎えに行くんでしょ? いってらっしゃい」


 私を見上げる星を映した澄んだ瞳が、早くなる鼓動を落ち着けてくれる。

 何も言わなくていいって言ってくれているようで。


「っ……、ありがと」


 再び人で賑わう大通りに飛び出し、大勢の人たちを追い越しながら病院へ。

 まだ完全な体調じゃないから、全然早くは走れない。

 でも、今の私の全速力で向かう。


 途中で疲れ果てて立ち止まると、祭りの打ち上げ花火が空いっぱいに咲き乱れた。

 淡い光に照らされた夜道の先で、胸騒ぎが私を呼んでいる。


 流れ星の先へ。

 背中を押されるように、私は再び走り出した。

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