表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名前のない英雄譚【無能の白銀騎士】  作者: 木ノ添 空青
神殺しの少女編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
64/85

息抜きでもいかがでしょうか

 うとうとしていた耳に、賑やかな声が飛び込んできた。

 知らない間にうたた寝していたようだった。


「……っと、寝て……」


 声? 誰だろう……。


「疲れちまったんだろ? お前声はでけぇんだから起こすなよチビ助」

「誰がチビよ!? あたしはもう13歳になりました~!!」

「誕生日が来たら身長も伸びるような人体構造ならよかったのにな」

「なんですって!?」

「お二人ともうるさいですっ!! 病室ではお静かに!!」

「……あ、あれ? 私、寝ちゃって」

「ほら起きちゃったじゃない! あんたのせいよコゲマッチ!」

「ハイお前降格しま~す。騎士学校の入学願書書いといてくださ~い」

「お・し・ず・か・にッ!!」


 ごん! という鈍い音がしたので、寝起きの目をこすりながら賑やかな方を向くと、おっきい人と小さい人が頭を抱えてうずくまっていた。


「あっ、すみません……。喧しいのを二人も連れてきてしまって」

「っ風花さん!? ティナさんに、パンチさんまで。私こそすみません。気付かなくて」


 そこには私服姿の精鋭騎士が三人も顔を揃えていた。

 いつもの凛々しい騎士服ではないラフな格好なのに、立っているだけで空気が張り詰める。


「み、見舞いに来たのよ。風花が一緒に来いってしつこいから」

「あ、あぁ。騒ぎ立てて申し訳ない」

「そんな、きっとジンくんも喜びます。とくに、パンチ部隊長は憧れなんだ~、ってよく言ってましたから」

「そりゃ嬉しいな。起きたら剣の稽古にでも付き合ってやるか」


 照れ臭そうに頭を押さえ、引きつった笑みを浮かべている。

 

 しかし、まさかパンチさんとこんな形で何度も顔を合わせることになるなんて思わなかった。

 ……アルデラントで失礼なこと考えてたの、バレてませんよね?


「それよりかぐやちゃん。陛下が心配なさっていましたよ? 退院してから休みなくずっと付きっ切りらしいじゃないですか」

「あはは……。ご心配をおかけしてすみません。でも、私は大丈夫です。今度は、私がジンくんを待っててあげなきゃ」

「相変わらずだな。こいつも隅に置けないねぇ」


 そういってニヤリと笑いながら眠っているジンくんのおでこを突いた。


「あんたよりは人間出来てるんだから当然でしょ?」

「こいつ……」


 また微笑ましい小競り合いが始まってしまった。

 風花さんはそんな二人を呆れたように眺めた後、溜め息をついた。


「まったくもう。それより、今日は陛下の命により強制連行させていただきますね」


 そういうと、私に手を差し伸べてきた。


「えっ? あぁの?」

「今週は精霊王様の生誕祭でしょ!? だから緊急以外は全て任務休止! 少し息抜きに出かけましょ?」


 そっか。今日から七月の初週。アルデラントでの生活も挟んでいたからすっかり忘れてた……。


 アストピアの七月初週は、精霊王様の誕生日に合わせて、丸々一週間、毎年各地で大規模な生誕祭が開催される。


 この一週間は仕事も学校も休日という事が決まっている。


「そ、そうですけど……、ジンくんのお見舞いはお仕事ってわけじゃ」

「あのなぁ、今のかぐやちゃんの疲れ切った顔色見たら、ジンだってきっと心配すると思うぜ」

「……っ」

 

 そう言われて、思わず言葉に詰まった。


 確かに最近、自分でも驚くくらい病室に籠もりっぱなしだった。

 気を抜けば不安になってしまいそうで、眠っているジンくんの傍を離れるのが怖かったのかもしれない。


「あんた、まともにご飯も食べてないでしょ!? そろそろ露店も並ぶ頃だし、はやく行くわよ」


 ティナさんは呆れたように言いながらも、どこか心配そうだった。


「うし、俺は看護師に伝えてきますんで、風花さんたちは先に向かっちゃってください」

「わかりました。お願いします」


 そう言って病室を出ていく背中を眺めていると、ティナさんがぐいぐいと私の腕を引っ張る。


「ほらほら、何食べる? 今日はパンチの奢りなんだから遠慮するんじゃないわよ~」

「皆さん!? あの、私はぁ~!」


 騒がしく引っ張られながら、眠るジンくんの方を見る。

 その時、不意に彼が笑ったような気がした。


 ……そっか。じゃあ少しだけ。


 そんなことを思えたのは、きっと久しぶりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ