燦然と輝く
背後で響く断末魔と轟音にビクつきながら、パンチ部隊長と共に戦場を進む。
荒廃しきった街並みと、矢継ぎ早に破壊の種をまき散らす敵軍を見下ろしながら、奴の姿を探す。
「この辺りが街の終わりみてぇだな。っくそ、どこにいやがんだ!?」
地上に降りて一度周囲を見渡す。眼前に広がるのは、別世界のように静まり返った平原だけ。人の姿など見当たらない。
仰ぎ見た空は少しずつ白みがかり、明け空の境界が橙色に変わり始めていた。
地上へと視線を戻すと、曙の彼方から、誰かがゆっくりと歩いて来た。
「っ!! ……来ました。あいつが、ゴドナーです」
「あいつか?」
ついに、その姿を捉えた。その男はいやに落ち着いている。
表情は仄暗く、アルデラントの軍勢をたった七人の騎士に押し返されているにも関わらず、妙に穏やかだ。
「ゴドナー。あなたを断罪しに来ました」
「ふん、会いたかったぞクソガキ。あんな小娘一人に必死になりおって。おかげで大幅な作戦変更が必要になった。金もかけたくないのだ、そろそろ大人しくしていてもらえないか」
「ふざけるな。かぐやの命をなんだと思ってるんだ。現にあの子の精霊は、もう助からないかもしれないんだぞ!!」
「何を熱くなっている。端から殺すつもりだったのだ。当然であろう?」
「おまえっ……」
「おいアンタ。いい加減その口を閉じな。今すぐその首叩っ斬ってやる」
引き抜いた剣に朝日の如く焔が這い上がる。
僕の隣から一歩前に出たパンチ部隊長は、その切っ先をゴドナーに突き付けた。
「……見ない顔だな。威勢は上等だ、青年。だが、そんな悠長なことを言えるのも今の内だからな、特別に許してやろう」
「てめぇ、舐めやがって」
「いや舐めてなどいないさ。もともと眼中にすらないからな。それともお前は、道端の雑草にも舐められまいといちいち息巻くことがあるのか?」
「んの野郎。上等じゃねぇか!!」
――ッ!? なんだ、この気配!?
「パンチ部隊長待って!! ……何か来る」
「ふん、時間だ。とくと味わえ。これが最後の試練だ」
含みのあるような微笑を浮かべると、男は、戦火で真っ赤に燃え上がった空に右手を高々と掲げた。
同時に、眩しく輝く太陽が燦然と世界を照らす。その空に浮かんでいた雲の塊から、神々しく光を弾く真っ白な巨体が姿を現した。
「な、ーー天……竜、だとッ!?」
「そんな、なんで天竜がここにいるんだ!?」
「驚いたか? 教えてやる。天竜とは、我が国アルデラントが生み出した、対アストピア用の生物兵器だ!! 貴様らは既に、我々に侵略されていたのだ!!」
ーーギャァァァッ!!
そのけたたましい咆哮が、爆風となって襲いかかる。
吹き荒ぶ強烈な風圧に、地に着いた足が耐えられなくなり、簡単に吹き飛ばされた。
「ぐあぁっ!?」
「くっ……! こいつ、今までアストピアに現れた、どの天竜よりもでけぇぞ!!」
「当然だ。こいつは、今日のような日の為にとっておいた、最高傑作『クルス』だ。貴様らの国で放し飼いにしているトカゲとは格が違うぞ。……なんだったか? 貴様らの基準で言うと『測定不能』オーバーミリオンだったか。ふははは!!」
「――っく。一旦退くぞ! さすがに規格外過ぎる。一人二人でどうにかなるもんじゃねぇ!!」
「くっそ、……わかりました」
「早く掴まれ!」
「ふははは!! 足掻け足掻け。貴様らが遊んでいる間に、じっくりと神殺しを再開する策を考えるとするか。神殺しの種は返してもらうぞ」
背後に輝く太陽と天竜を従え、再び立ちはだかったゴドナー。
目測では何歩とない距離だったが、その一歩は、途方もなく遠いものだった。




