表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名前のない英雄譚【無能の白銀騎士】  作者: 木ノ添 空青
神殺しの少女編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/85

悪魔のエスコート

 地界への出発を夜に控えた午前中だった。

 それは、見覚えのない研究員が部屋に突然やってきた事から始まった。


 目には感情がなく、まるで人形のようだった。


「あなたが、ジンさんですね? 局長がお呼びです。午前十時になりましたら、八番研究棟の入り口までお越しください。無いとは思いますが、すっぽかそうなどとは考えないで下さい。我々も、手荒な真似はしたくありませんので」


 要するに、拒否権は無いと言いたいらしい。

 どうもあのゴドナーとかいう人の、人権などお構い無しだと言わんばかりのやり方は気に入らない。


 しかし、苛立ちとは別の何かが、モヤモヤと心を覆い始めた。

 なんなんだろう、この感じ……。

 止めどなく湧き上がる不安感。嫌な予感が止まらない。


 葛藤しながら研究員が出て行くのを見送ると、入れ違いで博士が入ってきた。手には実験の資料に見せかけた、今夜の作戦資料を持っていた。


「今のはゴドナーのとこの奴だな。何か言われたのか?」


 手短にさっきの出来事を聞かせた博士も、何かが引っかかったようで、疑うような眼差しを向けられた。


「なんか、呼び出されちゃって。十時に八番研究棟まで来いって。なんか嫌な予感がするんですよね……。どうしましょう」


 素直に答えを求めると、博士はメガネに手を添えて、何やら考え込んでいた。


「正直、ゴドナーの目的はわからん。先日お前があの少女と接触したことで、改めて関わるなと忠告するのが有力か。……正直なところ、行くな、と言うのが賢明なのだろうが……。あの豚のことだ、この部屋に押し入って無理矢理連行してでも目的は果たす気なのだろう」


 さっきの研究員も物騒な捨て台詞を吐いて行ったし、その可能性は高そうだ。

 博士は一つ溜め息を吐き、持っていた資料を差し出してきた。


「非常に業腹だが、この作戦はお前の存在が非常に重要だ。お前が使えなくなると……。あぁ、無能という意味では確かに使えないが。……しかしまぁ、ゴドナーに変な気を起こされるより、大人しく従っていた方が自然ではあるか」


 いつもの調子に戻った博士は、少し面倒くさそうに時計を眺めた。というかこの人も大概だな。


「わかりました。とりあえず行ってみます。何より、作戦を気付かれるのだけは避けたいですからね」


 そう言って僕は、少しずつ膨れ上がる不安を強引に飲み込んだ。



 ◇◆◆◇◇◆◆◇



 その後、最終的な打ち合わせをしていると、ゴドナーとの約束の時間が間近となっていた。


「いいか、くれぐれも疑われるな。あの豚は鼻が利くぞ」


 博士はそう言った後、何やらぶつくさと呟き、部屋を出て行った。


 その後に時間を確認すると、既に約束の数分前だったので、慌てて部屋を飛び出す。


「確か、待ち合わせは八番研究棟だったよね。あそこか……、って本人が待ってるじゃん」


 あの人の姿を見ると、嫌でも先日の件を思い出して怒りが込み上げてくる。

 全身に火傷を負わされた事も、かぐやを無理やり連れて行った事も、全く傷が癒えていない。


 だけど同時に、計り知れない恐怖が際限なく込み上げてくる。

 近付くにつれ、意図せず身体が震えだした。


「あ、あの。何ですか……」


 必死で体の震えを抑えながら声を掛けると、高圧的な眼差しを向けられた。


「……いいものを見せてやる。黙って付いて来い」


 そう言いながら歩き始め、僕も遅れまいと駆け足で後ろに続く。

 真っ白な白衣とは裏腹に、この男から滲み出るドス黒い雰囲気。それは、二歩離れた僕にも容赦なく絡みついて来る。


 なんだろう。あまり良い印象を持たれていないのは承知の上だけど、その上で見せたいもの。

 だけどこれだけはわかる。決して、喜ばしいモノでは無いだろう。


 大股で進んで行くゴドナーが辿り着いたのは、未踏の地、零番研究棟だった。

 通常は関係者以外立ち入り禁止とされ、ガリベニアス博士からも、ここには決して近付くなと警告されていた。


 何故ならそこは、神殺しの実験場があると噂される場所だった。


 歩いてくる道中で、もしかしたらとは思ったが、いよいよまずいことになったかもしれない。

 もしかして計画のことがバレた? なんでこのタイミングで僕をここに?


 嫌な想像ばかりが頭をよぎる。

 ゴドナーは歩調を緩めることなく、研究棟の重厚な扉に向かって行った。


 扉の横についていた小さなガラス板には数字や記号が無数に並び、ゴドナーはそれにいくつも触れていた。

 小さな音がした後、そのガラス板に手をかざす。


 目の前の大きな扉がゆっくりと動き始めた。

 刹那、口の開いた扉の向こうから、今までに聞いたこともない不快音が漏れ聞こえた。



「――イヤァアァァーーッ」



 一瞬で全身の筋肉が縮みあがった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ