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アルランティアの日記   作者: 倉門 輝光
人間界
99/117

魔皇帝マルコシウス

加筆で長くなったので、「動き出した作戦と魔皇帝マルコシウス」と「魔皇帝マルコシウス」を分けて二話に変更しました。 (2026/5/7)

更に遡り作戦会議の夜の事から話して行こう。


 3日前の作戦会議の夜、まず俺が誘拐された時の状況を皆に伝える為に、言葉で話すより見せた方が良いだろうと思った俺は、精霊界で見せられた映像をそのまま大型スクリーンに映し出した。

 起こった出来事そのものを見せた方が正確な情報が伝わる。更に、俺では解らなかった事を父上達は気付くかもしれない。


 シモーンの水鏡を見ていたので、こちらではそういう魔法が普通なのかと思ったが、どうやらそうでもなかったらしい。口々に『これが神の御業』等と言っている。


 史朗だけが笑いながら「歩く映画館、お前は ’どこでも上映くん' だ」と言った。 


 俺は 'どこでも上映くん' 。嬉しいようなそうでもないような…。



 とりあえず再生を始める。


 賊が侵入して来て幼い俺を袋に押し込む場面を見て、姉テレーシアが悔しそうに画面を睨みつけた。母上がそっと寄り添いテレーシアの手を握り、そしてお祖母様が2人を抱き締めた。

 城を出て街の門で俺を受け渡し街の中に戻る犯人達。そして俺を受け取って街の外に連れ出し転移を繰り返し移動をする犯人達。その犯人達の会話により黒幕はワルノーであると明確になる。


 食い入るように映像を見ていたお祖父様が、己の手を汚さずに、人の弱みに漬け込んで動かし悪事を働かせるやり方に、『ワルノーめ、なんと汚い奴だ』と怒りを顕にした。


 更に犯人の1人がそれを裏切って私欲の為に俺を外国に売り飛ばそうとする場面では、『どいつもこいつも、己の事しか考えぬ者共め…。消し炭になるまで燃やし尽くしても飽きたらぬ』とお祖母様が言う。

 これを見たらショックで倒れるのではないかと思っていた母上までが、『一気に燃やし尽くすなど生ぬるいですわ、お義母さま。むしろじっくりと己の罪の深さを身を以て知って頂かねばなりません』とまさかの発言。俺と史朗、そして姉までもが驚いて固まった。 


 「お前んちってさ、全員が戦闘系なんだな」と史朗がボソボソささやき、俺も無言で縦に首を振る。


 もう1人の犯人、自領の兵士は良心が咎めながらも人質にとられた家族を救おうとしている姿に、『此奴のしたことは許せぬが、目を付けられ理不尽に脅された事は哀れと思う…』と父上が呟いた。

 騎士団長が、『何事かがあった時に、信頼し打ち明けられる環境を築かねばと反省しております…』と言った。


 どこかの草原で、追って来た騎士団から逃れるために転移玉が使われた事、それによって犯人は馬車と共に崖から転落し、俺は妖精達に助けられたが、時空の歪みによりこの世界からどこかに飛ばされる事となった流れを見て、『あの時に照明魔法を撃ったのは私だ…。あと少しでお前を救うことが出来たのに…あの転移玉とは一体何なのだ』と父上が悔しそうに言った。


 しばらくの沈黙の後、父上が10年前の捜査の際に、犯人の逃走の痕跡を追った者を思い出したようで、その能力の高さが引っかかると口にした。 


 『あの者、ダレンと申したか。この映像を見ると随分と正確に追っていた事がわかるな。しかも転移ポートだけではなく転移玉の痕跡まで。グレゴリーよ、今更だがあの者は信用に足るか?現在はどの部署にいるのか?』と騎士団長に問う。


 『はっ。ダレン・スミットは現在も魔法研究開発部にて魔法具の開発と研究を行っております。働きぶりは真面目ですし、常に期日を守り成果を上げております。確かダレンの妹が王宮にて魔法省の事務局に勤務しており、中央の公開情報が発表と同時に我が領に届くようになっており重宝もしております』 


 『そうか…。些細な事かもしれぬが、あまりにも移動についての読みが正確過ぎるのが引っかかる』


 『…実はわたくしもこの映像を見て疑問を覚えました』


 『うむ。そもそもあの転移玉とは何だ?あのような物が流通しているという報告は受けてはおらんぞ』


 『わたくしもです。…ですが、あれを開発した者に心当たりがございます』


 『…ダレンか?』


 『はい。数年前…恐らく5〜6年前かと思います。稀に起こることですが、その時は警備の者が怪我をしたと報告を受け、非番であったわたくしが変わりに城内の夜間警備に加わりました。開発研究部を通りかかった際に、既に全員が退出したと記録にあるにも関わらず、明かりが漏れて人の気配がしましたので、怪しく思い室内の様子を伺いました。

 すると、記録では帰ったはずのダレンが1人残って実験をしていたのです。見知った者ですから声を掛け、何をしているのかと尋ねると、慌ててやっていた事を隠そうとしまして。その様子が気になったので少ししつこく問いましたところ、「まだ実験段階ではあるが、広範囲に結界を張れる物を考案中だ」と申しておりました。上手く行っておらず恥ずかしいので内緒で進めているのだと。

 研究者とはそんなものかと思いましたが、その開発中だという魔道具に付いていた印が、映像の転移玉と同じでした』


 『印?製作者の印か』


 『はい。皆様ご存知のように魔道具は作った者の印が刻まれます。それによって作った物の管理をしています。責任の所在が明らかでない物は公の場では流通が許されませんし、また、特許なども関係してきますので、開発者は自身の能力を示す為に必ず印を残します。…もちろん完全に闇取引等の物であれば別でしょうが。

 あの時にダレンの秘密実験で見た物には映像と同じ印が付いていました。普段ダレンが使っている印とは違ったので『素晴らしい物だが、印が違うのでお前が発案したのではないのだろう』と指摘すると、憤慨したように『これは間違いなく私の印です。流通させるには足りない研究段階の物に付けているのです』と言っておりました。

 今思いますに…実は研究段階の物ではなく裏取引用の印だったのではないかと』


 『ダレンを探るべきだな』と父上が言った。



 そして翌日ダレン・スミットは捕まった。


 翌朝、出勤した彼の元に行ったバーティスが口から、ピーピーというおかしな音を出し止まることが無かったからである。

 即座に捕らえる動きになったが、ダレンは攻撃魔法に長けており、捉えようとする騎士達に苦戦を強いた。更に、鞄から小さな転移玉と思われる物を出して、その場から転移をしようとしたようだ。

 バーティスの話では、空間が歪むように見えた瞬間に、バチン!という音がして、複数の切り裂き傷を負ったダレンがその場に崩れ落ちたという。どうやら転移に失敗したらしい。


 その時に、いつの間にかそこにいたのが魔皇帝マルコシウス三世とその配下の者2名だった。 


 いきなり現れた見知らぬ3人に驚き警戒をするバーティスや騎士達を後目に、涼しい顔で『転移を阻止され反動で痛手を追ったであろうに、まだ足掻くか』と言って、更に逃げようとするダレンの魔法を軽々と抑え込み、配下の2人に捕らえさせたのだという。 


 唖然としつつも警戒する様子を見せるバーティス達に、『この者は咎人であろう。捕らえてやったぞ』とダレンを引き渡し、『さて、白銀の御方はいずれか』と問うたという。

 うっかり問に答えそうになり、一瞬変な歌を歌ってしまったたバーティスが『こっ、この場ではお話出来ぬ』と言ったとか言わなかったとか。 


 騒ぎを聞き駆け付けた騎士団長グレゴリーが、突然現れたという不審な者達に対峙する。バーティスに事情は聞いた。そして、バーティスも己もピーと言わない事から敵ではないという事だけはわかる。だが、何者だ?


 警戒する騎士達を一瞥し、気怠そうに『我は白銀の御方に御挨拶に来ただけだ』と言って、騎士団長グレゴリーに目を止め、『その方、白銀の御方を存じておるようだ。疾く案内せよ』と命じた…らしい。 

 怪しい奴!と捕らえようとする騎士達の全てが瞬時に動きを封じられた。グレゴリーも自由な動きを封じられ、抵抗を試みながらも言われたままに身体は動き、城の奥へと進み始める。

 気力を振り絞りかろうじて『閣下に急ぎお伝えせよ!警戒を!』と叫ぶ事が出来ただけだった。


 聞きつけた動ける者の1人が慌てて知らせに走る。新たに駆け付けて来た者達は、騎士団長を救おうと挑みかかるが、近づくことも出来ぬままに従者2人に転がされる。魔導騎士も全く歯が立たなかったそうだ。

 騎士団長は反撃の機会を狙うが自由に動くことが出来ず、敗北感だけが大きくなって行った。このような力を持つとは一体何者なのか。


 『おまえは何者だ…』と声を絞り出す。


 『ほう、まだ話せるとはな。人間(マン)にしては見どころのある男だ』


 そう言って楽しそうに笑う謎の男は唸る騎士団長に答えて言った。


 『我は魔皇帝よ。白銀の御方がこちらにお戻りであろう?先程も言ったが、ただ御挨拶に伺っただけだ。何も案じることはない』

 


 

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