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アルランティアの日記   作者: 倉門 輝光
精霊界
86/117

俺宇宙の旅 2 本当の俺

地球を見つけて家に帰ってみます。

78話で爺ちゃんフリードリヒが倒れた時の体験とリンクしています。

(2026/5/1)


 どんどん意識を広げていると、俺銀河の中の背中辺り?にある星が「あのう」と話しかけて来る。まるでアルプスの少女ハイジに出て来るペーターみたいな印象の星だ。そちらに意識を向けると、俺銀河の背後というか俺の背中側ずっと遠く後方の小さな渦巻を指して「あっちにいますよ」と教えてくれた。 


 おお!そっちか!俺は前方や左右上下だけを探っていて後方は意識してなかったらしい。

 なんて親切な星なんだ、ペーター星。お礼に君の光を強くしてあげよう。


 俺はペーター星が教えてくれた遠くの小さな渦巻に意識を向ける。すると、居た居た!地球だ。

 なんだ、グラウギリスと薄く細く消えそうな光で繋がっているじゃないか。

 地球のある天の川銀河を遠くから見ると、中央の光が独特で知的な感じがした。たくさんの意識体が集まってざわざわ話堤いる様で、それが音楽のように感じられた。まるで白い楽師が音を奏でているって感じだ。

 命名「白い楽師銀河」だ。あとで史朗に教えよう。


 白い楽師の長い袖の裾のあたりにひとつの太陽系があって、そこに地球が居る。

 地球は何だか疲れているようだが、それでもとても綺麗な星だ。青い宝石。真面目な星という印象だ。


 俺は意識で近付いてみる。懐かしい月もいる。あ…、地球側からは見えない方、月の裏側の表面には何か大きな大きな穴があるみたいで、そこには何か人工と思われる物が…。

 見ちゃったな、どうしよう。何だか地球人としての俺が「あんまり見ないでおこう」と言っている。うん、見なかったことにしよう。

 

 それよりも、息切れしているように見える地球にちょっと光をあげたい。一応、天の川銀河、いや白い楽師銀河の中央の光「白い楽師」にやっても良いかと尋ねると、「どうぞお好きに」という反応が帰って来た。

 俺はペーター星にしたように地球に光をあげてみた。だがあまり反応がない。何でだろう? 


 ふと「水だ」と思った。でも、「水の惑星」と地球人が言っているにも関わらずそんなに枯渇しているのか?

 俺は命の水、癒しの水、聖なる水を次々に与えてみる。でも何かが違う。俺はもうひとつ清めの水があるのを思い出し、それを与えてみた。

 すると、地球の中心の方に染み込むような、ごくごくと飲むような反応があって、まるで水を一気飲みした後に人がするように「ぷはー」と息をついて、そして「生き返った〜」と声がした気がした。 

 

 地球って今そんな感じなの?と思いながら、俺は爺ちゃんを探す事にした。

 ヨーロッパ大陸はすぐ見つかった。そこの北寄りの…あそこだ!

 見つけた途端に俺は大気圏に突入する隕石みたいに降りていく。ロートリングの森の俺の家がある。面白いな、プールに飛び込みをするみたいに一気に空から降りて行くんだ。

 

 皆びっくりするかな?皆からは見えないのかな?そう思いながらスピードを緩めて小さくなって屋敷に近づく。そして爺ちゃんの気配を辿る。部屋にいるのか?

 窓から入っていくと爺ちゃんがベッドに寝ている。そばには医者がいて点滴をしているぞ。なんだ?セバスとサナエが心配そうにしている。

 

 爺ちゃん?どうしたの?病気なの? 


 寝ている爺ちゃんが悲しみに包まれているのがわかる。寂しそうだ。辛そうだ。俺は近付き話しかける。爺ちゃん、どうしたの?俺はここにいるよ。


 「アラン、そこにいたのか」

 

 いるよ。


 「どうした?何故そんな顔をしている。何か困っているのか?」


 爺ちゃんが悲しそうだからだよ。


 「大丈夫だ。爺ちゃんがいるから、そんな顔をするな。大丈夫だぞ」


 俺もいるよ。だから大丈夫だよ。


 「セバス、アランが泣いているのだ。飴を持って来てくれ。口に放り込んでやるのだ」 


 そう言った爺ちゃんが明るくなっていく。泣きべその俺に飴をくれようとして、あたたかく明るくなる。気力が戻っていく。


 明るくなって来た爺ちゃんのそばに誰かがいると気付いた。誰かが爺ちゃんのそばで心配そうに見守っている。ひとりじゃない。

 俺はこのおばさんを知っている。爺ちゃんの奥さんのシーラさんだ。そして子供達や家族?そうだ、写真で見た人達だ。本物のフランツもいる。


 俺が見ている事に気付いて、皆がこっちを見て笑顔で頷く。本物のフランツが笑って手を振る。もっと小さい子が一緒に手を振っている。あれは爺ちゃんの長男?

 ああ、そうか。わかった。

 俺がグラウギリスで妖精さんに助けられた時、地球で爺ちゃんを助けてって叫んでいたのはあなた達だったんだね。

 

 俺と爺ちゃんを繋いだのはあなた達と妖精さん達の祈りだ。 


 俺は爺ちゃんに教えなければと思った。絶対に絶対に伝えなければと。

 でも、シーラさんが笑って首を振って「しーっ」ってした。言わなくていいの?だって、皆が爺ちゃんを守ってそばにいるのに、伝えなくていいの?


 シーラさんが「この人は頑固でしょう?」って笑う。皆も笑ってる。本物のフランツのお父さんのカールが爺ちゃんに良く似た目で笑って「いいんだ」と言って頷いた。


 …わかった。だけど、俺はいつか爺ちゃんに話したいよ。皆は怒ってないって伝えたい。そう思うと、シーラが「いつかね」と言ったような気がした。そして皆は薄くなって溶けるように見えなくなった。


 爺ちゃんの目が覚めたみたいだ。医師が大丈夫だと言っている。良かった。そう思った瞬間、俺は地球を離れて元の俺銀河に戻っていた。 

 本当に一瞬なんだな、と思う。距離も時間も関係ないんだと。


 俺銀河の周りのそれぞれの銀河や星雲達も静かで、さっきの擬人化したような雰囲気はなくなっている。あれは一時の錯覚なのか、それとも俺がわかりやすい様な挨拶だったのか。

 

 「グラウギリスは全然M78星雲じゃないじゃないか」

 俺は思った。それに地球から300万光年の彼方でもない。もっともっと遠い。アンドロメダ銀河より遠いぞ。同じ町内だと思っていたら、違う国だったくらい違う。 


 まあ、それでも行こうとすると一瞬なんだけど。


 俺は、改めてグラウギリスがあるこの渦巻の俺銀河に意識を向ける。感覚は相変わらず光の渦に埋もれている感じ。

 身体の感覚というかイメージはあるんだ。前髪がさらりと流れるのを感じた。「髪が動いて大丈夫だったかな?どの星も壊してないと良いけど」と思いながら、そっと視線という意識を自分という「身体」に向ける。

 やはり腕や脚があるのを感じ、肉体としての形も意識が捉えた。 


 シモーン達が言っていた「いつでも行ったり来たりが出来る」というのは、俺が宇宙だから自分の身体のどこに触るのも自由ということなんだろうか。意識を向ければ、さっきのように自分の一部に、小さくした意識が訪れる事が出来ると言うことなのか。

 でも、それは元のように暮らせると言うことになるんだろうか?

 地図で見つけて拡大して見られるというだけで、その場に自分が行って生きる事とは違うんじゃないのか?


 そんな事を思っているうちに、視覚的に捉える機能が明確に働き出したようで、感覚だけではなく脚や腕や首、胴体が視覚的に捉えられて来た。ああ、やっぱりこの方が落ち着くなと思った。身体が視覚化出来ると、まるで俺は銀河という星々が渦を巻く光のジャグジーにでも入っているように見える。

 そして次の瞬間、ある事に気付いて俺は驚愕した。 


 え?無い!? 


 無いぞ!どういうことだ?!


 俺の、俺の身体の中心にあるはずの大切な一部が無い。消えているのだ。つるんとしているのだ。

 

 待って!どういうことなの?人じゃなくなったから性そのものが無くなったっていう事?それは大ショックです。

 俺が俺だけど、全く俺とは別物になっちゃうじゃないか!


 パニックです。


 「いやだ!俺は爺ちゃんにひ孫を見せるんだ!!」


 そう叫ぶと、強く眩しい光がスパークして俺は意識を失った…と思う。多分。 



 気がつくと心地の良い風が吹く草原に横たわっていた。穏やかな秋のような青空が広がっていて、柔らかい風が吹いて草が揺れている。


 草原か。素敵だ。地面がある。

 俺はとても安心している。これは、なんて素敵なところなんだろう。ずっとこのまま柔らかい草の上で微睡(まどろ)んでいたいな。

 ごろんと寝返りを打とうとした。そこでハッとした。

 そして身体を起こした。 


 良かった、身体がある。手も脚も普通にある。爪もある。

 待て、俺の大切なあいつは?

 俺は恐る恐る股間に目をやった。いつの間にか薄い白い布を纏っていた俺は、この布をまくるかどうか躊躇した。


 その時、シモーンの声がした、「大丈夫だ。あるぞ。まくってみろ」


 そばにシモーンと色男が笑いながら立っていた。俺がそっと布をまくって確かめると2人の笑いが爆笑に変わった。


 「どうだ?ちゃんと立派なのがあるだろ?」


 シモーンがそう言って俺の頭をわしわし撫でる。力が強い。そう、力が強いと感じる感覚があった。物質と物質のふれあいだ。


 「君はまだ人の肉体の死を迎えてないからな」と色男が微笑む。

 

 人の肉体の死?まてよ、俺は禊ぎをクリアしたんだろうか?


 そう思うと色男が言った。「ああ、ちゃんとクリアしたよ。欠けていた所を修復し、自分を体験しただろう。無限になる感覚はどうだった?」


 無限になる感覚。そうだ、俺は銀河に、いや宇宙になっていた。


 「えと…制限がなくて、どこまでの広がって行ける気がして、解放された気がしたかな。でも、広すぎるし、それに星が砂粒より小さくて、ほんのちょっと動いたり、何かを思うだけで、とんでもない影響が出そうでヤバいと思った。不用意に動かないで慎重にならなきゃ、たくさんの存在を滅してしまいそうで怖かった。自由だけど自分の動きが、力が大き過ぎて…」

  

 「ふむ。まあそうだな。それが君の身に宿っている神の力の片鱗だ。気をつけて使わないとあらゆる世界に大惨事を及ぼす」色男が言う。


 それに続いてシモーンが言った。


 「ほんのちょっと、ほんの一滴と思った所で、実は多くの星々が滅びたりもしてしまう。まあ、その体にいるうちは、そこまでの大きな力は使う事はないだろうが。いずれはそうなる事もあるってことだ。慎重に使い方と加減を学んでいくことだな」 


 再度言おう。俺はある程度は優秀な科学者だと思っていたが、何を言われているのかさっぱりわからないし、わかりたいとも思わない。

 いや、今となっては言われている事はわかるんだが、やっぱりまだ自分と結びつけては受け入れがたい。

 

 色男が肩に手をおいて言う。


 「時間は永遠に近い程ある。数千年のうちには覚えるだろう。心配するな」 


 え?数千年?それ、まるで俺が数千年生きるみたいな言い方ですけど? 

 相変わらずダダ漏れているようで色男が返事をする。


 「数千年どころではないよ。その辺についてはバラン・イシルディンに聞きなさい。私達は君とは違うから教える事は出来ない。バラン・イシルディンだけが君に教える事が出来るんだ。さあ、おいで案内しよう」


 色男とシモーンが俺を先導して歩き出す。俺達は風の草原を進む。「どこいくの?」と思った瞬間に、色とりどりの花が咲き乱れた森の、湧き出る泉の畔に立っていた。

 こんな風に急に場面が変わるのも慣れて来た。テレビのチャンネルを変えるように居る場所が切り替わるんだ。

 深くは考えない、黙って受け入れよう。


 この泉は知っているような気がすると思っていると、色男が「麗しの森に似ているだろう?」と言う。そうだ。あそこに似ている。でも全然違うようでもある。

 そして、地上の麗しの森の元になった「本物」の場所ともまた違う。もっとすっきりと明確で、ふわふわしていない。ただ綺麗なだけの場所とは違うと思う。そう、存在感があるんだ。物質的ではないのに存在感がある。曖昧な世界とは違って、何というか体温を感じるみたいな存在感がある。

 

 たゆたゆと湧き出す清らかな水は、確かに水なのにまるで光そのもののようだ。何となく手をのばして触れようとした時に、自分の手がその泉の水と同様に、心地よい光そのものになっている事に気づいた。

 さらりと肩から落ちた髪が、やはり同じ様に光そのものであると知った。 


 え。それじゃもしかして俺の全身が?…その、ナニも?と思った瞬間にシモーンが爆笑した。


 「お前は、そんなにも光の存在になりながら、まだ人である感覚を手放さないんだな」と愉快そうだ。 


 そりゃそうだよ。だって、男の子だもん!笑われてちょっとふくれる俺。 

 

 面白い坊主だ、と言いながら、シモーンと色男が水面が揺れるようになってぼやけて行き、景色が流れるように遠ざかって行った。

 

 

 思いがけず一人残されて戸惑っていると、ふわりと良い香りが聞こえて来た。


 そう、香りが聞こえて来たんだ。


 どう表現したらいいのか、音が香り味がして、香りや色が聞こえる。そして想いは見える。そんな五感には当てはまらない感覚だ。でも、あらゆる事がより精妙に深く知ることが出来る。枠がなくなり制限が解放されて、そのものが認識できる感覚。


 良い香りは薔薇のやわらかく甘い香りに似ているかもしれないが、「匂い」という物質的な感覚が全くしない。俺銀河の中に居た惑星グラウギリスの、宝石のような美しい輝きの香りだ。


 一生懸命に自分に解説していると、俺のすぐ近くに銀色に輝く穏やかで大きな光が立っていた。いや、浮いていたと言うべきかも知れない。所々虹色や金色に反射して美しくて、俺はついぼんやりと見つめてしまった。 


 その光の中央に人の姿が見えて来た。もう全然わかっていたけど、やっぱり俺だった。いや、俺と同じ顔のイシルディン神、バラン・イシルディンだ。  

 


 

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