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アルランティアの日記   作者: 倉門 輝光
異世界文化交流
58/117

お見送りとお迎え

地球語(英語/日本語)での会話(聞き取り)を「」で、グラウギリスの言葉での会話を『』で表記してます。



 雨の中をモフヌシ達が『欠片(かけら)よ、途中まで我らも共に走ろう』と言って並走して来た。お見送りか。


 草原を雨に濡れて駆ける大神達。史朗が「かっけー!」と言いながらまた撮りまくっている。


 カッコいいけど、あんまり濡れては可哀想な気もして、俺は大神(オオカミ)達の前方と上に透明な膜を張って、雨が当たらないようにした。驚いた顔をしてモフヌシがこちらをみて『これは面白い!』と笑った。


 そうだ、村を出て街に向かって移動することを爺ちゃん達に言っておこう。 


 「史朗、ちょっと動画撮って。爺ちゃん達に移動すること伝えておくよ」


 「オッケー。どうぞ」


 俺はカメラ目線で話す。


 「爺ちゃん、おはようございます。俺達は村を出て街に移動します。森を再生したご褒美でご領主様と王様が、国内を自由に旅して良いって、安全を保証してくれたんだ。こっちのお金も貰いました。だから街では宿に泊まったりも出来るよ。お土産も買って行くよ。

 あ、皆の写真を額に入れてくれてありがとう。村の人達も大神達もすごく喜んでたよ。ええと、小さい写真は使者の人がご領主様に見せると言って持って行くようです。

 そうだ、奈々恵、ストールをおばばにあげちゃったよ。いいよね。軽くて手触りが良くて暖かそうだって喜んでた。あと、セバス隊志願者のリストと、令嬢のリストはまだ見てません。後で見ます。以上です」


 「オッケ。撮ってる間に雨がやんで晴れたな。にわか雨だったのか。でっかい虹が出たぞ。ほら」


 本当だ。でっかい虹が二重になってる。なんか、幸先良さそうだ。


 「見ろよ。今の伝言動画、良い感じでアランのバックにオオカミが走る姿と虹が入ったんだよ。モフボーイ達が走りながらカメラを意識してチラチラ見るのが撮れてて面白いぞ」


 史朗がニヤニヤしながら見せてくれる。ホントだ。透明丸の脇をカメラに写る位置で走りながら、チラチラ見るのが写ってる。可愛いな。


 「もっと皆を撮ってあげなよ」


俺も笑いながら言う。 

 そうして、しばらく史朗に撮られながら並走していたモフヌシ達は、草原の中にぽつりと、小さな建物がふたつ門の様に並んでいる近くまで来た所で、俺に頷いて止まった。

 そのまま止まらず進む俺達の透明丸を見送りながら遠吠えをしていたが、やがてくるりと向きを変えて元の方角に走り出した。

 「俺達はやるべきことを成す」という感じでカッコいい。本当に「気高き一族」って感じだ。3ヶ月後にまた会えることを楽しみにしておこう。 


 「行っちゃったな。俺達また2人だけになったなあ」


  小さくなっていく大神達を見ながらに史朗が言う。


 「そうだね。まあ、3ヶ月後にまた会えるよ。ところでさ、これから街を目指すわけだけど、史朗は(ひげ)剃らないの?」


  黒い髪で黒い髭で、ドワーフと言われ続けている史朗に聞いてみた。


 「剃らぬ!」


 「ちっ。まだ、モテる気か…」


 「ったりめーだ」


 「この世界から全ての髭を消してやろうか…」


 「やめろっちゅの」


 「本当にモテちゃってさ。…セリーヌが泣いてたね」


 「…ああ、なんかああいうの初めてだからさ、どうして良いかわからなかったよ」


 「なんか、良い感じだったよ」


 「セリーヌってさ、16歳なんだって」


 「え?本当に?もっと子供だと思ってた」


 「だよな。ずっと栄養状態が悪かったからなのかなって思った。なんていうか、これからいつも腹いっぱい食えて栄養とれるなら、俺達があの村に行ったのも良かったんだなって思うよ」


 「そうだね。そうか16歳か。じゃあ地球の年齢だとほぼ20歳だ」


 「まじか。俺はこっちの年だと20歳くらいなんだろ?だからそう言ったんだよ。そしたらニコニコしてたけど、そうか、まあ有りっちゃ有りなんだな…」


 「え?史朗まさかこっちで結婚しちゃう?地球に帰らないの?」


 「いや、帰るよ。そこまで盛り上がってるわけじゃないしさ。モテるの初めてだから、正直ちょっと揺らいだけど。やっぱ帰るよ、うん」


 「…もし、こっちで暮らしたいなら、俺は止めな…いや、止める。帰ろう。地球にだって良いご縁はあるよ、きっと!」


 「そうだな。てか、あの使者の女の子も16歳だってよ」


 「同じ16歳でも随分違うね。やっぱ栄養状態かなあ」


 「そうだ、アランさ、命の水の源水出せる?」


 「聖なる水のこと?わからん。やってみる」


 「ほい、コップ」


 「はい。じゃ、呪文!聖なる石から湧き出る聖なる水!」



 ザーッ。



 「「出た!」」


 「よし、これで状況に合わせて強弱で使い分け出来るな」


 「使い分ける時があるのかな。俺は正直、命の水だけで十分な気がしてるけど」


 「まあいいから。麗しの森に行ったら、一応、癒しの水も覚えろよな」


 「いいけど、それぞれがどんな違いがあるのかわからないな」


 「命の水より聖なる水のが強いよな。癒しの水も何か違うんじゃね?」


 「あ、そうだ!全部まとめて総称を健康水にしちゃおうか!」


 俺はとても良いことを思いついたと思った。


 「いや、なんか違いあるだろ。てか、お前は何でそういう名前を思いついちゃうかな…」


  史朗には不評なようだ。


 「健康水のレベル1,2,3てしてさ、レベル3が1番効き目が強い。ま、3は確実に、聖なる水だろうけど」


 「わかりやすい。実にわかりやすいよ。しかし何というか。そこはもう少し何とかならんのか…」


 「ならん!」 


 「そうか、さてはアラン、ずっとモテないつもりだな」


 「…くっ。じゃあ、じゃあ、えーと、光の雫1,2,3とかにする」


 「…そういやさ、報奨金っていくら位なんだ?」


 「光の雫はスルーかよ!もう。報奨金は全然わかんない。村で聞けば良かったかな。とりあえず、半分こしておこうか」


 「あ、でも俺、魔石持ってるから、半分まで要らないよ。これ売るんだろ?」


 「どうしようね。価値がわからないから何とも決めがたい。何ならお土産で地球に持ち帰るのもあり?」


 「それいいかもな。珍しいもんな。そうしよう。んじゃ、報奨金半分ちょうだい」


 「はいよ」  

 

 俺は革袋に入っていた報奨金をザラッと出した。


 「…これさ、大小どれも金色だけど、もしかすると金貨だけじゃないのか?」


 眉間にシワを寄せて史朗が言う。


 「? そうだね。…あれ、じゃあ高額の通貨だけってこと?」


 「しかも、こっちの2枚って何かでかくない?」


 「日本に行った時に500円って見たけど、あれよりでかいね」


 「嫌な予感がする。これ、使おうとしたらお釣りがないとか言って断られるみたいな事が起こるんじゃないのか?」


 「そうなの?」


 「そうだろう。細かいのないんですか?とか言われて、無いって言うと、うちはお釣りがないからよそに行ってくれって、買い物を断られるパターンが目にみえるようだ。

 考えてみればくれたのは公爵様と王様だろ?なんか庶民とは感覚が違うんじゃないのか?」


 「そっか。なんか、あんまり現金使わないからピンと来ないけど、そうか」


 「…あ、お前んとこ現金使う所の方が少ないもんな。わからんか。

 まあさ、日本だとまずお釣りの用意がないって事はなんだけどさ、欧米諸国だとお釣りがないからって断られる場合があったんだよ。

 まあ、今時はどこも現金そのものをあんまり使わないだろうけどさ」


 「そっか、そういう事があるのか」


 「多分だけど、こっちの世界では物々交換とか現金が主流だと思うんだ。だからさ、これ街に着いたら最初に小さいお金に崩した方が良いと思うよ。きっと銅貨とか銀貨ってのがあると思うぜ」 


 「お金あるのに使えないと困るもんね。そうだ、あのさ服買おうよ」


 「服?」


 「うん。俺達ずっと森歩きの普段のままでいて、村の人達もアンティアンとかエルフだから変わった服装なんだろうって感じだったけどさ、でも、この服装はみんなと違うだろ。流石に街に入ったら浮くんじゃないかなと思うんだ」 


 「そうだな。あんまり変わった格好してると目を付けられるもんな。一般的な服の方が無難だな」 


 「服って割とお金かかりそうだから、この金貨使っても大丈夫なんじゃない?そこでお釣りもらえばいいよ」


 「じゃあ街に着いたら服買うか。最初、神殿で言葉の実をもらうんだろ?そしたら次に服だな」


 「うん。それで、宿を決めて、それから観光だな!んじゃ、史朗このでかいの2枚と小さいの50枚ね」


 「おう。観光、楽しみだな。色んな人種いるんだろ。虫人はモハメドに会ったけど、(けもの)人はまだ会ってないからな」


 「そうだね。一緒に写真撮ったらさ、爺ちゃん達驚くだろうな」


 「あと、食い物、美味いといいな」



 そんな話をしていると、ふっと辺りが暗くなった。


 今度は雨雲ではない。陽の光を遮った暗さの原因が俺達の上を通り過ぎ、100メートル程先にズズンッと着地した。ニルスだ。

 着陸して翼をたたみ、のしのしとこちらに向き直り仁王立ちしている…感じ。なんか怒ってる? 


 俺はニルスの手前で透明丸を止める。


 『ニルス、どうしたか』と声をかけると、ニルスが甲高い声でピィイイイイイイィィィィィッ!と鳴いた。


 『欠片(かけら)、移動する。何故ニルスを呼ばぬ』と顔を近づけてくる。でかいでかいでかい。


 ニルスの目って俺の顔くらいある。そして、ふん!って鼻息。鳥に鼻息かけられるって初めて。てか、多分誰も体験したことないんじゃないか。鳥の鼻息で髪を靡かせた事があるのって、この広い宇宙の中でも俺だけなんじゃないか。


 『わ、我らゆっくり移動。ニルスすごい。ニルス速い。我ら急ぐ時ニルス呼ぶ。ニルスすごい。だが、我ら今急がぬ。ゆっくり移動。今は大丈夫。ニルスとても速い、すごい』


 『…ニルスはゆっくりも飛べる』


 ちょっと顔を引いてニルスが言う。



 「なんだって?」史朗が聞いてくる。


 「ニルスが、移動するのに何で自分を呼ばないんだって。だからゆっくり移動するから、速いニルスは急ぐ時だけ頼むからって言ったら、ゆっくりも飛べるって」 


 「すっげえ見てるな。神の鳥のプライドか。んじゃ、麗しの森まで乗せてもらえば?そこって公爵家が管理してるんだろ?番人とかいるかも知れないじゃん。神の鳥で飛んでったら間違いなく入れてもらえるだろ?何なら森の中の草地にでも降ろしてもらえばいいんじゃない?一回乗っておけば気が済むだろ」


 「そうか。そうするか。この先、しばらく草原しかないから景色も変わらないしね。じゃ、『我らニルスに乗る』」


 ピィイイイイイイィィィィィッ! 『欠片(かけら)、ニルスに乗る。とても良いこと』


 嬉しそうだな。

 俺はニルスの背中まで透明丸で上りそのまま背に着地。


 『ニルス、我ら麗しの森へ行く』


 『…麗しの森、近い。欠片(かけら)、もっと遠くへ行くと良い』


 『我ら、麗しの森へ行く。遠くなら降りる』


 『…ニルス、麗しの森へ飛ぶ』


 ちょっと不満そうだが、ニルスはふわりと浮き上がり高度を上げた。 



 「ニルスのこの浮き上がり方ってさ、翼で飛ぶってよりも重力操作してる感じだよね」


 「そうだな。透明丸が浮くのに似てるもんな」 



 『欠片(かけら)よ、麗しの森も行く。だが人の街と、人の王の街を見ると良い』と、ニルスが精神感応で遠回りを提案して来る。諦めない鳥だな。そしていきなりの精神感応(テレパシー)


 史朗に言うと、「ああ、お前の神の鳥だからな。テレパシーくらい使うだろうよ」と軽く言う。そういうものなのか。


 「人の街って、麗しの森の後に行く所だろ?人の王の街は王都か。どうせ行っても1時間ちょい位だろ。飛ばせてやれば?透明丸で移動したら麗しの森まで行くのももっとかかるんだしさ。寄り道しても結局早く着くんだし、上空から街を見ておくのもいいんじゃないか?」


史朗は上空からの観光もしてみたいようだ。


 「それに、伝説の神の鳥が王都の上を飛べば、王様も嬉しいんじゃん?」


 それもそうか。お礼がてら神の鳥で上空を飛んでおくのもいいかな。


 『我ら人の街、人の王の街、見る。そして麗しの森に行く』


 ピィイイイイイイィィィィィッ! 


 嬉しいようだ。ニルスは高度をどんどん上げて気流に乗った。


『ニルスは神の鳥、働く。イシルディン神の命に従い、欠片(かけら)を乗せて人の街と人の王の街の上を飛ぶ!』



 え?ちょっと待って。神様がそうしろって言ったの? 




* * * * * * * * * * * * * * *




その頃、闇の一族は




 「魔皇帝陛下、聖王国イシルディンの聖なる石が霧散し、その後に再生したようです!」


 「うむ。我にも届いたぞ。長く揺らいでいた力が強く戻ったようだな。イシルディン神の欠片(かけら)によるものか」


 「イシルディン神の欠片(かけら)が狼族と共に霊峰カラドに向かって後に起こりましたので、間違いないかと」


 「霊峰カラドよりの流れが復活したとなれば、我らがこの地を去る必要も無くなるであろうか。それとも、境界の力を復活させた上で、更に我らを追い立てるつもりなのか…、図れぬ所がもどかしい」


 「どうやら、イシルディン神の欠片(かけら)は未だ目覚めてはおらぬという噂でございますが」


 「目覚めぬ状態であれか」


 「は。霊峰カラドでは、イシルディン神が欠片(かけら)の身体を使って狼族に話しかけたと。そして、狼族に力を与え大神(おおかみ)族へと変化させたと報告が来ております」 


 「ふん。簡単にとんでもないことをやってくれる。その慈悲を我らにも向けて頂きたいところだがな」

 

 「やはり、一度、欠片(かけら)に目通りをされては…?」


 「目覚める前にか?」


 「目覚めてからでは、陛下の御身が…その…」


 「心配と申すか。ふん。まあ、良い。境界の力が戻ったのであれば、程なく我の力もまた戻るであろうよ。今しばらく力を蓄え、そして目覚める前に接触を試みようぞ。民には変わらず、余計な事をしないようにと申し伝えよ」


 「畏まりました」


 「イシルディン神よ、欠片(かけら)を使って何をするつもりか。グラウギリスの御心は如何にあるのか…」

 



* * * * * * * * * * * * * * *




その頃、竜の住処では




 「親父殿!霊峰カラドに新たな聖なる石が生まれたぞ!」


 「そのようだな。光があがり境界が戻った。これで光も闇も安定して存続出来るであろうよ」


 「狼どもが欠片(かけら)を伴って霊峰の頂にて儀式を行ったらしい。それによって長い間叶わなかった力の再生が成ったようだ。イシルディン神が降臨し精霊の至宝の身を使って御自ら狼どもを変化させたらしいぞ」 


 「気配だけで、長く御姿をお見せになることのなかったイシルディン神が、御自らか…。これは僥倖(ぎょうこう)であろうな。いよいよ戻られたと言うことだ。大地が喜ぶのが感じられる」


 「小鳥が神の鳥になり、狼どもが大神(オオカミ)となった。我が物顔で精霊の至宝と共に動き回っておるようだ。親父殿、我も馳せ参じるべきであろうか?」


 「ふむ。慌てるな。あの小さきもの達と我らは違う。我等はより古くからこの世界を知り、そして長く先の世までイシルディン神と共に歩む者。精霊の至宝が目覚めてからで良かろうて」


 「そうか…」


 「チビどもはどうしておる?」


 「あやつらは、まあいつも通りだ。精霊の至宝とエルフが同じものなのか等と問うて来てな」


 「ははは、まあ形を見ただけではよう似ておるからな。幼き目にはよく違いがわからぬのかもしれん」


 「確かに今は人の器に入っているから似たように見えるかもしれぬが、エルフは光の民ではあるがより人族に近い種族。精霊の至宝は全く違う。エルフなどと混同するようでは先が思いやられる」


 「よく教え導いてやることだ。精霊の至宝も、そう遠くなく目覚めることであろう。慌てず急がず、だ」




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