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アルランティアの日記   作者: 倉門 輝光
異世界文化交流
48/117

蘇る大地 〜歓喜の歌〜

地球語(英語/日本語)での会話(聞き取り)を「」で、グラウギリスの言葉での会話を『』で表記してます。



 村に戻ると、村人達が唖然とした顔で迎えてくれた。どうした?


 史朗が跳んで来て、「アラン、戻って来てから森を作るのかと思ってたら、作りながら戻って来たのか。何もなかった草原に、向こうの方からどんどん木が生えて森が迫ってくるから皆大騒ぎだよ。びっくりしたぞ」と言う。 

 あ、そうか。言ってなかった。

 

 「うん、戻りながら森にして来た。途中でビッグバードを10羽放したよ。森で繁殖してくれると良いなと思って。あと大ザリガニの池も幾つか作って来た。ここにも作ろうと思ってるよ。元からいた兎やネズミ達はそのまま繁殖すると思う。それからさ、ラメ花が咲いて妖精さんが沢山生まれてるから、妖精さんのいる森になるよ」


 「やることが早いな。てか、随分早かったな」


 「それがさ、竜鷲がすごく速くてさ!行く時なんてあの命の水川のところまで30分くらいで着いちゃったんだよ」


 「マジか!すげえな!さすが神の鳥!!てか、あそこにいるのは朝来た鳥か?何か朝とは色やサイズが違うみたいだけど。途中で乗り換えたのか?」


 「え?」


 俺が振り返ると、いつの間にか竜鷲ニルスが村の近くに来て留まっていた。帰らなかったのか?

 

 『おおお、白銀の君よ、お戻りか。ああ、なんという事じゃ、森が蘇っておるではありませぬか』 そう言いながら、おばばがよたよたとやって来る。


 『おばば、危ない。慌てるない』 転ぶから。

 

 村長もやって来て、『白銀の君よ。このような…、あれから半日も経っておりませんのに、もう森が…』と言う。


 『これから、果樹園を森に育てる。森、もう少し近く来る』


 俺はそう言って、用意してもらっていた果樹園の果実の種と、俺達が持っていたカカオを持って来てくれるよう史朗に頼んだ。

 それから良い事を思いついた。史朗に歌ってもらおう。祝福の歌を。そう思って史朗が戻ってくるのを待っていた。


 そしたら…だ!


 何やら村人とは思えない服装の、とても可愛い女の子が、果実を持って来ようとしていた史朗を呼び止めて話しかけている。

 誰だ?そういえば、門のそばに停まっている馬達と立派な馬車は何だ?

 てか、あんなに「おにいちゃんだけモテないで」と言ったのに、またか?またモテているのか?!それも、俺が居ない間に。


 少々渋い顔で史朗の方を見ていると、おばばが俺の袖をくいっと引いて『白銀の君よ、ご心配召されるな。あれはご領主様のお使いで御座います。悪い者達ではありませぬ』と言う。


 そうなのか。あ!ご領主様のお使いが史朗の腕をねじ上げようとしてる。可愛くてもそれはイエローカードだぞ。史朗は軽く()なしているが、それでもあの行動は頂けない。


 俺が更に渋い顔で、風を吹かせて引き離そうかと思っていると、村長が仔細を話してくれた。


 『実は先日、ご領主様の行方不明のご嫡男の捜索隊が村に立ち寄られまして、その際に村の移転を願う手紙をお渡し致しました。その事で先程ご使者がいらっしゃいまして、「候補地がすぐには見つからぬので、一度皆を街に連れて行き保護をした上でゆるりと移転先を検討する」とのお答えを持っていらしたのです。

 だが、こちらに来てみれば畑の状態は良く、困窮するような状態には見えぬと、どういうことなのかと問い詰められまして。それで、白銀の君とシロウ殿がいらしてからの事を話しました。

 しかし、信じては下さらず、村人と共にいらしたシロウ殿がゴーレム達を使役する様子を見て、怪しいと警戒をなさって…。シロウ殿は言葉がおわかりにならないと言いましても、全く取り合っては下さらず話しをさせろと…。 


 シロウ殿は(かわ)されておりましたが、警護の方々も追いかけ回して捉えようとして…まあ、全然捉えられてはおりませんが。更に先程、神の鳥が舞い降り、森が育ちながら近付いてくる様を見て驚いていたようで、その…またシロウ殿を問い詰めようとしているようでございまして」


 ふーん。まあ、びっくりするのはわかる。聞いていた状況と違えば疑っても仕方ないけど、でもやり過ぎはいけない。ちゃんと村長達が説明をしようとしたんでしょ。言葉がわからないと言ってるのに、話をしろと力づくで抑えようとするのはどうかと思う。 


 使者を躱してこっちに跳んで来た史朗が「全く!あの女さ、何言ってるかわかんねえし、さっきから俺を鎧の奴らに追いかけさせたり、今も俺の腕を捻り上げようとしたり、最悪!偉い連中らしいが、アランも、気をつけろよ」と怒っている。


 史朗を追って使者の女の子が来る。茶色の髪を後ろで1つにまとめて、仕立ての良い濃い青のコートを着ていて、中は白いブラウスでフリルがひらひらしている。足首より少し上の丈のスカートにブーツを履いている。

 他にも同じ濃い青のコートを着た小綺麗な服装の眼鏡をかけた若い男が1人と、騎士のような鎧姿の男達も4人やって来る。文官と護衛か。

 護衛はさすがに体格は良いけどセバス隊の敵ではないな。史朗はセバス隊を動かさなかったんだね。下手に力を行使してしまうと村人達に不利な事になるかもしれない。賢明だ。さすが史朗。さっきは1人でモテてがっかりだなんて思って悪かった。


 俺が渋い顔でチラッと見ると、使者一行全員がハッとして立ち止まり、数秒俺を見てから赤くなって目を逸らし俯く。そしてまたチラチラとこっちを見る。なんだよ、お前ら。

 使者の女の子は20歳位か。茶色の目がくりっとしてそばかすがあって、近くで見ても可愛いけど、俺は礼儀知らずは嫌いだよ。


 俺が黙っていると村長が、『使者殿、こちらが先程お話いたしました白銀のお方、村に救いを与えにいらしたお方です。あの神の鳥に乗ってお出掛けでしたが、お戻りになりました。ご覧の通り大地を癒やし森を再生して下さっています。この御方のお陰で我らの畑も蘇ったのです』と俺の事を伝える。


 使者が俺に向かって言った。

 『わ、私はご領主であるシャノトワ公爵家に仕えるスザナ・ユリアスと申す。この村が困窮して移転を希望しておる件で対策についての通達をしに参った。だが、来てみれば村の様子は畑も豊かに実りがあるようであり、嘆願書にあった様子とは一致せず、更には村人達は移転の希望を撤回すると言う。あなた…様?が何かなさったようだが、詳細を説明頂きたい。こ、この、我々が来た時には無かった森が出現した事についても説明を求めるものですっ!』 


 声が裏返ってるよ。面倒くさいな。村長がちゃんと話してるんだから、そっちをちゃんと聞きなよ。俺は答えたくないのでプイッとそっぽを向いた。

 お役目に一生懸命なのかもしれないけど、史朗の腕をねじ上げた時点で完全アウトだ。礼儀知らずには礼儀知らずで答える。無視して森の再生を進めようっと。


 「史朗、俺のいない間にまたモテてるのかと思ったら、違うようで何よりだよ。森の仕上げをしようと思うんだけど、一緒にやる?」


 「おう、やるぜ!てか、全然モテてねえからな」 


 俺はおばばと村長に、『実のなる木を増やす。森、美味しくなる。花も咲くと妖精生まれる』と言って微笑んでから、史朗と自分を透明丸に入れて浮かび、ニルスの方に移動した。

 無視された使者は『あ、ちょっと…!!』と言っていたようだが、透明丸で浮かんだら黙って固まっていた。何で?みんな魔法使わないの?村の人達も使わないけど、お偉い方々は使うんじゃないの?この世界って魔法有り有りじゃないの?


 ニルスに近づくと史朗が「でけー!こえー!」と声を出す。そうだろ、でかいよね。怖いよね。こいつに掴まれた時はもっと怖かったんだよ。


 本当は透明丸に乗って種蒔きをするだけでよかったんだが、俺達はニルスの背に乗った。あの使者もニルスには近づけまい。今も唖然として見ているだけだ。おい、口あいてるよ。

 

 「あの女、なんだって?急に村に入って来たと思ったら、村長とか長老達に偉そうに何か言い出してさ!」と史朗が怒っている。


 村の周りに作る柵の模型を土で作りながら皆で話し合ってたらしい。そこに乗り込んで来て村人達にも高圧的で、史朗にも突っかかって来て、避けていたら鎧の護衛達が捕まえようと掴みかかってきたそうだ。


 「ぶん殴ろうかと思ったけど、村に迷惑かかったらやばいからスルスル逃げ回ったんだけどさ。そしたら、森がもりもり迫って来てアランが戻って来たからその場を離れたんだけど、逃げると思ったのか追っかけて来て俺を見つけたら急に腕をねじ上げやがってよ」

 

 「なんかご領主様の使者なんだってさ。この村の移転希望についての通達を持って来たら、村の様子が変わってるから、嘘の申し出を出したとでも思ったんじゃないの?森が出来てるのもどういうことなのか説明しろとか言うんだけど、村長にお任せだ。俺説明できないし。それに、史朗の腕をねじ上げたとこ俺も見たよ。あの時点でダメ。もう嫌い」 


 「なるほどね。来た時に無かった森が現れたのは、別に村人が嘘ついて森を隠してたわけでも何でもないからな。お前さ、神の鳥もいるし、もう300年ぶりに現れた白銀のエルフ様で押し通せ」


 「そうだね。何か言われても、もうそれで行くよ。大地の再生は俺のせいだ。とにかく森の仕上げをしようと思うんだ。あの岩の辺りまで森にして良い感じ?」


 「ああ、ちょうど村の新しい門予定地から500mくらいだ。ここらで良いんじゃないかな」


 「オッケー。村に近いところには実が生る木を多めに植えようと思うんだ。あと大ザリガニを放す池を作りたい」 


 「いいな」


 「村までの平原には花をいっぱい咲かせようと思う。ついでに森までの道も作る」


 「じゃ、それで行こうぜ。まずは種蒔きか」 


 「上空から蒔こうよ。森の様子も見られるしさ。ニルスに飛んでもらおうぜ」 


 そう言った途端にニルスがふわりと浮いた。いちいち説明しなくてもちゃんとわかってるんだ。まずは空に舞い上がり、ニルスは史朗に生まれたばかりの広大な森を見せるように飛ぶ。あ、さっきより木が育っている。

 「ふわー!すげえな!見渡す限りの平原だった所がずっと向こうまで森になってる。花が咲いててキラキラだな!平原も残してるのか。あ、あれも大ザリガニの池か。いっぱい繁殖するといいなあ」


 「また帰る時はさ、この森で野営しながら行こうよ」 


 「いいね、楽しみだな。木に登れるしな」


 一通り森の上を飛び様子を見せてくれたニルスが、村の入口近くに戻る。俺は命の水を降らせてから、持って来た残りの種と果樹園の実を風に乗せて撒いた。そして虹色の光の粒を撒いた。そして史朗に言った。

 

 「何か歌ってよ。森の祝福に」

 

 植物がどんどん育ち、花が咲いたり木が伸びたりする様子を見て、村人達が驚きながらも大喜びをしている。

 少し離れた位置にニルスが舞い降りる。俺たちはニルスに礼を言って、透明丸で森と村の間に移動して、そこに花の種を撒き、そして大きな池を作って残りの大ザリガニを放した。命の水で満たし、どうかどうか沢山繁殖しますようにと祈った。


 史朗が「それじゃ」と言って歌い始める。「ものすごくベタだけど『歓喜の歌』だ」と。

 撒いたばかりの種から芽が出て育ち、辺り一面に花が咲いた。そして幾つかの花から妖精が生まれる。村人にも妖精が見えるのかどうかはわからないけど、きれいな光が飛び回るのが見えるといいなと思う。

 史朗の歌に合わせて風が舞う。

 ああ、なんて気持ちが良いんだろう。


 これで森は完成だとなった所でニルスが一声鳴いて空に舞い上がり、村や森の上を3回旋回して山の方に飛んでいった。 

 ありがとう、ニルス! 


 「…魔の森じゃなくて山の方に行ったな」


 「そうだね、次の使命があるのかな、ニルス」


 「…なあ、さっきから思ってたんだけど、そのニルスって、お前んちの運転手さんの名前じゃ?」


 「そうそう。なんだか俺が色々してる間ずっと待機しててくれて、送迎してくれる感じがまるでニルスみたいだねって言ったらさ」


 「言ったら?」


 「ぴぃって、そんで変身して『我はニルス』って言い出したんだよ」


 「…言い出したんだよって。喋ったのか?」


 「そう、喋ったね」


 「そういや、色合いとか雰囲気が朝来た時と全然違うよな。違う鳥で帰って来たのかと思ったけど、変身して喋ったか。そうか、…なるほど名付けか。お前の鳥になったんだな。色合いがお前っぽいし」


 「俺の鳥?」


 「ほら、マサルとかマサコもさ、お前の犬だからお前が名付けたじゃん。ニルスもお前の鳥になるのを受け入れたんじゃないか?それであれだ、お前色に染まった…って嫁みたいだな」


 「そうか!そういうことか、…そうか、俺の鳥かぁ。でも流石にあれは地球には連れていけないなあ」


 「そうだな。お前んちなら飼えるだろうけど、でも地球規模で大騒ぎになっちまうもんな…」 

 


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