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アルランティアの日記   作者: 倉門 輝光
魔の森
36/117

ザリガニ釣り

 安全な地域に戻って来たという実感。

 

 また沢山の妖精さん達が周りに集まってきている。

 森の雰囲気も、なんというか爽やかというか健全な感じだ。


 俺達は一体どのあたりから危険ルートに入っていたんだろう?あれかな?やっぱあの女神の木あたり?


 妖精さん、みんなで心配してくれていたんだね。ありがとう。きっと嫌な場所だったのに、頑張って着いて来てくれていた5人には、本当に感謝しています。


 モハメドを呼んできてくれたのもきっと妖精さんなんだろうね。…と言うと、ふるふると顔を横に振る。あれ?違うの?

 妖精さんが俺を指差して、それから5〜6人くらいで固まって大きな光の玉になるのを繰り返した。そして空を指差す。

 …ごめん、わかんないや。


 わからないけど、何か大きな光がモハメドを呼んだのかな?と思った。そう言うと妖精さん達が笑顔で頷くので、俺と史朗は2人で空に向かって合掌をして、「良くわからないけど有難うございます」と言った。 

 妖精さん達も一緒に空に向かって合掌をした。 

 雲の間から太陽ではない何かがキラッと光って、七色の光の粒が降ってきたような気がした。 

 


 命の水川沿いに戻った俺達は、そこで野営をしながら、少しずつ最初の場所に向かって上流へと移動をしていた。

 今居るここは通過したことがある場所だ。多分、最初の場所から500kmくらいの所じゃないのかな?


 地球への扉が開くまでに、まだ数ヶ月ある。そんなに慌てる必要もないだろうと、観光トレッキングの気分でのんびりと、川沿いにテントを張り拠点を設けては、そこから森に入ってウロウロする旅を続けた。

 

 「アランさあ、回復魔法って出来ないの?」


 「開腹?」


 「待って。それは違う。それだと切腹になっちゃうから。そこは日本語やめて、怖い」


 「じゃ、ベタなところでヒール?」


 「開腹じゃなきゃいいわ。開腹はホントやめて。治るどころか死ぬから」


 「あ、そうだ。切腹!っていう攻撃魔法はどうかな?」


 「キモいよ。こっちに向いてるヤツにかけたら、こっちに向かって内臓ドバーっだぞ」


 「…うん。今想像してやだなと思った」


 「使うなら遠くにいる敵オンリーでプリーズ。もちろん味方への切腹は禁止だ」


 「了解です」


 そうか、回復魔法ね。命の水があるからあんまり必要性は感じてなかった。ちょっと検討してみよう。開腹魔法もさ、魚を釣った時は便利だと思うんだよね。

 そういや、川ばかりだけど湖とかってないのかな? 



 「釣りしたくない?」


 「釣りなあ。こっち来てから魚見てないな、そういや」 

 

 「川にいないのはわかったけどさ、湖とか無いのかな?」

 

 「ちょっと探してみるか」

 

 俺達は高めの木に登って周囲を見回しながら、湖や池を探して歩いた。 

 太陽光に水面が反射して見つけやすいだろうと思ったが、意外と無いものだ。そう思いながらぴょんぴょんと木の上を移動していて、やっと小さい沼を見つけた。

 

 「おお、あった」


 「行ってみようぜ」


 俺達は釣りが出来るかも知れないとワクワクしながら、沼の方に降りていった。

 小さい、とても小さい沼だ。周りはぬかるんでいる。でも悪い感じはしない。一緒に来ている妖精さん達も気持ちよさそうにしている。


 落ちていた長めの枝に、持って来ていた釣り糸を結びつけ、マダラ赤蛇の肉を餌にして水の中に垂らしてみた。しばらくじっとしていると、クイッと糸が引かれた。何か掛かった!

 変なものでありませんようにと祈りながら、糸を引き上げた。


 「あ!なんだこれ!海老?」


 「いや、ザリガニだよ!うわ、でかいな!」


 俺達の国ではみんなが大好きなザリガニ。こっちにも居たとは!

 それにしてもこっちの世界のはでかいな。50cmはあるよ。最早、立派なロブスターだ。


 これは一匹でも十分腹がいっぱいになりそうだけど、何となく俺達は久しぶりの釣りが楽しくてどんどん釣り続けた。

 残念ながら魚はかからなかったけど、大ザリガニが大漁で、30分くらいの間に10匹釣れた。

 この沼って、大ザリガニしかいないって事はないよね。

 

 大好きなザリガニが大漁でホクホクしながら、両手に持って記念撮影。

 モハメドの時に一枚も写真を撮ってなくて後悔したので、気をつけて小まめに記録をするようにしたんだ。 

 

 「これだけでかいと、後は味が気になるな」

 

 「まずは食べてみよう。美味しそうではあるけど」

 

 「そうだな。俺、ザリガニ食べるの初めてだわ」


 「日本じゃ食べないの?」


 「あんまり食べないね。子供が遊びで釣って飼育したりはするけど」


 「勿体ない。美味しいのに」


 一応、命の水で良く洗ってから、直径2メートルくらいの塩水ウォーターボールを空中に出して、そこに大ザリガニを放り込んで茹であげる。香草のデイルがあればさらに良かったけど仕方ない。


 「アラン君、撮影がわかって来たね」と史朗監督がカメラを構えてニコニコしている。


 「ありがとうございます、監督!」


 

 さて、それでは茹で上がった大ザリガニを実食。



 「「美味〜い!!」」


 スウェーデンでは毎年夏になるとザリガニ祭りがあって、ザリガニが解禁になりパーティーを開く。

 俺はいつも家の敷地内の池などに住んでいる、というかそこで育てているザリガニを獲りに行って、獲りたてを食べるんだけど、絶対に輸入物よりも美味いはず。

 家では一年中穫れるけど、なんとなく世間に合わせて夏の解禁日までは食べないことになってる。まあ、俺はたまに獲ってきちゃうんだけどね。


 でも、この大ザリガニはうちのよりも美味い!

 

 命の水でよく洗ったからなのか、元々なのか、身が締まっていてまろやか。ハサミ蜘蛛よりもさっぱりはしているものの、噛んでいるとなんとも言えないコクというか、旨味が出てくる。そして、何だか身体に力が湧いてくるというか、元気になってくる。


 「こっちの生き物ってさ、コーヒーもだけど、成分が強いよな」


 「うん、すぐにわかりやすく身体に反応が出てくる。このザリガニは疲れた時に最適な気がする。爺ちゃんに食べさせたいなあ」


 こいつ、連れて帰りたい。うちの池で育てたい。ビッグバードとこいつは(つがい)で連れて帰る事を真面目に計画しよう。

 史朗にそう言うと、「じゃあ、帰る前にまた取りに来ないとな!」と乗り気だ。


 「地球への扉が開く可能性のある日のちょっと前に獲りに来て、あとは扉が開くまで飼育を上手くしないとな。やっぱさ、アランはテイムを取得しておいた方が良いと思うぜ」 


 「そうだね。大ザリガニは飼育出来ればなんとかなるけど、ビッグバードは番で連れて行くとしたら、ちゃんと従ってもらわないとダメだもんな」


 そんな事を言いながらそれぞれに1匹ずつ食べ、残りは状態保存をして持ち帰ることにした。初めてザリガニを食べたという史朗が、これはクセになるなあと言ってる。


 釣りも楽しんで、大ザリガニの沼の位置も把握した。そろそろ戻ることにしよう。


 戻る時は来た時と少し違うコースを移動した。途中で木の上で休んでいると、そこから少し離れた開けた場所でキューキューと何かが鳴いているのに気付いた。


 行ってみようと跳ぶ。

 近付いて木の上から見ると、開けた砂地があって、そこにトラックくらいの大きさの竜が、下半身まで砂に埋まって動けなくなっていた。どうやら流砂にはまってしまったらしい。じわじわとだが飲み込まれて行っている。


 もう少し大きめの2頭の竜が周りを飛んで、出ている箇所をくわえて引っ張り出して飛ぼうとしているが持ち上がらないようだ。



 助けよう。


 ザリガニパワーで力が満ちていた俺達は、気が大きくなっていたのかもしれない。竜達の近くに跳んで行って、シュタッと流砂のそばにある大きな岩に立った。

 

 俺達が行くと2頭の竜は逃げたが、飛びながら遠巻きに見ている。戸惑っているようだ。

 流砂にはまっている竜は怯えている。大丈夫だ。獲って食ったりしないから。あれ?竜って食えるのかな?まあいいか。


 「どうしようか。ハサミ蜘蛛にもらったロープで引き上げるか?」史朗が言う。


 「そうだね、でも取り敢えずは流砂を止めてみるよ。そしたら自力で出られるかもしれないし」


 「ああ、その手があるか!いいな。やってみな」


 「うん」


 俺は流砂の動きを止めた。そこで思いついて、逆回転のように竜を地表に押し戻してみる。結構簡単に出すことが出来た。よし。

 この流砂は危ないので完全停止にしておこう。


 疲労しているように見える竜に、命の水をウォーターボールにして口元に送り飲ませる。怪我をしている様子はないし、命の水で元気が戻ってきたようだ。


 動けるようになって、くぅぅぅううううぅぅ!と鳴いて寄ってきた。

 なんだ、ちょっとかわいいぞ。

 鼻先を俺にそっと擦りつけて来て、くぅぅと鳴く。史朗も「かわいいな」と、鼻先を撫でている。


 他の2頭も降りてきて、近くで見ている。その2頭にも命の水をあげた。ウォーターボールをぱくっと食べる感じで飲んだ。なんか嬉しそうだ。

 やがて2頭が、流砂に落ちていた竜のそばに来て、両脇から挟むようにして帰ろうと促しているようだった。


 「気をつけるんだよ」と言うと、名残惜しそうにくぅぅと鳴いて、3頭は飛び立って行った。 



 「子供なのかな?」


 「なんか幼くて可愛い感じしたね」


 「顔は恐いけどな」


 「あはは」 



 良いことした後は気分がいいな!と笑いながら、俺達は拠点に戻って行った。




***************



 竜の住処で 


 

 「精霊の至宝に助けられただと?」


 「子竜達がそう言っていた。幼子が流砂に飲み込まれそうになっている所に現れて、あっという間に助けてくれたそうだ」


 「なんと…」


 「丸い水をもらったそうだ」


 「丸い水」


 「うむ、食べたら元気が出たと言っている」


 「ほう!それは」


 「親父殿が食べれば若返るやもしれぬぞ」


 「ほほほ、それは面白いのう。いずれ頂ける事を祈ろう」


 「どうやら、精霊の至宝は慈悲深いらしい。時が来て相見える事が更に楽しみになった」


 「ふふふ、儂もじゃ。イシルディン神の欠片でもある精霊の至宝、是非とも話してみたいのう」


***************


 そんな遠い山の事は知らずに、俺達はいつもどおり火を囲み、マダラ赤蛇とザリガニとスープで夕食を済ませ、それぞれにテントに入り就寝することにした。


 爺ちゃん、ザリガニがいたよ。こっちの食べ物は結構元気が出るんだよ。爺ちゃんにもここのザリガニ食べさせたいなあ。

 そんな事を思いながら俺は眠りについた。



 そして、また夢を見た。



 俺は爺ちゃんの部屋の前にいた。


 廊下を家の者達やセバス部隊の人達が忙しそうに行き来していた。何人かが俺に気付いて驚いたような顔をしている。そして1人が慌ててやって来て、爺ちゃんの部屋をノックしドアを開け、俺に「どうぞ!」と言った。

 

 「ありがとう」と言って、俺は爺ちゃんの部屋を覗き込んだ。忙しいなら邪魔をしてはいけない。


 部屋の中では爺ちゃんとセバスが何かを話していたようで、振り返って俺を見て驚いた顔をしてから、すぐにセバスが動いて爺ちゃんの部屋の棚の上に乗っていた銀のトレイを持って来た。そこには何か袋が乗っていた。


 爺ちゃんが「どうした、早く入って来なさい」と言って立ち上がる。俺は自然に笑顔になって爺ちゃんの方に歩いていく。

 机の上に置いているいつもの飴をひとつ取って、爺ちゃんが「ほら」と差し出すので、俺はいつものように口を開けて放り込んでもらう。甘酸っぱい。すごくリアルだな。


 目を潤ませて俺の頭を撫でて、「どうだ。その後は大丈夫なのか?しばらく写真も動画も届かなかったから心配していたんだぞ。なんだ、ザリガニを獲ったらしいな。随分とでかいザリガニだ。美味かったか?」と爺ちゃんが早口で言う。 


 「え?写真と動画?そうなんだよね、蟻みたいな人に助けてもらってさ、一緒に移動してたんだけど、その間は写真撮るの忘れてたんだよ。見せたかったな、蟻の人。すごく良い蟻なんだよ」 


 俺が言うと、「助けてもらったとは、何があったんだ?」と爺ちゃんが眉をしかめる。

 だから俺は「蟻なんだよ、顔がね。でも身体は人みたいでさ、モハメドって名前をつけたら喜んでた。すごく勇敢な戦士みたいだけど、人がいいというか、蟻がいいというか、いい友達になったよ。変な所に入って行っちゃったのを、安全な所まで案内してくれたんだ」と説明した。 


 「そうか、無事なら良かった。良い蟻で良かったな。ほら、コーヒーと色々用意してあるから、持っていけるなら持って行きなさい。自分達でも作ったみたいだが、うちのコーヒーも飲みたいだろう」と言って、爺ちゃんが銀のトレイの上の袋を取って俺に差し出した。


 「わあ、ありがとう。あっちで作ったのもまあまあだけどさ、やっぱうちのが飲みたいんだよ。あっちのはカフェインが強くて、一回飲むと二日間まるまる眠れないだ。だからたくさん飲めなくてさ」そう言って俺は袋を手に取る。なんか、ずっしり重い。


 「重いな、何が入ってるの?」


 「コーヒーと紅茶と、あとは菓子や加工食品や調味料などだ。ココアも入ってるぞ。他に欲しいものはあるか?」


 「うん、大丈夫だよ。ああ、砂糖とか蜂蜜、嬉しいな。史朗も喜ぶよ」


 「そうか、また色々用意しておくからな。欲しい物があったら書いてそれを写真に撮りなさい。腹は減ってないのか?ピザもシナモンロールもあるぞ」


 「あ、食べる!」そう言って俺はシナモンロールを手にとって一口食べた。そして「写真と動画って届いてるの?」と聞いた。


 「来てるぞ。その、なんだ、先日のあの実は大変に魅力的ではあるが、あんまりにやけた顔で写真を撮るなよ。処理班や解析班の皆も見るからな」と爺ちゃんが言いにくそうに言う。


 え? 


 「あ〜、まあ、大丈夫ですよ。ちゃんと血の誓約を済ませた者ばかりで作業をしていますからね」とセバスが続け、「しかし、その、奈々恵がちょっと…情けないと呆れておりまして…」


 「ひっ!気をつけます!!」 俺は驚いて、もらった袋を抱きしめた。


 ひどい夢だ。恥ずかしいところを見られているストーリーなんて。そうか、俺の中の羞恥心がこんな場面を描いているんだな。 


 「ええと、あそうだ!前に160日前後って言ったけど、あっちの一日は24時間じゃなくて30時間くらいあるから、ちょっと日がずれる!」と話を変えることにした。 


 「では、戻るのはもう少し先になるということか?」と爺ちゃんが言う。

 

 「そうだと思う。でも大丈夫だよ。その時になれば帰ってこられるんだし」と言うと、俺の身体が光り始めた。

 「アラン、もう行くのか!?」と言って、慌てて爺ちゃんが俺を抱きしめる。「気をつけるんだぞ」と言われて、俺も爺ちゃんを抱きしめて、ちゃんと帰るからねと言った。



 そこで目が覚めた。 


 リアルな夢だった。


 まだ外は暗かったので、俺はそのまま水を飲んでもう一度眠った。



 そして、翌朝目を覚まして驚く事になるのであった。



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