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アルランティアの日記   作者: 倉門 輝光
魔の森
28/117

地球と、そして竜の住処で

ロートリング邸と、竜の子供達の話しです。

地球/ロートリング邸 



 「アランだった。本当にアランだったな。…ちゃんとここに居ただろう?」


 フリードリヒが言う。

 また光に溶けるように消えてしまったが、たった今までこの腕で抱きしめていた。体温もあった。


 「はいっ!確かにここにいらっしゃいました。普段通りに、元気そうで…」


 セバスが涙を拭いた。

 

 「旦那様、ほら、ピザ、ピザを食べて行かれましたよ」


 アランが一口食べていったピザを持って奈々恵が泣く。


 他にも、その場に居た者達全員が、たった今ここにアランが現れたことを目撃していた。口々に「ご無事なのであれば良かった」と言って目を押さえている。 



 「夢を見ていると言っていたな。あれは今寝ているのか。そのまま帰ってくれば良いものを、何故、夢の中でしかこちらに来られないのか…」


 フリードリヒが悔しそうに言い、そして続けた。


 「だが、160日前後で戻って来られそうだと言っていたな。その前に戻れるかも知れぬが、とにかく少なくとも5ヶ月と少し待てば帰ってくるのだな…」 


 「そうですね。それまでただ待つだけというのは悔しいですが、帰って来られるという目処(めど)が付いているだけでも有り難い。森のあの場所に現れるのでしょうか。想定より早めに戻られるかもしれませんから、明日から常時あの川沿いの場所で待機する者達を手配致します」


 「そうしてくれ。あの辺りのエネルギー場の調査も同時に進めなさい。何か手がかりが掴めるかもしれないからな」


 「(かしこ)まりました」


 「…だが、繋がる扉が閉じてしまったなら、何故アランはこちら姿を現せるのだ?」


 フリードリヒが疑問を口にした。すると奈々恵が答えた。


 「髪です。アラン様の髪がこちらにあるからだと思います」 


 「アランの髪がこちらにあるというのか?どういうことだ?」


 「はい。先日、アラン様のアパートに掃除に参りました際に、バスルームに髪がたくさん落ちておりました。多分、バスルームで髪を切ってそのままにしていたんだと思います。

 片付けて処分しようかと迷っている時に、その髪が光ったのです。ですので、(まと)めてこちらに持ち帰って参りました。

 それがあるから扉が閉じても繋がるのではないでしょうか?妖精たちも半年に一度だけではなく、頻繁に寝ているアラン様の所に現れていましたもの。」 


 「なるほど、アランの髪か。では、くれぐれも誤って処分してしまわないように、大切に保管しておきなさい。こちらとあの子を繋ぐのであれば、半年経たずに帰って来るにも役に立つかも知れないしな。私も少し持っておこう。それが光った時にアランが現れるのかも知れないからな」

 

 「畏まりました。お持ちいたします」 


 「うむ。頼む」


 「夢の中で帰ってくる時は、いつも旦那様がいらっしゃる所に現れるのかもしれませんね。旦那様、おそばにコーヒー等、アラン様の好物を常備するように致しましょうか?お腹を空かせている事もあるかもしれませんし」 


 「そうだな。そのようにしておこう。それと、()いたコーヒー豆もパックして用意しておいてくれ。無くなったと言っていたからな。もしも渡せるなら渡したい。塩などの調味料も一緒にまとめておいてくれ」


 「はい。…アラン様、髪が伸びていましたね」


 「そうだな。1週間もしないのに、だいぶ伸びたようだ」


 「きっと、魔法の力が強く守って下さってますよ」


 「うむ」 






* * * * * * * * * * * * * 




竜の住む山


 身体は30m程はある、顔は恐いが、まだほんの500歳程の無邪気な子竜達は、この日の冒険がばれて大人達に叱られていた。

 近づくなと言われていたにも関わらず、こっそりと抜け出してアラン達を見に行った。それがバレてアランと視線を交わした巨大な竜に呼び戻され、そしてお説教をされていたのだ。



 「「「ごめんなさい…」」」 子竜達がしょんぼりと言った。


 「まったく!お前達は何を考えているんだ!!精霊の至宝に近づくなど恐ろしいことを!」

 

 「…火柱が上がった理由を知りたかったんだ」 


 「馬鹿者が!下手に近付いて怒りを買おうものなら、お前達などその火柱で一瞬で灰にされるのだぞ!」


 「ごめんなさい」


 「他の者達にも絶対に近づくなと言っておけ」


 「はい」


 「子供は怖いもの知らずでいかん」


 「でも、でも怖くなかったよ。キラキラで綺麗だった」


 「…ほう」


 「一緒にいたのはちょっと変わった感じだったけど」 子竜マサオが言う。


 「あれはなんかドワーフみたいに見えたね」 子竜マサミが笑う。


 「そうだね」 子竜マサヨが同意する。


 「あれはこの世界の(ことわり)とは異なるものだ。精霊の至宝が重用しているようだが、何か力を持った異世界のドワーフなのかもしれぬな」 巨竜が言った。


 「あのね!精霊の至宝は形で見るとすごく小さくて、でも、本当はものすごく大きくて不思議だった。こっちを見ないかなと思ったけど、全然見ようともしなかった。僕らなんていないみたいに何かしてた」 

 子竜マサオが言うと、マサミとマサヨもうんうんと頷いた。


 そしてマサミが言った。


 「戻ってくる時、精霊の至宝が魔法で落ちる岩を飛ばしてた。すごく綺麗な力だったよ」

 

 「えー、僕それ見なかった」「いいなあ、見たかったな」とマサオとマサヨが言った。最早叱られているという事を忘れているようだ。

 

 「コラ!まったくお前達は。目を留めて欲しければ、まずは大人の言うことを聞いてちゃんとしていなさい。もっともっと強く大きくなれば精霊の至宝もお前たちに関心を持つかも知れぬぞ」


 「強くなれば僕らのことも見てくれるかな?」

 

 「そうだな。価値があると思えば向こうからこちらを見てくるものだ。強いだけではダメだぞ。賢くなければならん。俺は視線を交わした事があるが、精霊の至宝の方から俺を見ていたのだぞ」


  巨竜が胸を張り鼻息を吹く。


 「本当に?!すごいな!」 子竜達が尊敬の目で見つめる。


 「お前達も頑張って精進していれば、いつかは目に留まることもあるかもしれん」


 「わかった。いい子でいる、頑張る!いつか認めてもらえるように強くなる!」

 

 それからマサオ、マサミ、マサヨは、良く食べ、そして良く火を吐き、よく世界の理を学んだ。

 いつの日か、あの小さくて大きなキラキラと七色に輝く精霊の至宝に見つめてもらえる事を夢見て。

 

  

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