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アルランティアの日記   作者: 倉門 輝光
魔の森
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魔法の検証 竜の考察

 朝から史朗がカメラを持って、「昨日の続きだ。魔法やって、魔法。記録するから」と構えている。 

 

 「とりあえずさ、思いつく所からやってみな」と言われてまずは火。 


 手のひらに火を出してサイズ調節に挑戦。ガスバーナーの調整のイメージでやると結構簡単だった。 

 次に5本の指先それぞれに火を付けてみた。これは昔からやってる光をぽわんのアレンジだから簡単だ。10本の指先同時も問題なし。これが何に使えるのかは謎だが、まあ、暗闇で手をふる時には良さそうだ。


 次はちょっとアグレッシブに指先や手のひらから火炎放射器のイメージで火を出してみた。これは結構カッコイイぞ。3mくらいまで炎を伸ばしたが、それ以上だと木に燃え移りそうだから、向きを変えて空に向けて放ってみた。


 なんか俺は天才かもしれないと悦に入る。竜巻のような火炎が200mくらいまで上がったと思うよ。史郎もすげーな!と興奮していた。

 …この所謂(いわゆる)火柱が、後に俺達に恐怖を運んでくる事は、この時は全く想像もしていなかった。

 

 「大丈夫か?えらく高出力でやってるけど、疲れない?無理はすんなよ」と史朗がカメラを止めて命の水を汲んで来てくれた。

 ガブガブ飲む。疲れはしないけど喉は渇いた。


 「火って言えばさ、焚き火の火の中にたまに顔が見えるんだよな」


 「俺も見える」


 「やっぱり?気のせいじゃなかったんだ。よかった」


 「火の精とかいるのかもね」 


 そう話していると、妖精さん達がニコニコしながら頷いている。居るらしい、火の精。

 じゃあ、命の水川が礼拝で揺れるのも水の精がいるからなのか?

 「火の精がいるらしい」と知り、俺達は焚き火に向かって合掌をする。すると焚き火の火が大きくなって揺れた。

 


 「アランが大丈夫なら次は水な」と、史朗がまたカメラを回す。 


 まずはお約束、手のひらを逆さにしてザーッと出してみた。史朗が「人間水道」と言って笑っている。 

 真水、塩水(海水)、炭酸水と出してみた。味見をしながら「いいね」と言っていた史朗が、「お湯は?お湯は出ないのか?」と言うのでやってみた。ぬるめ、飲めるレベル、熱湯とそれぞれに出た。


 俺達は「風呂に入れるんじゃないか?!」と声を揃えて言った。シャワーでもいいかもしれないけど。


 「おおお!今日は風呂入ろうぜ!」と朝から大盛りあがりだ。 


 何となくだけど、お湯については扱う時に火山というかマグマの存在を感じる。この大地のだ。もしかしたら温泉も出せるのかな?



 そして続く検証。


 これが水魔法なのかどうかよくわからないんだが、俺のイメージ力が良いのか、まさかのチキンスープが出た。コーンスープも。具入りはダメだったけど、スープだけなら出る。すげえな、魔法! 


 だけど何故だかコーヒーが出せない。淹れたての香り高いコーヒーを、どんなにイメージしても出てこない。これにはがっかりだ。


 「それは、アランがコーヒーについての(こだわ)りが強いからじゃないか?」


 「確かに、それはそうかも。コーヒーが手から出るなんて許せないかも。くぅ、便利なのになあ」



 それから指先からウォータージェットを試してみた。石がチューンと音を立てて切れる。思った形にカット出来て楽しい。あとでじっくり石彫刻作品を作ってみよう。

 これを熱線でやれば赤いマントのスーパーヒーローみたいだ。でも目から出すのはちょっとやだ。


 俺はふと、「もう鉄人くんを作る必要はないんじゃないかな」と思い始めていた。


 「次は昨日もやった土魔法ね。今日は撮ってるから女の子作る時は気をつけて。服着せてね」そう言って俺に命の水を飲ませる史朗。


 「はい、監督」 


 まず、足元の地面に縦横20cmで深さ10cmの穴を作ってみた。これ、ミリ単位で調整出来る。思うだけだから簡単だ。

 俺は風呂用の穴を掘ろうか考えていた。表面を超圧縮して土の隙間を無くし、水が染み込まず、そして土が水に溶け出さないようにするか?コンクリにしちゃえばいいのか?または粘土質の土を焼いてレンガみたいにする? ガラス質を取り出してガラスの風呂にしても良いのか?


 俺があれこれ考えていると、史朗が「風呂桶といえば木だろう」と言った。既に誤って切り倒してしまった木を使って風呂桶を組めばいいと。 

 ああ、そうか。別に穴を掘る必要もなかったね。「アランは難しく考えすぎ!」と笑われる。


 「とりあえず後で木を組んでみようぜ。今は検証の続きだ」


 俺のイメージの問題だけど、穴を作ると掘った分の土が山盛りになって消えない。別に良いんだけど、何だかモグラのような気持ちになる。


 「山盛りにしてまとめないで、周囲に薄く撒けば?」と史朗が言う。なるほど。掘った分が出る、だが気にならない程の厚さで周囲に散るのであれば目立たない。ふむふむ。そうすればこの穴は罠にも使えそうだ。 


 それから再び、土人形を作った。今回は無難な所で奈々恵を作りました。奈々恵ときたらセバスかなと思ってセバスも作った。

そしてやっぱ爺ちゃん。それとマサルとマサコも作ってみた。


 「おお、いいね。お前さ、細部まですごい精妙に作るよね。これゴーレム的に動かせたりする?」


 動かすのか。やってみよう。

 まず、セバスに武道の型を幾つかやらせてみた。いける!カッコイイなセバス。 


 「面白いな。泥人形アニメ作れそう」史朗が喜ぶ。


 俺も楽しくて、セバスにマサルとマサコが反抗して飛びかかる動きをやってみた。現実には絶対にやらない事だ。

 セバスが尻を噛まれて逃げ惑う。そこに奈々恵が来て騒ぐみんなを叱る。それを椅子に座って爺ちゃんが笑って見ている。


 史郎と一緒に大笑いしながら、俺はまたちょっとだけ泣き虫スイッチが入りそうになった。イカン。俺は強い男になるんだ。 


 「土人形ってすごいね。これ、兵力になるんじゃないか?」と史朗が言うので、ミニセバス隊を作って、大きな石を運ばせてみた。

 いける!全然いける!

 そのままミニセバス隊がそれぞれに石に向かって割ろうとする動きをすると、史朗がまた大爆笑して「やばい、やばい、面白すぎる!ミニセバス隊かわいい!」と撮影しながら(もだえ)ていた。  


 「なんかさ、アランってやっぱ天才なんだな。改めて思うわ。初めての魔法でそこまでよく出来るよね。石割りも見てただけなのに、実際やったらすぐ出来たのも納得だわ」としきりに感心する史朗。


 「楽しいと思うと、制限って外れるよね。遊ぶのって大事だね」 俺は思った。これが変に強要されてやる事だったら、こんな風にはなってないはずだ。 


 温かいチキンスープを飲みながら少し休憩をした。俺の「好みの味は人それぞれ」という(こだわ)りが働いてしまうらしく、塩加減は個別に本物の塩で調整しないとダメだった。

 


 「次は風だな」 


 俺はまず史朗の髪をなびかせて遊んでみた。


 「…もう、これは良いから別のにして。地味に寒いから!」というので、温風に切り替えた。


 「おお!これは良いぞ。寒い時にいい。ドライヤーとしても使えるな!これさ、風じゃなくて体の周りで空気を纏う感じに出来る?」


 「やってみる。うん、いけるんじゃない?どう?」


 「あ、いいわ。丁度いい気温。お前、ついにエアコンになったな」


 俺は『エアコン』の称号を得た。



 「こういうのって使いようでは防御にもなるよね。俺、これを鉄人くんに搭載したいんだよなあ」


 「いいよね。見えないけどボヨンボヨンって空気の膜でガードされてる感じで」


 「そう、熊と戦っても熊の爪が当たらないの」


 「何で熊と戦うんだよ」


 「…なんとなく」

 

 それから、エアカッターを応用して木材を切り出しておくことも忘れなかった。

 どうしても思考でコントロールしようとしてしまう俺に、史朗が「頭で計測しないで、この木材を使ってぴったりに作れる風呂桶!ってやってみれば?」という。

 

 「作り方はどうでもいいからさ、材料と完成品をバーンとイメージしてやってみろよ。お前は作る過程から考えようとするから面倒くさくなるんじゃないの?」


 そっか。知ってる過程でやろうとすると魔法の(かせ)になるのか。 


 せっかくの魔法だ。無から有を作り出す魔法。思考を脇に置いて魔法任せ、木任せでやってみたら、俺のイメージに合った素敵な風呂桶が組み上がった。これで今夜は星見風呂だ!



 次は雪を降らせてみた。いつも見ている風景だからか、どっかんと周りが雪景色になったよ。

 「雪、見飽きたと思ったけど、こういう風に見るといいなあ」と言っている史朗の首筋に、氷の欠片を入れてみる。「うわっ!ばか!冷てえよ!!」と慌ててるので俺は笑った。


 「熱が出た時にこれで冷やせるね」と言うと「なんか俺達ってさ、発想が平和だよな」と笑う。


 また「こんなに雪を出して疲れないの?」と命の水を差し出す史朗。


 「なんか、全然平気。命の水のおかげかなあ?何かが減る感じはしないね」


 「呼吸をするように魔法を使うな。この雪とか氷は氷魔法ってことになるのかな」


 「冬魔法!」


 「オリジナル名ついたー!」


 そして俺達は吹雪の中で歌を歌った。曲はもちろん「レリゴー」だ。


 「ねえ、魔法ってさ、最初に全身に魔力を巡らせるってよくあるけど、そうなん?」と史朗が聞いてきた。


 「あー、どうかな。巡ってるのかな。そうだな、全身に隈無(くまな)く何かがある感じはするけど、特に巡らせるっていう事はしてないよ。使おうと思うと湧いてくる感じかな」


 「へえ〜。俺が物のポイントを見極める時ってどうだろうな」


 「史朗はさ、集中する一瞬の意識は頭のおでこのあたりにあるよね。それと同時に(へそ)下あたりに気が集まる」


 「確かにそんな感じ!良く分かるね」


 「見てるとわかる」


 「だから石割りもすぐ出来たんだな」


 「自分で魔法使う時は何も考えてないけど、でもそう言われてみると、ちょっと似た状態かも。俺はなんていうか、身体の中心に芯があって、意識は頭で、使う瞬間に臍下あたりが動く感じかな」


 「へえ。そんなのよくわかるな」 


 「手のひらに出した火を小さくする時は、少し手のひらから意識を肩の方に引く感じかな。この感覚が何故かガスバーナーの火力調節のイメージと重なるんだよね。火そのものを小さくしようとすると結構難しい。俺は、だけど」


 「面白いな。でもちょっとわかるわ。なんか物質としての存在を無意識に考えちゃうんだろうな」


 「地球っ子だからね。どっちにしても身体に力が入ってたらダメだよね」


 「そうそう、力が入って『やってやる』ってなってると全然ダメ」


 「力が入ってる時って、多分だけど、ダメだと認識している事を無理やりやろうとしてるんだと思うんだよ。元がダメだと思ってるからダメ。…あああ、俺とキャロみたいじゃん。あああ」


 「そこに持っていくなよ」と史朗が苦笑する。

   

 そして、改めてカメラの電源を入れて「あと何がある?」と言う史朗。


 「後は何だっけ?あ、雷?」 


 というわけで、離れた所にある枯れた木に雷を落としてみようと言うことになった。マ○ティ・ソーみたいじゃん!と言いながら、何となく手を前に出して言った。


 「落雷」 


 ドォオォォォォオオオオオオンッッ!!!



 

 「「あーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!」」


 ヤバい!大惨事だ!!

 ちょっとだけビリビリのつもりが、雷撃が木を粉々に破壊して周囲に火が燃え移った! 


 「え?え?え?」


 俺の後ろから撮っていた史郎と木のあった火災現場を交互に見てアワアワする俺。 


 「け、消せ!雨だ、雨振らせて!あそこだけ!あそこだけ局地的大雨!!早く!!」史朗が叫ぶ。


 「きょ、局地的大雨!!」 


 ザーッと雨が降った。あそこだけ。 

 数分で鎮火したので雨を止めると、そこには大きな虹がかかった。雨上がりの大地はキラキラとしずくが輝いて美しかった。ほんの少しその一体が明るくなったような気がした。


 「あぶねえ。雷は封印だな」


 「だね、びっくりした。放火魔になるところだった」


 「雷はさ、すごくすごく小さく電流を流す練習しといて。そんで日常的には充電に使えれば十分だから」


 「はい、監督」 


 「今日はもうやめとくか。後は話し合ってから試すものを決めてやろう。安全な方向で」


 「はい、監督」 


 とりあえず、光と闇は意味がよく分からないから保留。

 

 昼飯は燻製の弁慶くんヒレ肉と缶詰の魚、それと大ドングリ粉パンのプレーン。ココアがもう無くなっちゃったからね。そして俺特製のコーンスープ。弁慶くんの肉が本当に有り難い。たくさんあるから腹いっぱい食べられる。

 もっと早くに魔法に気づいていたら、もっとちゃんと解体して無駄にせずに頂けたのに。


 「やっぱ卵が欲しいな」


 「そうだね」

 

 ということで、俺達は、午後は卵を探しに森に行くことにした。




*********************



 「親父殿、精霊の至宝達が何やら森で火柱を上げたり、雷を呼んでいるようだ」


 「ふむ。何の意図があっての事やら」


 「雷で焼いた辺りは瘴気が薄れて大地が喜びの歌を歌っていた。火柱は、それを恐れたのか、魔物共が隠れるように闇に潜って行っておるようだ」


 「なるほど。浄化か。この世界にいなかった間のほんの(わず)かな歪みすら正そうというのか」


 「あの火柱で子竜どもが興味を持って騒いでいる」


 「ふん、放っておけ。チビどもには何も出来はしまい」


 「そうだな…」 



 遠い南の山で、とてもでっかい竜の方々がそんな事を話していたらしい。

 


  



とても眠い…。 

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