異世界の空の下でお説教をくらう
前話の続き部分。大変に短いです。
昨夜、あれから俺が「もう帰れないなら、何も伝えられないね…」と言ったら、史朗に「え?何言ってんだよ。帰るんだろ?」と驚かれた。
あれ?もう帰れないかも知れないって事で、キャロの気持ちを俺に話してくれたんじゃないの?あれ?
「あのさ、俺が言いたかったのはさ、お前ら2人共、ちゃんと向かい合って話してないんじゃないの?って事でさ。
だって、キャロさんだって俺に言ったような事お前にはちゃんと言ってないんだろ?当人同士が気持ちを正直に話さないで、関係ない俺に話してもどうしようもないだろ。
お前も自分はどうしたいかを主張しないで、どうせ遊びなんだって1人で拗ねてんじゃん。それじゃ何も変わらないよ。会話が大事!ちゃんと会話をしろ」
会話…。
確かに、いつも笑って躱されて、それ以上明確に拒否されるのが怖くて誤魔化してた。ちゃんと話してなかった。
史朗が続ける。
「本心伝えないでお互いに諦めモードで付き合ってんだもん、うまくいくわけないじゃん。
言葉にすることで何かが変わるのが恐いのはわかるけどさ、変えたい状況があるなら怖がってないで変えようとしろよ。相手が死んじまったら、それこそ二度と話せないんだぞ」
そうだ。キャロはまだ他に誰かを選んだわけじゃない。俺が他にも会ってる子がいるのを知ってても、俺と会うのをやめないでいてくれたじゃないか。
どうせ俺のことなんてどうでも良いんだろうって思ってたけど、もしも、それで悲しい思いをさせていたなら謝らなきゃいけない。
顔をこわばらせて黙って火を見ていた俺の肩をポンと叩いて史朗が言う。
「だからさ、帰ったらちゃんと2人で話をして、自分がどうしたいか伝えろ。それでもキャロさんがダメだって言うならしょうがないけど。何だかんだ言ってキャロさんだって、お前と離れられなくて迷ってんだろ?まだ可能性はあると思うぜ。自分の気持ちを相手任せにすんなよ」
俺は奈々恵が言っていた「目からウロコ」という言葉の感覚を体験していた。
二重の意味で「なるほど」と思っていた。
史朗の言うことは正しい。俺は何だかんだで自分の本当の気持ちと向き合わずに、ちゃんと伝えずに逃げ回ってたんだ。
「まあ、俺はまともに女の子と付き合ったこともないから、偉そうなことは言えないけどな」と笑いながら史朗が頭をかいた。
その仕草って本当にする人いるんだねと言うと「うるせ」って頭を叩かれた。
「とにかくさ、なんていうか、お前はもっと自分の為に生きてみると良いと思うぜ」
じゃ、今夜は俺が先に寝る番な、と言って史朗はテントに入っていった。
俺は星空を見上げた。
自分の為。
誰も関係ない所での自分の気持ち…。
好きにやって来たつもりだったけど、確かに俺はいつも適度な所で折り合いをつけていたかもしれない。史朗が言ってた「良い子」ってのはそういう事なのか。
ああ、俺はやっぱりガキなんだ。俺も史朗みたいに目をそらさずブレないでいられるように、強くなれるように頑張ろう。テントの中でゴソゴソしていた史郎にそう言うと「そうだぞ、この拗ねっ子スネスネめ」と返って来た。
「拗ねっ子スネスネ」…その言葉にあったかさを感じてしまうのは、俺の気の所為ではないと思う。




