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アルランティアの日記   作者: 倉門 輝光
魔の森
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異世界の森 初めての夜(前)

長いので前後編にわけました。 

 焚き火をしながら持っていた食料で腹を満たす。コーヒーを淹れて一息つく。

 近くの小川の水は綺麗で、飲んでも問題はないようだ。というか、ものすごく綺麗で美味い。この水で淹れたコーヒーはここ最近で一番で美味く、身体の疲れが取れるような気すらした。

 

 「命の水」


 俺がつぶやくと、史朗が「また名前がついた」と笑う。


 「もうさ、名付けは全てお前に任せる」と笑いながら言われた。じゃあ、これからもガンガン命名してやろうじゃないか!


 テントを設置した際にソーラー充電器を広げていった。戻ってきた時に満タンになっていたので、ここの太陽でも充電が出来ることがわかってちょっと安心する。

 スマホで時間を確認すると、17時を過ぎた所だった。史朗のスマホも同じ時間だったので間違いはないだろう。少しずつ暗くなり始めている。24時間が通用するのか、昼と夜の長さがどのくらいなのか、これから意識しておいた方が良いだろう。 

 

 「なんかさ、スライムの後があの大蛇ってすごくない?」

 

 「だよね。ゲームで言うとレベル1で順当のモンスターが出たと思ってたら、次がラスボスを更に越えたようなやつで。もう絶対無理っていう」


 「ね。改めて現実なんだなって思ったよ」

 

 「妖精さんがキラキラ飛んでる間は、何となく安心してて良いような気はするんだ。大蛇の時いなかったし」

 

 「電気がついてれば安心、みたいなね。てかさ、アラン、ちょっとあれやってよ」

 

 史朗が人差し指を立てて俺に光を灯せと言う。俺は言われるままに光を灯してみる。

 あれ?なんかいつもより光が大きいぞ。


 「出力アップか」


 「なんだろ。いつもの感じでやってみたんだけど」 そう言って手のひらにも光のボールを作ってみた。


 「こっちもでかいな。しかもラメ入りっぽい」 


 「こんなにキラキラしたことないんだけどな」

 

 手のひらの光のボールは、いつものソフトボール大からバスケットボール大になっている。俺はふと「命の水か?!」と思った。 

 

 「あの川の水って、本当に命の水なんじゃないの?」 ワクワクして言ってみる。


 「えー、それは幾ら俺でもちょっと」 ノリの悪い史朗。


 「他にこの変化の原因は考えられないだろ?」


 「いや、全然考えられるけどな。この場所のせいなんじゃないの?」俺がちょっと興奮気味なのに、史朗はまったく普通だ。


「じゃあさ、史朗も何かやってみなよ。石割りでも良いし」 俺がそう言うと「えー、何でここまで来て石割り?」と言いながら、史朗が近くにあった大きめの岩に向かって、気の抜けたエア正拳突きを放った。


 「セイッ!」声だけ大きい。


 ボンっ! 

 

 「あ」


 「…え?割れた?」


 まるで岩自体が爆発したように、中心からヒビが入って岩が割れて崩れた。


 「今当たってないよね?」


 「当たってない、てか、当ててない」


 「この場所ってやっぱり何か変なのかな…」と俺がつぶやくと、「命の水だ!!」と史朗が大声を出す。チョット待って、さっきと言う事が違うぞ。 

 

 それからしばらく、俺達は「命の水川」から水を汲んで来てガブガブ飲みながら、光を灯してサイズの変化を確かめたり、エア正拳突きでどのくらいまで離れて岩が割れるかなどを確かめた。

 今回は俺も石割りをやってみて、結果は史朗が3m離れて岩が割れ、俺は50cm離れて30cm大の石が割れた。


 「アランさ、セバスさんと訓練してた時に1回も石割りしなかったくせに、いざやるとすぐ出来るのな。ずるいな」


 「ずるくないよ。史朗も明かりを灯しなよ。そしたらお相子(あいこ)だろ」


 「出来ねえもん」


 「んじゃ、もっと命の水を飲め」 史朗の頭を抑えて水を飲ませようとする俺。


 「やめて、流石にトイレに行きたくなるから」 笑いながら顔をそらす史朗。

 

 笑ってふざけている様だが、実は俺達は割と真剣だった。何が出来るか、そしてどれだけ出来るか、やはり把握して起きたかったんだ。



 そんな事をしているうちに夜になる。時計は18時48分。

 

 元々野営をしようとしていた場所と比べると、気温は高いものの、やはり夜は冷えて来た。

 焚き火を大きくして暖まる。火の中になんだかキラキラした顔が見えたり見えなかったりするのは気のせいだろう。口にしないでおく。


 空を見上げると月が2つ見える。「ベタだねえ」と史朗が言う。


 「あれはフォボスとダイモスかな?」


 「ここが火星という前提で言ってるね」

 

 「うーん」と言って、俺が思っていることを話す。「正直俺さ、まだ地球だろうなって思ってたんだよ。希望として、だったらいいなってのも含めて。ほら、地球空洞説ってあるじゃん?」


 「ああ、南極だかどっかから入っていけるってやつか」


 「どこから入るかはわからないけどさ。その地球の内部かな?って思ったりもしてたんだよ。暖かいし。何かの拍子で落ちた的に。空洞説だと太陽のようなものはあるって話だったし。でも、星空出ちゃったでしょ? これは地球の内部じゃないよなって思ってさ…。それに星空もなんか違うじゃん」


 「違うね。知ってる星座がないわ」

 

 「見えてる星の量も、ものすごく多くない?」


 「多いな。夜空明るいよな」

 

 「これさ、俺達の太陽系じゃなくて、もっと銀河の中央に近いんじゃないかな。または違う銀河とか。重力が軽くて、でも歩こうとすれば歩ける…てことは、多分、この星は地球より小さいんだろうと思うけど」


 「こうなると、せめて地球との位置関係だけでも知りたい気がしてくるな」

 

 「火星だったらまだ近所だったんだけどね」


 「ま、近くてもどうにもならないけどな」


 火星なら近所って、どういう感覚だよと2人で笑って、そして少し黙ってから、俺は続けた。「多分、俺達が消えた瞬間から捜索は始まってると思う。GPSが急に消えただろうから」


 「そうなの?」


 「うん。元々、俺にはいつもどこかに護衛がいたらしいんだよ。俺も最近まで知らなかったんだけど。今年の始めにちょっと危険な目にあってさ、それから更に警備が強化されてるはずだから、今回の森歩きも位置は追跡されてたはずなんだ」


 「ああ、聞いた。フリードリヒさんが、気落ちしているようだからよろしく頼むって、俺頼まれた。なんか大変だったな」

 

 「うん、史朗が来て一緒に街に行ったりして、もう大丈夫になったんだよ。来てくれて本当に良かったって思ってるんだ。ありがとう」


 「そんな、こっちこそありがとうだよ。呼んでもらって助かったんだぞ」


 「…なのに、俺が森歩きに誘ったばっかりに、こんなどこだかわからない所に連れてきちゃって…、ごめん」 


 「なんだよ。お前のせいじゃないだろ?」


 「だけど、あの時に俺が史朗の腕を掴まなかったら、史朗はこんなところに来なくて済んだかも知れないんだ」 俺はいい年してベソをかき始めた。


 「お前が掴まなくても俺が掴んでたんだから同じだよ。何だよ、泣くなよ」 

 史朗が笑いながら俺の背中を叩く。「お前はガキなんだから、あんまり思い詰めないで少し俺に頼って良いんだよ。俺はお前よりもずっと兄貴なんだからさ」 


 「うううう…、ありがとう」 史朗がティッシュをくれたので鼻をかんだ。



 俺はなんてかっこ悪いんだ。

 




 

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