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アルランティアの日記   作者: 倉門 輝光
ロートリング
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石積み名人

 俺は爺ちゃんに「あの光のこと、史郎に話した」と言った。


 爺ちゃんは「…そうか」と言って少し黙っていたが、「シロなら大丈夫だろう。だが他の者には見せるなよ」と言った。 

 そして、「シロはなんて言っていた?」と聞くから、「すごいな、きれいだな!って喜んでた」と言うと「それだけか?」と言うので「うん。嬉しそうに笑ってた」と答えた。爺ちゃんはふっと笑って「そうか」と言った。

 

 「何故セバスや奈々恵に言ってはダメなの?」と尋ねると、「セバスは問題なかろうな。だが、奈々恵はな…」と口ごもる。

 え?そこまで信用出来ないって事?俺はちょっとだけドキドキしてしまった。

 爺ちゃんがゆっくりと続ける。

「奈々恵は、大喜びして興奮して、大人しくしてはいられまい。あれは、お前が特別の存在だと信じているからな、増々様子がおかしくなってお前もやりにくくなるだろうよ」


 あ…ああ、そうね。

 そうですね。確かにそう。

 なんだ、やっぱ爺ちゃんも奈々恵がファンタジー過ぎて変な所があるって思ってたんだ。 

 

 「セバスと奈々恵には信頼を置いている。いずれこの先私がいなくなっても、あの2人がいればお前は大丈夫だと思っている。

 だが、あの光の事は、何としても今のうちに知らせなければならない事ではあるまい」


 そう言って、ふっと笑う。奈々恵の個人的な嗜好としては大きな意味をもつだろうがな、と。

 

 「セバスは知っても知らなくても何も変わらんだろう。だが、もしセバスだけが知っているとなると、何事かで話が漏れた時に奈々恵が黙ってはいまい。わざわざ夫婦仲が拗れる危険を犯してまで話す事でもないと思うぞ」

 もしも先々、話さなければならない状況があったら、その時に2人に話せばいいと爺ちゃんが言う。


 「え?! あの2人って夫婦なの?!」 俺はこっちに食いついてしまった。

 

 「なんだ、知らなかったのか?」

 

 知らなかった。全然知らなかったよ! 

 爺ちゃん曰く、2人が結婚したのは俺が6歳になる頃の事だと。幼い頃からずっと変わらずそばにいるから、特に気付かなかったんだろうな、だそうだ。

  

 「セバスは尻に敷かれてるぞ」そう言って愉快そうに笑う爺ちゃん。


 想像に難しくない。

 それに、光のことを内緒にするのは納得したよ。

 セバスはあの光で石が割れれば興味ぐらい持つだろうが、ぽわっと灯るだけだし、「おや、きれいですね。夜トイレに行くのに便利だ」程度だろう。

 奈々恵は…ダメだ。「神よ、私は正しかった!」とか言って泣いて喜び、会う人全てと握手をして回りそうだ。

 その温度差で、尻に敷かれているセバスだけが先に知っていたりしたら、何かでバレた時に絶対にただでは済まないだろう…セバスが。 

 

 そんな風に思っていると、爺ちゃんがにやりと笑って、「奈々恵にバレたら、お前は普段から銀のサークレットを着けさせられるかもしれないなあ」と言う。


 俺は思った。「ダメ、絶対」

 




 そして今日も訓練の時間。


 これまでの訓練は順調に進み、史朗は見違える程に(たくま)しくなった…って事はなく、見た目はあんまり変わらない。でも、強くなったと思う。


 俺達の訓練が終わると、次はセバスの訓練が始まる。

 何って「史朗先生の石割り教室」だ。


 セバスは割ろうと思えば石は割れる。何故なら強いから。だが、大きな石や岩を割れるかと言うと別だ。そんなわけで、史郎にポイントを見極める方法を教わりながら練習を続けている。

 「ここだ!ここでしょう」「惜しい、1cm左、ここです」「くぅっ」というやり取りが続く。

 ポイントを上手く決めれば、力を入れずとも大小に関わらず石を割ることが出来るとセバスは喜んでいる。そんなに石を割る必要はないと思うんだが、何だかとてもハマっている。

 「男のロマンですよ」だそうだ。岩を砕きたいのだと。


 この2人は面白いなと思う。

 セバスも史朗も、それぞれにやり方は違うにしても、恐らく熊を殺れる。セバスはほぼ間違いなく殺れる。強いから。史朗はそこまで強くはないので、逆に殺られる可能性も高いが、上手く回り込んで虚を付き、ポイントを決められれば殺れるだろう。


 熊殺しセバスと熊殺し史朗…か。

 そんな事を思いながら2人の石割り教室を見ていて、ふと思い付いた。


 「ねえ、史朗って、石積めるんじゃない?」と。

 

 皆さんはご存知だろうか。ロックバランシングというアートを。

 色々な石の個々の重心ポイントを見極め、絶妙のバランスで積み上げていく。もちろん、接着剤も何も使わないので、ちょっとした振動で崩れてしまう。

 作り上げても長くは持たない、瞬間の芸術だ。

 一つの石を立てるだけでも難しいのに、世の中にはとんでもない大作を作り上げるアーティストもいる。 

  

 これまでにセバスが割った石たちを指差し、「ちょっと積んでみて」と言うと、史朗が「えー、出来るかなあ」と言いながらひょいひょいと積み始めた。それを見ていたセバスがカッ!と目を見開いて、並んでチャレンジし始める。


 俺はその動画を撮っておいて、「チーム☆フェルナンド」の皆に見せた。

 「うおおおおおお、俺も今度日曜に河原でやってみるわ!」「すごい、史朗君、すごい!」「ちょっと、その動画YahoTubeで公開しなよ」等、毎度ノリの良い反応で気持ち良い。


 もちろん、良い気になってYahoTubeに公開した。

 「鉄人くん」のライブ配信で話題にした事もあってか、結構な反響があった。それが何となく励みになったのか、日々上達するセバス。その手元と作品と、そして既に達人の粋に達している史朗の手元と作品を次々とアップした。


 結果、セバスと史朗はテレビに出ることになった。朝の番組で「こんな人達が話題になってます」というちょっとしたコーナーだけど、見ていた人は多かったようで、史朗はカフェなどで色んな人に声を掛けられるようになったらしい。

 その後もちょこちょこテレビでお声が掛かって、出演しては石を積んだ2人。

 更に史郎は一撃で割る特技も披露して話題の人になっていた。ギャラも出て「こんな事で金をもらっていいのかな?助かるけど」と嬉しそう。

 セバスも「君は面白い特技があるらしいな」と、爺ちゃん関係の人達に持て(はや)され、顔は真顔のままだったけど、ちょっと嬉しそうだった。 

 

 そんなある日、史朗が「鉄人くん」の作業を見ながら、「これ、完成したら試運転してみたいなあ」と言った。コスプレでアイアンマンをやっちゃう史朗としては、憧れのスーツなんだと。

 完成はまだ先だし、完成したとしても最初の試運転はそれなりの人を用意する予定だ。史郎が希望しても絶対安全だとわかるまではノー。でも、安全だと確認が出来たらちょっと着用してもらうのはオッケーだ。

 「じゃあ、史朗の体格を基準にして組むから体鍛えておいてよ」と言うと、「まあ、これが完成するまで、ここでお世話になってるわけにも行かないけどな」と笑う。 

 

 史郎が来てから、もうすぐ3ヶ月か。

 うちはずっと居てもらって構わないし、何だったらこっちで仕事を見つけて、移住してくればいいのにって思うけど、史郎はそれはいくらなんでも頼り過ぎだよと言う。

 「勢いで来ちゃったけど、日本に祖父母と暮らした家もそのままにして来てるし、いずれにしても一旦帰って今後の動きを考えないとな」と。

 

 少しずつ春に近付いて来て、もうすぐ俺の18歳の誕生日が来る。

 日本に戻るなら誕生日を祝ってからにしてよと言い、史郎もそうすると言う。

 

 そうだ、その前に史郎と一緒に森歩きをして来よう。4〜5日くらい森を歩き回って、野営して過ごそう。

 史郎に言うと「それは体験しておきたいな」と乗り気だ。


 

 その日からセバスの訓練に森での過ごし方レッスンが加わった。

  

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