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アルランティアの日記   作者: 倉門 輝光
人間界
116/117

顛末 1


 俺達がワルノー城を制圧した時はもう日が高く登っていた。そしてその頃、俺の家族達もそれぞれに動いていた。

 そちらのフォローに向かうため、史朗と俺とグレゴリー達シャノトワ騎士団の3人は、ワルノー城のことはシュバルツ率いる王国黒騎士団に任せこの現場を離れることにした。


 『色々と聞きたい事が山積みだが、あとで聞かせてもらえるんだろうな。なあ、若様よ』


 俺達がワルノー城を去る時に、目は笑っていないニヤニヤ顔でシュバルツが言った。アーテルやネロも同じ様にジッとこちらを見ている。まあ、疑問だらけなのは確かにそうなんだろう。人族からすると異常なレベルの高さである魔皇帝グループや史朗。そしてアンティアン(蟻人)とは聞いていたが実際にはわけがわからない俺という存在。グレゴリーの発言でシャノトワ公爵家の関係者だと当たりはつけているんだろうが、それも含め謎だらけのはずだ。


 俺は『ああ、すぐに疑問は解消されると思うよ』と片手を上げて、史朗と共にジャンプしてその場を離れた。応援が必要な場に向かうために。


 グレゴリー達は別行動で、普通に馬を使い転移門まで移動して一度シャノトワ城に戻る。

 出立間際にジェスが馬上から『シュバルツさん、気持ちはわかりますけど、あんな口の利き方して後で絶対に後悔しますよ』と本当のニヤニヤ顔で言ったらしい。

 すぐにグレゴリーが余計なことを言うなと叱り、だが、その後に『ただの若様ではありませんからな。確かに態度は改められるがよかろう』とシュバルツに言った。グレゴリーの背に背負われていた子株も小さく細い触手をシュバルツに向け叱る様に『らぷぷぅ!』と鳴いたそうだ。

 そして、困惑する3人の黒騎士達を残してシャノトワ騎士団の精鋭3名もワルノー城を後にした。

 


 *********



 さて、ワルノー城の城壁を出た頃に史朗が言う。


 「なあ、アラン、ジャンプして行くより丸で飛ぶ方が速くないか?」 


 ですよね。


 「うん、ある程度離れたら透明丸にしようと思っていた。あの場でいきなり透明丸で浮かんで飛ぶのはどうかなと思ってさ」 


 「今更って感じもするけど、あの3人以外の黒騎士はお前の特殊性に触れてないからな。まだ隠していた方が良いか。そういや、ニルスは今回は来ないんだな」


 「ああ、ニルスが飛んで来ちゃったら何か色々と面倒になるだろ?今回は我慢してもらってる」

 

 「目立つしな。てかさ、お前は転移とか出来ないの?」


 「ん、出来るかな。…なんか楽勝で出来そうだな。マルコシウスくんが転移するの見てるからイメージしやすいし」


 「じゃさ、転移しようよ。一番に駆けつけた方が良い現場を特定して、転移で行っちゃおうぜ」 


 それもそうだと立ち止まる。

 俺は意識を広げて、皆が活動している各現場の様子を拾う。それぞれの動きをチェックしてみたが、皆もスムーズに作戦を進めているようだった。応援はいらないんじゃないかと思うくらいに素晴らしい動きをしている。


 

 まず、ワルノー侯爵の協力者であるランタン男爵の元に向かったお祖父様と王国赤騎士団は、男爵邸を制圧しランタン男爵と配下の者達を捕えていた。

 男爵邸やその他の関連拠点からこれまた犯罪の証拠がボロボロと出て来て、言い逃れが出来ない状態で捕らえられたランタン男爵は「もはやこれまでか!」と悪役定番のセリフを吐いて、隠し持っていた毒を(あお)り自害を試みたらしい。


 咄嗟にお祖父様が「逃げるのは許さぬぞ!」と言って、俺が渡しておいた「爺ちゃん印の回復飴」をランタン男爵の口に放り込み、口を抑えて頭を殴って飲み込ませたそうだ。

 更に王国赤騎士団の回復魔法使いが即座に解毒と蘇生をかけた為、ランタン男爵は不味い毒を味わっただけで全くダメージが無く、むしろ健康的にぴんぴんした状態で捕縛されたらしい。


 ここはもう大丈夫そうだな。



 ランタン男爵と同じくワルノー侯爵の仲間、いや、手下であるビヨーク伯爵は偶々この夜も王都の伯爵邸で顧客を集めた仮面舞踏会と称した奴隷オークションを開催していたようだ。ここにはお祖母様が嘗ての部下である王国桃騎士団と共に向い、違法オークションが開催される現場を抑えていた。


 陰に潜み続々と集まる者達を見つめながら、『あらまあ、これもまた天の配剤かしらねえ。丁度良い時に集まってくれて手間が省けると言うものだわ』と、戦いの衣装に身を包んだ貴婦人、いや貴武人がにっこり微笑む。


 その隣では王国桃騎士団の現団長ローゼンが、この貴武人、白髪混じりの赤毛の女性の凄みのある微笑みに冷や汗を流している。

 部下に伯爵邸を包囲するように命じながら、心の中で「(伝説の女獅子、元団長殿は引退されて15年というのに覇気は現役そのものではないか。…くっ、怖い。一瞬漏れ出た殺気の凄まじさよ。俺が敵であったなら今この時に五回くらいは死んでいたかもしれぬ)」と呟いていた。


 『ローゼン団長、気が散っているようだけど、桃騎士団にヘマは許されないわよ。気合を入れて一人残らず生きたまま捕えますよ。いいですね?』


 『は、はいっ!』


 ビシッと背筋を伸ばした王国桃騎士団の現団長ローゼンは、許されないんじゃなくてヘマしたら俺が死ぬんですよね!?と思いながら、「では…」とケータイで副団長へ行動開始を告げる。

 そして伯爵邸は程なく制圧され、オークションを主催していた伯爵達と共に、「禁じられた商品」を目当てに集まっていた顧客達も捕縛される事になった。他国の者を含む大勢の捕縛者が出た事により、桃騎士団はその対応でしばらく休む間もなくなりそうだ。


 ここも既に応援は要らなそうだな。 

 

 「なあ、桃騎士団って女性だけの部隊なのか?」と史朗が聞いて来た。

 

 「いや、見た所では他の団と同じで大半は男性騎士みたいだよ」


 「そっか。桃色だからってレディースってわけじゃないんだな」


 「レディース?」


 「いや、何でもないよ」  


 何だろう?まあいいか。

 レディといえば、姉上の方はどうなっているかな。


 今回唯一国内ではなく隣国イヴォール王国での作戦なのが姉テレーシア。


 他国での活動になるので、事前に国同士で話を通さねばならない。

 イヴォール国内での捜査許可は、姉テレーシアがイシルディン国の使者として直談判(ゴリ押し)で取り付ける予定だった。

 嫁いだ先がイヴォール王国の王家の流れを汲む現在はサコヴィネ伯爵であり次期侯爵家当主のチェリエス。更にその美しさとインパクトで王の覚えもめでたき姉であれば話を通すのは難しくはないだろうと思われた。


 そもそも、貴族邸への捜査であれば手続きが大変面倒であったようだが、幸い第一捜査対象のブラックモアは平民の商人である。ちょちょいと嫌疑を幾つかあげ、イヴォール国に於いてもこの機会にブラックモアを検挙する事は利にになるはずである。


 が、如何に神の直系と言われている神聖イシルディン王国の元公爵令嬢を通した依頼であっても、隣国に痛くもない腹を探られるのではないかと思ったイヴォール国王は捜査協力を断ろうとしていた。

 

 姉テレーシアが『ぐぬぬ』と思っていたちょうどそこに、イヴォール王国の聖女と名高い女性が急ぎ王に謁見をと現れ、入室するやいなや挨拶もそこそこに、『イシルディン神のお声を聞きました。神は再び人の世にご降臨なさいました!』と訴えた。


 実際、俺がこっちの世界に戻ってから、多くの人達がこれまでとは違う感覚を感じたり、神官達が光が強くなっただの、夜明けの時がやって来ただの言い出していたそうで(両親が俺の気配が強くなったと捜索を再開した頃だ)、幾つかの国の上層部では何かが起こっているようだと秘密裏に情報を集めていたのだ。だが、真相には辿り着かなかった。


 そんな聖女の発言をこれ幸いと、姉テレーシアは『まだ公にはなっていませんが、実はイシルディン王国の王都とシャノトワ領に神の鳥が現れました』と言った。

 イヴォール国王は、それでは聖女が言うご降臨はやはり神聖イシルディン王国に!?と慌て、何としても繋がりを強くしなければと、乗っておけ、この波に!という事になったようだ。


 『神がお戻りになるのであれば大掃除は済ませておくべきであろう。テレーシア・サコヴィネ伯爵夫人、我が国の国民として遠慮なく働いて欲しい。第二騎士団を貸し出そう。協力してこの国に巣食う悪を払うのだ』と全面協力を申し出て来た。 


 聖女が『サコヴィネ伯爵夫人から強い神の加護を感じます』と言い、そこに乗っかった姉テレーシアがにっこり微笑み『神も陛下のご協力を嬉しく思われることでございましょう』と何やら仄めかす様に言うと、『う、うむ。左様か。よしなに、よしなにな!』と興奮していたという。


 いつか会う機会があったらイヴォール国王に『協力ありがとう』って言ってあげよう。または聖女様を通してメッセージを送るのでも良い。


 てか、聖女っているんだな。どんな人だろう?おばばみたいなおばあちゃんなのかな?ダジャレがわかる人だといいな。


 とにかくそんなわけで、姉テレーシアと義兄チャリエス・サコヴィネ伯爵夫妻は、イヴォール国第二騎士団と共に、ブラックモア家を始めとした禁制品製造や人身売買、その他それこそ国際的に悪事を働き続けている奴らの摘発に当たっている。


 一度は10年前の俺の捜査の流れで検挙され撲滅されたかに見えていた国際的な組織が、密かに生き延びていて再び勢力を広げていた。決して放置してはいけない。イヴォール王国でも既にブラックモア家やその仲間の拠点の洗い出しはしていたのだ。踏み込む機会を伺っていたのである。


 姉夫婦とサコヴィネ家の私兵サコヴィネ騎士団がまずブラックモア家に向かう。同時にイヴォール王国第二騎士団がその他の拠点を抑える。第二騎士団長には連絡用の携帯魔道フォン、通称ケータイが貸与されていた。義兄チャリエスが自分のケータイを貸し出したのだ。

 もちろん国王やその側近にもケータイの存在は知らされ、実際にイヴォール国王とイシルディン国王がケータイで会話をしたそうだ。


 『私もこれが欲しい』と言われ、イシルディン国王は『神の御心に添えば与えられるであろう。多分、今回の協力によって与えられる可能性は高まったと思っているよ』と答えたそうな。


 

 そのようなわけで無事に国のバックアップを受けて作戦決行となっている姉部隊。ワルノー城近辺で俺が動向を窺っていたその時、正に姉テレーシア達はブラックモア家に乗り込む所だった。


 「史朗、今から姉上達がブラックモア邸に乗り込もうとしている。あ、屋根についている風見鶏みたいな物が魔力を溜め込んでる!まずいぞ、あれは自動で侵入者を攻撃するものみたいだ!姉上達は気づいていない!!」


 「アラン、今すぐ転移しろ!早く!!」 


 史朗が言うが早いか、俺はブラックモア邸に転移をしていた。そしてすぐさま風見鶏のような魔道具を破壊した。 

 



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