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アルランティアの日記   作者: 倉門 輝光
人間界
115/117

魔花

地球語(英語/日本語)での会話(聞き取り)を「」で、グラウギリスの言葉での会話を『』で表記してます。





 ドアが破壊され侵入者ありという事態の中、魔導士達やワルノー団構成員の悪者どもは俺達の姿を見つけられず右往左往している。このまま姿消しを解かずに素早くやつらを捕縛し、捉えられている人達を解放しよう。


 と思いながらも、つい視線はドデカい魔物に釘付けになってしまう。花が咲いているこの植物の魔物は、ドアが破壊された事を察知していてこちらに意識を向けているらしい。触手の先がこちらに向かって伸びようとしている。だが、魔導士達に動きを封じられている為、思う様にはならないようだ。


 まさか、あのクソキノコみたいに花粉を飛ばしたりしないだろうな?等と嫌な事を考えていると、史朗が小声で話しかけて来た。


 「なあ、こういう怪獣いなかったっけ?」


 こういう「怪獣」だと?その問いかけに、俺は初見でちょびっとだけ頭を掠めたものの即座に否定した大変嫌な考えを思い浮かべた。

 やはり史朗も思ったのか。しかしダメだ、言わせないぞ!史朗の思考を誘導してやる。敢えて違うモンスター名を言おう。すり替えてやる。


 「ああ、マンドレイク?」


 「いや、それじゃなくて」 


 「じゃあ、ペットショップオブホラーズのアレかな?」 

 

 「違うって。あのバカでかいバラの樹みたいで触手があって、そんでグロくて気色悪い花が咲いてる感じって、ほら、お前の好きなゴジラ系でさ、何だっけな」


 くっ!誘導に乗って来ない。


 「あ、あれだ!ビオラん」


 「やめろ!それ以上言うな!!」


 しまった。つい大声を出してしまった。だが止まらない。


 「史朗、今言ってはいけない事を言ったな?しかし違うぞ、全然違う!この臭い魔物と、靖子とゴジラがひとつになったビオ○ンテを同系列にするなんて許さないぞ!!」


 ああ、史朗がこっちに顔を向けてキョトンとしているのがわかる。多分ゴーグルの下では目を見開いてキョトンとした顔をしているのだろう。他の俺小隊の面々も固まってこちらに顔を向けているに違いない。だが黙ってはいられない。こんな事を言っている場合ではないのはわかっているが、言わずにはいられなかった。握った拳がぷるぷるしてしまう。

 そんな俺にグレゴリーが慌てて声をかけて来る。


 『若、どうなさったのですか。落ち着いてください』 


 また「若」って言っちゃってるぞ、グレゴリー。


 『おいおい、何だ一体?こんな所で仲間割れかよ』と、わざとらしく「若」発言をスルーしてシュバルツが言う。そしてネロが『さっきのは何語だ?』と呟いた。


 落ち着け俺、どうどう。そうさ、わかっている。史朗は正しい。確かにあの魔物の形状はビ○ランテ似ていないとは言えない。というよりむしろ似ている。でも、認めたくなかったんだ。


 『すまない。つい魔物の種類についての議論が白熱してしまった』


 俺は俺小隊の全員に向けて言った。日本語の会話を議論していたと誤魔化す。


 『史朗はあの花魔物を、あるとても強力で高貴な種族の亜種ではないかと推測したんだ。だが、そうじゃないんだ。愛好家・・じゃなくて、研究者としてはその致命的な間違いを指摘せずにはいられなかった。そこにいる花魔物はもっと違う普通の、えーと、あれは、あの、そう!あれは「魔花ラフレシア」という魔物なんだ!!』 


 『『『『『『『『『 魔花ラフレシア!? 』』』』』』』』』

 

 俺と史朗を除いた俺小隊全員が声を揃えた。


 『そんな魔物がいたのか…』


 信じられないという様にアラナミが呟く。


 『私は食肉妖花オクトパカズラかと思っていました。まさか我等ですら知らない魔物だったとは…』と、サザナミが言う。


 『うむ、我も食肉妖花オクトパカズラと思っていた。ここの奴らが魔力持ちの人間をオクトパカズラの餌にする事で、より毒性が強い毒液を抽出しているのかと。或いは以前から問題となっている、魔力持ちの幼子を魔物の生き餌にする事で、純粋な恐怖や苦痛が生み出す特殊な麻薬、精神を冒し洗脳する毒成分を、この魔物に生成させていたのかと思ったのだが…。しかし、これがオクトパカズラでないのであれば一体何をしていたのかわからなくなった』


 あー、あー、多分マルコシウスくんが正解。こいつはオクトパカズラって魔物に間違い無いだろうから、その推測で大正解。多分。いや、もう絶対そう。


 魔物専門家の魔皇帝グループの言葉に、そしてマルコシウスくんの長台詞に、黒騎士2人もグレゴリー達3人も頷いている。みんなはこの魔物と人々の状況を見て答えに辿り着いていたらしい。ちゃんとわかってなかったのは地球から来ている史朗と俺だけだったようだ。


 せっかく皆が正解していたのに、それが俺のでっちあげで話が明後日の方向にずれて行きそうになっている。申し訳ない。正直に嘘ですって言おうか、いや、間違えた事にしようかな。「どうしよう」と史朗に言うが、史朗からは答えはない。呆れている空気だけが伝わって来た。


 やっぱり早めに訂正をしておこうと、俺が『あの、すみません』と口を開こうとしたその時、ゴゴゴゴゴゴゴ!!と大きく床が揺れた。


 地震か!?いや、違う!


 正式名称:食肉妖花オクトパカズラが、小さめの花が付いた8本の触手花を振り回しながら、本体をぐるんぐるんと回転する様に振って揺れ始めたのだ!

 封じていた魔法陣もその動きを抑えられないようで魔道士達が慌てている。


 苦しんで暴れているように見えるオクトパカズラ。その巨体の表面に幾つもの亀裂が入り始めた。そして割れ目からは白い光が出ていて…、こ、これは!? 


 暴れる魔物の様子に身構えている俺の耳に、「あー、アラン、おまえ久しぶりにやったな?」と感情を殺したような、というか棒読み調の史朗の声が聞こえた。


 「久しぶりにって、…そんな」


 俺の小さなん呟きをかき消す様に食肉妖花オクトパカズラ全体が光り、その場にいた(俺小隊以外の)者が眩しさに顔を覆う。


 数秒して光が収まる頃、(多分ジェスの)『あ!俺、神具を装着してるのに目を瞑っちゃったや、てへ』という、異常事態の真っ最中とは思えない緊張感皆無な呟きと、それに呼応する様に(多分グレゴリーが頭を叩いたのであろう)バシッという音が聞こえた。 

 

 ネロが『おい!魔花ラフレシアが赤い点から青い点に変わったぞ!』と言った。

 確かにマップ上に映し出されている大きく赤かった点が、大きな青い点に変化している。


 『見ろ!魔花ラフレシアの姿が変わったぞ!』


 見たことのない魔物の変化に驚いている魔皇帝グループ。魔物の変身を目の当たりにして唖然とする黒騎士団精鋭の2人とシャノトワ騎士団の3人。あと、敵である魔導士達やワルノー団構成員達。

 

 俺達にだけ聞こえる声で史朗が言う。


 『大丈夫だ。いつもの事だから心配ないぞ。パワーアップして生まれ変わっただけだ。あの色合い見りゃ何となくわかるだろ?』


 『まさか・・・名付けか!?』


 さすがは魔皇帝マルコシウスくん、魔物専門家のトップだけある。そう、旧称:食肉妖花オクトパカズラは、たった今「魔花ラフレシア」として爆誕してしまったのだ。


 おどろおどろしい魔物の姿から、つるつるツヤツヤになり、明るい光を纏った清らかそうな姿になっている。異臭を放って毒々しかった花は一回り大きくなり、その花びらは真珠の様に淡く輝いている。夢の様に美しい大輪のバラとなって甘い香りを放っていた。

 幹の部分は爽やかな緑。そこには透き通る宝石の様な紫色の棘がたくさん付いていた。触手も美しい緑色で、先には可憐なパステルカラーの小花が咲いている。色はきれいでも、そこはやはり魔物。小さい花達には鋭い歯がついていて、こっちを向いてニッコリを笑うからちょっと怖い。


 「嘘だろ」と俺が言うと、まるでそれに応えるかの様にラフレシアが「らっふ〜ぅ♪」という雄叫びをあげた。


 「・・・はは、鳴き声が『らっふぅ〜』かよ。ははは」と史朗の乾いた笑いが聞こえた。



 俺たちの頭上から鼻にかかった男の声が言う。


 『我が創造主よ、生まれ変わった私の活躍をご覧あれ❤︎ これまでの罪滅ぼしにいっぱい働きますわ!まずはあの憎い魔導士どもから血祭りにあげてさしあげましょう!いくわよぅ!らふぅ♪』


 魔花ラフレシアは元々知性のある魔物だったのか、それとも変化によって知性を得たのか。流暢にしゃべったと思ったら、オクトとあるように8本ある触手を使って、らふらふ鳴きながら、未だ混乱中の敵達、魔道士や構成員達を襲い始めた。 


 まって、お前雄株だよな?声が男だもんな。でも、あれ?花だから言葉遣いに違和感がなくて、あれ?と、どうでも良いことであたふたしている俺の前に、実にいい顔をしたマルコシウスくんが来てきらきらした目で言う。

 

 『我らも知らなかった魔物なのではなく、新たに生み出されたのですか!さすがは我が君(レ・アラン)!』 


 それに倣う様にサザナミとアラナミも魔花ラフレシアを褒め称える。


 『見ろ!魔花ラフレシアの戦闘力のなんと高い事か!確かに妖花オクトパカズラよりもずっと高位の存在だ!』 


 『ああ!素晴らしいな!』


 魔物専門家の魔皇帝グループが興奮している。

 

 「アラン!あいつ根っこで歩き出したぞ!!すげえな、ビオラん・・じゃなくてラフレシア!行け!ゴーゴー!!」


 史朗も興奮している。


 てか、本当に根を引き抜いて歩きながら敵を襲っているぞ。己を封じていた魔道士達を執拗に狙っている。一撃で殺れそうなのにそうしないでじわじわといたぶっているようだ。きっと、封じられてすごく怒ってたんだな。

 あの魔道士達も妖花をずっと封じていたわけだから中々の腕前のようだが、変容してしまった今となっては繰り出される麻痺も火炎も雷も風刃も全然効いてない。むしろ、『ここちよし〜❤︎』と叫びながら快調に叩きのめしている。きもい、じゃなくてすごいぞラフレシア!


 あ!ラフレシアが氷漬けにされた!植物だしこれは流石にダメか?と思ったら、触手の小花を回転させて歯で氷を削り始めた。そして氷の器も作り、かき氷のように削った氷くずを器に盛っている。何をしてるんだ?


 ラフレシアは自分は半分氷漬けになったまま、作ったかき氷をこちらに差し出して来た。一番近かった魔皇帝マルコシウスくんが受け取る。そのまま困惑した様子で氷の器を持っていると、ラフレシアは裏声で『カジュ〜♪』と鳴いて触手から赤い液体を出しかき氷にかけた。それから軽々と自分を覆っていた氷を崩してまた暴れ始めた。

 そんなラフレシアを尻目に、マルコシウスくん達がそのかき氷の味見をしようとしている。まじか!?それ食べるの?大丈夫なの?


 『む!これは!』

 

 『おお、上級、いや特級ポーション!』 


 戦闘はすっかりラフレシア一体にまかせていて微妙に暇な俺たちは、魔皇帝グループの「特級ポーション」という言葉に「どれどれ」と輪になり皆でかき氷を口に含む。あ、イチゴとカシスを混ぜたみたいな味だ。美味しいな。


 『これは良い。一気に全快に近い回復効果を得られます。捕えられている者達を解放して与えましょう!』


 グレゴリーの言葉に全員が頷き階下へと急ぐ。俺は階段を降りながら「ラフレシアのカジュー掛けかき氷」の数を複製し増やした。

 ジェスがぼそっと『カジュ〜じゃなくてジュエキ〜なんじゃないのかな?』と言ったが、ダリルが『シー!そこに気付くな』と黙らせていた。


 階下に下り姿消しを解いて、捕えられている者達を檻から出してかき氷を与えようとする。かき氷の元がそれまで自分たちを餌にしようとしていた魔獣である事を見ていた者達は、当然だが嫌がった。

 だが、一人が恐る恐る舐めて『美味い!あ、傷が治った!!』と声を上げると、次々に受取りしゃりしゃりと食べ出した。

 寒いとか冷たいとかいう声も聞こえたが、その後にすぐ『元気ハツラツ!』『ファイトぉー!』『イッパーツ!!』という嬉しそうな声に変わっていった。  


 そうしている内にアーテルと共に黒騎士団が到着する。暴れているラフレシアに驚き戦闘体制に入ろうとしたが、シュバルツに敵ではないと説明をされ剣を納めた。


 黒騎士団は、ラフレシアが殺さず意識を刈り取っていた奴らを捕縛して連行。施設内で捕まっていた他の人達は、ラフレシアが固定されていた場所の土から俺が生み出したセバス隊が無事保護をした。

 別の場所には、魔力のある子供を生ませる目的のために捉えられていた女性達や、生まれた赤ん坊や子供達がいて、そちらは奈々恵隊が甲斐甲斐しく世話をし、少し元気な子供達はミニセバス隊が対応した。

 

 ワルノー城は完全に制圧され捜査が入る。そちらは王命で動いている黒騎士団に任せて、俺達は城の外に出た。何も知らずただ真面目に勤めていたワルノー城の兵士たちも、黒騎士団の指示に従って動いているようだ。


 城の前庭に出て来た俺達の周囲で、急に武器を構えて戦闘体制に入る者や叫ぶ者達がいて、一体何事かと思ったが、当たり前の様に俺達の後にゆらゆらと揺れながら付いて来ていた巨大な花魔物ラフレシアに向けての事だったと気付いて、俺は膝から崩れ落ちそうになった。 


 嘘だろう?おまえ一緒に来るのか?? 

 

 俺が振り返り固まっていると、それまで静かだったのに『らふん♪らふふん♪』と鳴き始め、嬉しそうに揺れるラフレシア。触手はにょろにょろしているし、さっきより増えた葉がわさわさしている。


 「おまえの魔花なんだから、そりゃ付いて来るだろう」と史朗が言う。

 

 「いや、でも、どこに植えたら良いんだ。シャノトワ城は多分父上の許可がおりないぞ。王宮?王宮に預けちゃう?それとも癒しの森?あ、ジラール達と仲良しになるかな?」


 俺と史朗がぼそぼそ話していると、事態を把握した様子のマルコシウスくんが話に入って来た。 


 『我が君(レ・アラン)、新種である魔花ラフレシア殿を、どうか我らが国に迎えさせてはいただけませんか?』 


 本気か?


 『それはすごく助かるけど、いいの?』 


 『はい。聖なる創造により生まれたとはいえラフレシア殿は魔物ですから。我らが国に迎えても何も問題はありません。なんといっても新種とあっては我らが学ばぬわけにはまいりませぬ。どうか、魔花ラフレシア殿を迎える栄誉をお与えください』 

 

 『それじゃお願いしようかな。ラフレシアが最初にかき氷を渡したのもマルコシウスくんだったしね。ラフレシアも何か感じるものがあったんだろう』 


 『ありがたきお言葉。あのカジューなる特級ポーションの研究も併せてさせていただき、ご報告を致します』 


 そうだね。あれはたまたま氷漬けの氷を壊して作っていたけど、氷が必要なのかそうじゃないのかも気になる所だ。謎を探るのは専門家に任せよう。それにマルコシウスくんなら信用出来るから特級ポーションの管理も任せられるだろう。 


 『うん。じゃ、このまま連れ帰ってくれる?』


 『は!』 


 魔皇帝グループは、らふらふ鳴いているラフレシアに自国に迎えたい旨を話し一緒に転移して行った。

 最後に別れを悲しんだラフレシアが、『私の分身らふ』と小さな子株を残して行ったので、俺はそれをそっとグレゴリーに渡した。

 幼い声で『らぷぅ〜』と鳴く子株を受け取ったグレゴリーが、『小さいとかわいいものですな。これもポーションを出すんでしょうかなあ?おお、よしよし』とニコニコあやしてしていたのがちょっと意外。

   




「やばい 半年経っちゃった」 

そうつぶやいて筆者はパソコンを開いた 


というわけで、ようやく更新しました(汗)



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