8何だか‥
それから一週間が瞬く間に過ぎた。
ディアナはアメリア王女のティアラの事もあったし月末で支払いや決算書類の整理で忙しかった。
やっと月が変わった朝朝食の席にカレンがいない事に気づいた。いや、気づいてはいたがかまっている暇がなかった。
「アルベルト、カレンさんは朝食に来てなかったかしら?」
「ああ、彼女朝は苦手だって言ってたから、俺たちが出かけてからゆっくり起きてるんだろう」
「昼食でも顔を合わさないわよ」
「そりゃ、朝が遅けりゃ昼飯どきに腹は減らないだろう」
「まあ、じゃ一日二食しか食べてないのかしら?」
「あっ、この前途中で帰ったらクッキー食ってたぞ。あれは俺が取引先で貰ったからってカレンさんにやった物だけどな」
「まあ、そんな物いつ貰ったのよ。いつもは私にくれるじゃない」
「たまたま彼女がいたからだよ」
「私が甘い物が好きだって知ってるくせに!」
「大袈裟だな。今度貰ったらディアナに一番にやるよ」
「そう?約束よ」
「ああ、まったく女ってのは菓子ひとつで顔色を変えるんだから」
その日の夕食でディアナはカレンに話をした。
「カレンさん、そろそろ落ち着いた頃じゃない?一度工房に行って見ましょうか」
ディアナはカレンに選択肢を与えるつもりはなかった。
そうでなくてもアルベルトとの距離は近い。自分の目の無いところでカレンがアルベルトと間違いを起こすかも知れない。何しろ彼女はもう未成年ではない。そう言う関係を持っても罰せられる年ではないのだ。
アルベルトはどう思っているかわからないが、ディアナには何かわからない不安がせりがって来るような気がするのだ。
「はい、奥様いつまでもこうやっている訳にはいきませんので、明日、工房の見学をさせて下さい」
「ええ、カレンさんがその気ならいつでもいいのよ。じゃあ明日私と一緒に工房に行きましょうか。明日の朝は8時に起きて朝食を食べましょうね」
「はい、わかりました」
意外とすんなり話が進んでディアナはほんの少し違和感を覚えた。
その翌朝だった。
8時を10分ほど過ぎた。
「カレンさん遅いわね。ちょっと様子を見て来る」
ディアナはカレンに部屋の扉をノックした。
「カレンさん、そろそろ時間よ。起きてちょうだい」
「う、うぅ〜ん、わたし‥」
カレンの様子がおかしい気がしてディアナは中に入ると言って部屋に入った。
服は散らかり放題でゴミがあちこちに散らばっている。
「まあ、どうしたのこの部屋」
ルナからはカレンが部屋の掃除はすると言ったらしく彼女は部屋には入っていないと聞いていた。
「すみません奥様。私、何とか起きるつもりだったんですが、どうしても気分が悪くて」
カレンはまだベッドにいてかけ布団で顔を覆っていた。
「まあ、熱は?」
ディアナがカレンの額に触れようとすると彼女は言った。
「私、貧血があって朝はいつも起きれないんです。前の家でも朝はゆっくりでいいって言われてたので‥あっ、でも、そんなわがまま言ってられませんから」
カレンは辛そうな顔をして起き上がった。
「仕方がないわね。カレンさんだったら朝決まった時間に起きる事から練習しましょうか。今日はとにかく起きて座って落ち着いたら朝食を食べて‥そうだ。午後に工房を案内するわ。それならいいんじゃない?」
「奥様申し訳ありません。では午後には工房に行けるように準備しておきますから」
「ええ、じゃあ、そうしましょう。とにかく座ってその後朝食を食べて、私たちは仕事があるから出かけるけど昼には帰って来るから」
「はい、すみません」
ディアナは仕方がないとその場は収めて仕事に行った。
ディアナは昼食に合わせて屋敷に帰って来た。
「ルナ、いつもありがとう。カレンさんは朝食は食べた?」
「はい、昼前に起きて来られて、昼は食べられそうにないと仰っていました」
「そう、じゃあ昼食後に工房に案内する約束をしているから食べたらカレンさんを呼びに行くわ」
そこにアルベルトが帰って来た。
ここ最近はみんながカレンに振り回されている感じで、ルナやダンも落ち着かないのか二人は別に食べることが多くなった。
ディアナはアルベルトと一緒に昼食を取るとカレンを呼びに行った。
「カレンさん準備は出来た?」
「ちょっと待って下さい」
「どうした?」
アルベルトが来た。
「あなた、カレンさんを工房に案内するのよ」
「そうか。そう言えばディアナ今日は午後から取引先との打ち合わせがあっただろう?」
「ええ、でもまだ時間はあるから」
「でも、大変だろう?あれなら俺がカレンさんの案内しようか?」
「でも、女同士の方が説明しやすいと思うから」
バタンと扉が開いた。
「奥様聞こえましたよ。もう、都合が悪いなんて知らなくてすみません。私、旦那様の案内でも構いませんから」
カレンは本当に申し訳なさそうな顔で誤った。
「ほら、彼女もそう言ってるんだ。工房は俺が案内するからディアナは取引先の事頼む」
アルベルトからそう言われればもう私の出る幕はないと思った。
「そう、じゃあ頼んだわ。仕事の内容やカレンさんが出来そうな事をかくにんしておいて」
「ああ、任せとけ」
ディアナは屋敷で取引先との打ち合わせが終わると工房に出向いた。
二人は工房の事務所にいると聞いて事務所に行った。
扉に近づくとカレンの嬉しそうな笑い声が聞こえた。
「やだぁ、旦那様。こんなの貰っていいんですか」
「ああ、これは失敗作だから商品には出来ないんだ。ほら、ここに傷が入ってるだろう。バースディプレゼントって言うほどじゃないけどな」
「そんな。バースディプレゼント?私、こんなアクセサリーもらうの初めてです。すごくうれしい」
ディアナはその瞬間扉を開いた。
カレンがアルベルトに抱きついていた。
「あっ!ディ、ディアナ。これは‥違うんだ!」
「お、奥様。誤解です。私はただプレゼントを貰ってうれしくてつい」
「つい、そんな事をするんですか?あなた、こんな子供にデレデレと鼻の下を伸ばしてみっともないったら!私は工房の案内を頼んだんです。彼女の気を引けなんて言ってません!」
「だからそうじゃないって言ってるだろう!たかが傷物のアクセサリーだ。彼女はずっと辛い思いをして来たんだ。少しくらい喜ばせてもいいじゃないか」
「それが悪いなんて言ってるんじゃありません!」
「奥様すみません。私が悪いんです。つい、うれしくて。今まで私にプレゼントをしてくれたのは死んだ母だけでしたから」
「ほら、彼女もそう言ってるじゃないか。そんな変な意味はない。わかるだろうディアナ」
何だかディアナが物分かりの悪い人間みたいに言われてディアナはそれ以上何も言えなくなった。
胸の奥にモヤモヤがまた増えた。




