3彼女はわがまま
翌朝、ディアナはいつも通りに起きた。
ルナが来るのは朝食の後なのでいつも朝食の支度はディアナがする。
と言っても朝食のパンは出来ている。スープも温めるだけで言いい。チーズやハムは切るだけだしやるのは卵を焼くくらいだ。
ディアナはフライパンに火を入れるとふと思った。
そう言えばカレンさんは卵は食べれるのだろうか?昨日聞いておけばよかった。だが、昨日来たばかりの人にあれこれ聞くのもどうだろう。
まあ、オムレツであればきっと大丈夫だろう。
ディアナはそう思い直してふわとろのオムレツを三つ作りハムやチーズを一緒に皿に盛る。スープも温めパンも焼いた。
さあ、朝食の時間になった。
アルベルトは支度を終えてダイニングにやって来た。
「今朝はふわとろオムレツか。うまそうだ」
アルベルトはこのオムレツが大好きだ。
「あなたのは特別に卵二個使ってるから、今日も頑張ってね」
「ああ、ありがとうディアナ」
アルベルトが嬉しそうな顔をして席に着いてもう食べ始めた。
ディアナはパンを添えてポットも置いた。お茶は多めに作っておかわりも出来るようにした。
「カレンさん遅いわね。時間は昨日伝えたはずだけど」
「気づかれしてまだ寝てるんじゃないのか?どれ、俺が呼んで来ようか?」
「アルベルト、若い未婚女性を起こしに行くって言うの?いいから食べてて私が声をかけてみるから」
アルベルトは一度立ち上がったがそれもそうだと座り直した。
ディアナはカレンの部屋の前に来ると扉を二回ノックした。
しばらく待ったが返事はない。仕方なく声をかける。
「カレンさん起きてる?朝食が出来てるわ。一緒に食べませんか?」
バタンと音がして慌てたらしい音がした。
「お、奥様?申し訳ありません。もうそんな時間ですか?すぐに参ります。あっ、でもまだ着替えも髪も直していなくて‥」
「急がなくていいわ。私達は仕事があるから先に食べます。カレンさんは後でゆっくり食べてちょうだい」
「申し訳ありません」
「いいの。起こしてごめんなさい」
ディアナはダイニングに戻ってアルベルトと朝食を食べた。
カレンはまだ起きていなかったと言うとアルベルトも無理もないだろうと言って話は終わった。
食事が終わりお茶をカップに注いでいる所にカレンがダイニングに入って来た。
昨日着ていたワンピースとはうって変わり質素な灰色のくたびれたワンピース姿で髪も急いで束ねたらしいと分かる。
「すみません。奥様を怒らせてしまって‥片づけは私がやりますので‥あっ、お茶も煎れます」
カレンはすぐに私からポットをもぎ取るとアルベルトのカップにお茶を注ぎアルベルトの前に置いた。
ディアナの脳内でもやもやが広がる。確かにお茶を煎れてと言ったけど夫のお茶を煎れろなんて言ってないわ。
アルベルトはアルベルトででれっとした顔でカレンが置いたカップを持ち上げる。
「カレンさん。お茶はいいから食事を召し上がって、お皿はルナが片付けるから流し台に置いておけばいいわ。今夜にでもこれからあなたの仕事について話をしましょう。あなたも部屋に籠ってばかりでは嫌でしょう?うちには色々な仕事があるからきっとあなたに合った仕事があると思うわ」
「まあ、もうお仕事の話ですか?私やっとあの家から解放されてもう少しのんびりさせて頂けるのかと‥いえ、そうですわね。私も働かなくてはいけませんものね」
カレンはアルベルトの方を向く。
「ディアナ。カレンさんはまだ来たばかりだ。もう少し落ち着いてからでもいいだろう?」
「ええ、もちろん。でも、どんな仕事があるか知って置いてもらった方が選択肢が広がると思っただけよ」
「ああ、そう言う計画的なところはディアナらしい」
「せっかちだって言いたいんでしょう?でも、先の見通しはあった方がいいと思わないカレンさん?」
「でも、私、そんな事考えた事もなくて」
「ああ、だからカレンさんはゆっくり考えたらいい。まあ、俺はそのおかげで助かってるけどな。ありがとうディアナ」
「いいえ、アルベルトが一生懸命なんだもの妻として当然よ」
アルベルトがお茶を飲み終わる。カレンは唇を噛んでいる。
「ごちそうさま。先に行く」
アルベルトはカレンの方を見ずに立ち上がった。
「旦那様、行ってらっしゃいませ」カレンがすかさずそう言ったのでアルベルトがカレンの方に振り向いた。
先ほどとはうって変わって満面の笑みを浮かべたカレン。
「おお、いやぁ、朝から若い女性にそう言われるとやる気が出るなぁ~」
アルベルトは照れ臭そうにしながらダイニングから出て行った。
私はすぐに2人分の食器を流し台に下げてダイニングに戻り出入り口で立ち止まった。
カレン何してるの?
カレンは席についていた。
「さてと、朝食は何かしら?‥‥オムレツか、しかも半熟じゃないこれ。気持悪い。私白身が固まってない卵嫌いなのよね‥ハムやチーズにまでついてるじゃない。ったく。パンとスープだけ食べようっと」
私はそっとダイニングを後にしていた。
ふわふわオムレツはお気に召さなかったらしい。
まあ、そんなこと知らないんだから仕方がない。それにしても食べ物を粗末にするなんて。
ディアナな内心そんな事を思った。虐げられてきた。意地悪をされて辛い目に遭ったと聞いていた割にはわがままだと思った。
それにロートン男爵家の奥様が怒ったと聞いたけど無理がないのではとも思った。




