16どうしようもない男達
そしてアルベルトはカレンを伴って従業員が行く食堂に向かった。
食堂には大抵独身の男女が多かった。妻帯者はたいてい弁当を持って来るか近ければ家に帰って食べるからだ。
アルベルトは食堂に入るとみんなにカレンを紹介した。
「みんなも知ってると思うが、今までは家で世話をしていたカレンさんだが、作業員寮に入る事になってな。これからは食事もここで摂る事になると思う。何しろ彼女はこう言う事にあまり慣れていなくて、良かったらみんな、助けてやってくれないか」
「はい、会長。任せて下さい」
男の作業員が言った。彼はここで一番古株の宝飾職人頭リゲルの息子でアキルと言った。
「カレンさん、こっちに座れば」
アキルは若い職人や女性作業員の人気も高くリーダー的な存在だった。
「ありがとうございます」
アキルが席を指さす。
「遠慮なんかしなくていい。ここは誰でも利用できる場所だからな。安心して食事をしていいからな。おい、みんなも困っていたら助けてやってくれよ」
アキルがそう言えばみんなが分かったと頷く。それだけでカレンの受け入れはうまくいった。
「ありがとうございます。私、こんな所に来るの初めてで、でもみなさんがそう言って下さるとすごく心強いです」
カレンは艶やかな栗色のおくれ毛をそっと耳の後ろに寄せお辞儀をした。
そんな姿に男どもは目を輝かせた。
カレンはほんの少し居心地が悪そうに身じろぎした。
アルベルトはカレンの腕を取りアキルが指さした席にカレンを座らせず別のテーブルに座らせた。
「アキルありがとう。悪いがカレンさんはこういう場所になれてないんだ。だから今日は俺も同席するぞ。あっ、でも、みんな。これから彼女をよろしく頼む」
アキルはアルベルトの言葉に一瞬瞬きをしたがすぐに言った。
「ああ、会長の頼みだ。任せて下さい。俺はアキル。よろしくなカレンさん」
いつものアキルなら平民同士なら誰でも呼び捨てる。でも、アキルはカレンを呼び捨てにはしなかった。
カレンは呆気にとられたがすぐに笑顔を取り戻した。
「アキルさんですか。こちらこそよろしくお願いします。私、ほんとに不器用できっとすぐにお願いをするかもしれません」
「ああ、何でも言ってくれ。こっちに座ってもいいか?」
アキルはアルベルトの隣ではなく後ろの席に座った。
「え、ええ、いいですけど」
「おい、アキル。お前カレンさんに気があるんじゃないのか。お前が狙っても無理じゃないのか?」
別の作業員が茶化して言う。
「ばか、違うんだ。こいつら直ぐふざけてバカな事を言うから、カレンさん気にしないでくれ!」
アキルの顔がピンク色になって行く。
カレンはそんな様子を見て頬を染める。
「皆さん、あの‥私の事で揉めるのは‥でも、気さくに声をかけてもらって私すごくうれしいです。旨くやって行けるかすごく心配でしたけど皆さんがいてくれれば安心出来そうです。ふふ」
カレンはほっとした顔をしてみんなに笑顔を振りまいた。
男どもは一様に口を半開きにしてカレンを見ている。
同じ食堂にはアンとローザも来ていた。
アンとローザは午後の仕事が始まるとさっそくディアナの所に報告にやって来た。
カレンのしたたかな様子を一から十までディアナに話す。
「まったく、男ってやつはどうしようもない生き物だわ」
ディアナはアルベルトだけでなく他の作業員の様子も聞いてあきれた声を出した。
「ええ、本当にあれが芝居だってどうしてわからないんですかね?」
「カレンさんって意外とあざといんですね。あれなら心配しなくてもやっていけるんじゃないですか?」
「まあ、何かあったら教えて頂戴」
「はい、男でも連れ込んでたらすぐに知らせます。だって寮は男子禁制ですから!」
「アンったら。でも、無理はしないで何かあったら私に知らせるだけでいいから」
「「はい」」
ディアナの胸はもはや、もやもやではなく怒りだった。
まったく。どいつもこいつも男ってやつは!!




