15カレンの本性
カレンを寮に移した夜、久し振りにアルベルトと二人きりの時間が過ごせると思った。
ディアナはティアラが売れたお金で買った少し色っぽいナイティを身に着けるつもりだった。王都で見つけたものでレースと透けた素材の彼女からしたら少し恥ずかしいくらいの物だ。
夕食が終わると先に風呂に入りアルベルトのやって来るのを待つつもりだった。
でも、彼の機嫌は悪かった。
だからそんな計画もすっかりやる気がなくなった。
久しぶりにせっかく二人きりになったのにアルベルトは寝るとき背中を向けて眠ってしまった。
どうしてそんな態度を取られなくちゃいけないのよ!
翌日いつものように工房に行った。
カレンも時間になると工房に現れた。
引き続き検品の終わった金具を整理する仕事に入ってもらう。
カレンの入った女子寮には実家の遠いアンとローザと言う若い女の子がいた。二人とも19歳で工房に来て一年。カレンには色々教えてやって欲しいと前々から頼んであった。
二人とも気のいい子で自立している。カレンにも友達が出来ればとも思った。
ディアナは自分の仕事場に二人を呼んでカレンの様子を尋ねた。
「アン、ローザ、急な事でごめんなさいね。カレンさんどうかしら?困った事とかなかった?」
「奥様、私たち夕食を一緒にどうかと声を掛けたんです。でも、彼女、自分には構わないでくれと言われて、でも、キッチンの場所や洗濯場は教えてお風呂の時間とか門限時間など必要な事は紙に書いて渡しました。困ったら何でも聞いていいとも言いました」
アンが言いにくそうに話した。
「そう、ありがとう。また、様子を教えてくれる?」
「はい、困っていたら助けます」
ローザもすかさずそう言ってくれた。
「ええ、お願いね。彼女あちらでもあまり友達とかいなかったみたいだし、きっとどうすればいいのかわからないのかも。もっと人と打ち解けれたら楽しいのに」
「また、買い物とか誘ってみます。屋台やカフェ、買い物だって一人より誰かと一緒の方が楽しいはずですから」
「ありがとう」
ディアナは二人の気持ちを知ってほっとした。
昼食の時間が近づいた。
アルベルトが昼前の作業場の確認に来た。彼は毎日この時間に工房の中を見回る事にしているのだ。
いきなりカレンが立ち上がった。そして立ちくらみを起こした。
アルベルトが目の前にいるところを見計らったように。
「カレンさん、大丈夫か?おい、誰か水を」
すぐに水が持って来られる。
アルベルトは抱き抱えたカレンをそっと作業台から少し離れたソファーに座らせて水の入ったカップをカレンに握らせる。
「旦那様、すみません。私、昨日もあまり寝れなくて、それに朝御飯もどうすればいいかわらかなくて」
「食べてないのか?すまない。君に不自由をさせるつもりはなかった。腹が減っただろう?昼はみんな近くの食堂に食べに行くんだ。もちろん今後は弁当を作って来てここで食べてもいいんだ」
「わたし…あまり食事を作るのは得意ではなくて」
恥じらうように頬を染めるカレン。
アルベルトは正義の騎士にでもなったかのようにシャキと背筋を伸ばした。
「何かあればいつでも頼ってくれていい。食事は作らなくても食堂がある。朝は前日にパン屋で買ってもおくのもいい。夜は同じように食堂で食べてもいいし、持ち帰りも出来るから心配ない」
「ありがとうございます。親切に教えて頂いて」
「いいんだ。良ければ食堂に行くか?」
「いいんですか?実は私、あまり手持ちがなくて」
「なんだ。言ってくれれば良かったんだ。当座の生活費はうちで出す。いきなり追い出したのはこっちなんだから」
「旦那様、本当にありがとうございます」
カレンは目元に薄っすらと涙を浮かべた。
アルベルトの顔はゆるゆるにゆるみだらしなく口元がほころんでいた。
ディアナはそんな姿を影からこっそり見ていた。
怒りの気持ちが沸き上がる。
滑稽だ、いやぶざまかもしれない。夫があんなあざとい女にたらしこまれているなんて。
なんてバカなの!!




