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岸シェロはん…は動かない③



「お巡りさん、ひとつだけ聞いてもいいですか?」

「はい?」


 パリイだ、パリイすることを心掛けるのだ。

 質問に対して質問で返すのだ。

 世の大人は常識、良識だと口癖のようにいい、嫌う会話パターンだ。

 常識外れの幼稚臭い手ではあるがパリイして自分に優位性を持たせるのだ。

「はい?」今、おまわりが小さく舌打ちをした気がする。

 神経を逆撫でしたところへダメ押しだ。


「あ、話し合いができない方でしたら、ぼくは話すのを遠慮しますけど……」


 会話が成立しない日本語がダメな大人……みたいな見下した物言い。

 おまわりの表情がさぞ引きつったであろう。


 なんだこの子供は。

 おまわりの表情にはそのように出ているであろう。

 だが──


「それじゃあ、ひとつだけですよ?」


 おまわりは気を取り直して大人の笑顔を振る舞った。

 くそっ。

 持ち堪えたか。

 早く感情的になって逆ギレでもしやがれ。

 そうすりゃ児童虐待を楯に周囲の大人に助けを求められる。


 ひとつだけ、こちらの問いに答える。

 それで「スルー」をされないで済むのなら。

 そんな所だろう。

 そう来るなら俺はこうだ。


「お巡りさん、ありがとうございますっ!」


 デパートの店員のようにお辞儀の角度を徹底する。

 周囲に礼儀の正しさをアピールするために声も張っておく。

 おまわりがキレ出した時に備えての正当性が俺にあったかが問われるから。


「なんだ?素直にお礼なんか言って」と。

 おまわりがすこし目を細める。

 そのまま視線を頭を下げる俺に向けていることだ。

 おまわりが俺の質問に真剣に耳を傾けようとしている。

 俺は顔を上げ、


「お巡りさんは、これまでいったい何をされていたのですか?」

「なにを……ですか。先程から君に職務質問をしているところです」


 話をはぐらかそうとしても無駄だ。

「職質」と今どきの民間人にも略語で知れ渡っていて。


 もちろん任意だから答える義務はない。

 あくまでも「お願い」であり「協力」を求めるものである。


「それはまた、おかしいですね!?」


 おかしい?

 おまわりは薄笑みをたたえて、


「どこがおかしいのですか?」

「失礼ですが、お巡りさん……頭が良くないのですか?」


 質問攻撃(ぶんまわし)に対し、すかさず質問攻撃(カウンター)で打ち返す。

 パリイの基本だ。

 おまわりの質問など、LV1ゴブリンのこん棒ぶん回しと同じだ。


 はあ?

 と言いた気だが子供相手にムキにはならないと。

 


「頭が良くないとはどういう意味ですか? 君の問いに素直に答えましたよ?」

「では、お聞きしますが。お巡りさん、いま何時ですか?」


 おまわりの問いの答えはここにはない。

 残念だったな。

 俺は甘口の宝箱ではなく、辛口ビックリ箱(ミミック)のほうだ。

 悪人にご褒美をくれてやる趣味は微塵も持っていない。


 ポカンとしておるな、そりゃっ!ダメ押しだ。


「お巡りさんっ! いま何時ですか?お耳が遠いのですかぁ──っ!!?」


 うほっ!

 今度は通行人に訴えるがごとくに大声を出しての質問だ。

 キョロキョロと通行人が見て来るようになった。

 足を止め、口をこちらに向けてざわついた。

 注目を浴びているのが手に取るようにわかる。

 まったく「ざまぁ」だな。

 これは愉快、愉快。


「はいはい、時間ね」とつぶやき、おまわりは腕時計を確認したのか。


「坊や、いまは午後3時を過ぎたところです。時間を取らせて申し訳ないですが」

「やっぱり、そんなのおかしいですよ!」

「なにがそんなにおかしいのですか?」


 お、勘発入れずに聞き返して来たか。


「だって、ぼくはお巡りさんにこれまでなにをされていたのかを訪ねたんですよ?」

「ですからそれは、すでに答えましたよ」


 脇が甘いな、ニセおまわり。


「その答えが、おかしいんですよ! お巡りさん、子供にうそを教えるなんて本当にお巡りさんなのですか?」

 

 難癖をつけたのでなく、実際そう疑っている。

 おまわりのいうことを肯定させない。

 その挙句、ニセ警官呼ばわり。

 いったいなぜ、嘘をついたと言っているのかを見抜けるか。


「うそなんてついてないですよ、君といまこうして話をさせて頂いていることがすでに職務質問なのですよ。わかりますか坊や」


 真面目な顔つきで真摯に接している感をかもしだしていやがる。

 ニセのくせに、正義ヅラなどさせてなるものか。

 おまわりのくせにショタ好きか。

 しつこくまとわりつきおって。


「わかりません……」

「どうして、わからないんですか?」

「職務質問はお巡りさんがする話だから」

「ですから、それをいま君にしていますよね?」


 まさしくその通りだ。

 だが理解がない振りをして逆襲を繰り返すのが「職質パリイ」なのだ。

 一点張りのマンネリ攻撃はもう通じないぞ。

 シェロくんは強くてニューゲームに突入しているからな。


「お巡りさん、ぼくがしていない話をあたかもしたかのようにすり替えるのはやめてください!」


 ふっ。

 この華麗なる切り返しは俺だからこそ繰り出せたのだ。


 うわぁ。

 面食らってるのがモロにわかるー。

 次どう言えば、どう出る?

 可愛らしい見た目とは裏腹に、あーでもないこうでもないと理屈を並べ立てる。

 そんな可愛げのないショタにイラついてる?

 しょせん俺のショタ愛に勝るやつなどこの世にはいない!

 お前ごときの正義感でシェロくんを虜にできると思わないことだ。


 そろそろ、激しい雄叫びをあげて、俺が重ね掛けしてきた口答えバフを消し去りたくなっているのではないか。


 

「なぜ、わたしが話をすり替えている側にされているのか」若いおまわりは心の呟きが丸見えだ。

 うー。

 ゆかい痛快!


読みに来てくれてありがとうございます。


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