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岸シェロはん…は動かない②


 転生前は不安だった。

 また同様に記憶をなくすのかと。

 しかし、今回は記憶ではなく視力だったのだ。


 しかも「おまわり」ではなく「ショタ」に転生していた。

 二度目の転生をこんなに早く経験するとは思っても見なくて。

 毎回あの場所に行くと転生してしまうのかな。

 あの小さな公園の砂場。

 一体なぜ、そんな場所ができたのか。


 あいつ……「魔剣の勇者」と呼ぶことにしよう。

 あのホールも「転生ホール」と名付けよう。


 とにかく砂場の「転生ホール」へは行っては駄目だ。

 そして「魔剣の勇者」もきっと転生をしたに違いないのだ。

 そいつがどこの誰なのかを早々に見極めなければ俺達は抹殺されてしまう。

 逆にいえば、あいつに見つからなければいいのだが。


 でも転生してわかったことは年齢がもとの本人よりズレがあるということ。

 今回は随分と若返り、年下になった。

 シェロくんもすこし成長して10歳の彼だ。


 けど本当のシェロくんも誰かに転生したはずだ。

 俺ではないよな。

 俺の、光の帯に入ったのはシェロくんと「魔剣の勇者」もだし。

 もしも「魔剣の勇者」が俺の容姿で「おまわり」になっていたら最悪だ。


 仮に二人とも「おまわり」になっていたら、怖い。

 だけど記憶は失くすんだよな。

 失くした記憶はあの光の帯の砂場のことだ。

 再びあの場所へ行かない限り、思い出すことはない。

 だから俺は、すくなくとも「おまわり」には用心をする必要がある。





 ◇




「そうだったのか。ぼく、そんなにぼーっとしてるように見えましたか?」



 おまわりはクククと笑い声を立てながら「かなりね……」とつぶやいた。



「坊や、ひとりで買い物にでも来たのかな? 親御さんはいないの?」



 おまわりが俺に疑問をぶつけた。


 ここは繁華街。

 児童がひとりでうろついて良い場所ではない。


 だが不明なまま放置するわけにはいかないのが警官である。

 職務上の質問であり、その答えによっては保護が必要な場合もあるわけだ。

 だが俺は問いには答えず逆に質問をする。



「ねぇ、お巡りさん。視力は大丈夫ですか? これ何本に見えますか?」



 俺は、おまわりの目に見えるように自分の右手の指を二本立ててみせる。



「二本ですね。目は悪くはありません、ご心配なく」

「それはおかしいな」

「何がです?」



 おまわりは軽く首を傾げたことだろう。



「だって、さっきからずっとぼくに声をかけてくれてたんですよね?」

「はい、そうですよ」

「そのときから、ぼくは誰かと歩いていましたか?」

「いやいや坊や。ひとりだったから心配で声をかけたんですよ」

「お巡りさんの言う通り、ぼくはずっとひとりでした。でもご心配なく。これからもずっとひとりですから、それじゃこれで失礼しまーす!」


 俺は知っているぞ。

 この「おまわり」がシェロくんの前方から声掛けしていたのを。

 シェロくんが気づかずにいたのは、もしかしてこの理由だったのか?

 いや待て。

 そうすると俺が茶屋の前から見ていたとき、すでに俺が入っていたのか。


 は? そんなことあるだろうか。


 俺としては「おまわり」から早く遠ざかりたい。

 だから適当にさよならをいって背を向けて立ち去ろうとした。

 だが「おまわり」だって「はい、そうですか」とあっさりと諦めない。

 俺を引き止めるために声を張る。



「待って坊や! お巡りさんが尋ねたことに答えてくれないと、お巡りさんは君を保護しなければいけなくなるので質問に答えてくれませんか?」


「おまわり」は急ぎ足で俺の前方に回り、そう伝えてきた。

 足音と息づかいで聞き分けている。

 あのときの会話もこうだったのかもしれん。


「お巡りさん? 通行の邪魔になっていますけど……市民の生活の支障になるような真似はやめてくださいませんか。迷惑です!」


 パリイだ! パリイするのだ!

 もっと突っぱねるのだ。

「あらぁ、そう来るのか」という表情をみせ「おまわり」は頭をかくだろう。

 

 そしてきっとこう思ったのに違いない。

 これがいま流行りの「職務質問スルーできたら勇者!ごっこ」ってやつだと。

 こんな幼い子供にまで普及しているとは、と。


 だが無垢なるショタがそんな真似するはずないと思っていたわ。



「坊や。通行の邪魔はしていませんよ。これは公務にあたる行為ですからね」


 ガチで公務だったらの話だよ。

 先入観ではあるが、俺はこの男が胡散臭く思えて仕方がない。

 

 迷子を確保したなら本署に連絡を入れるはずなのに。

 その後の行方も絶っているわけだし。

 ついて行っては駄目だ。

 なんらかの口車によって連れて行かれたのに違いない。


 

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