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転生したら「交番のおまわり」だった件⑩


 道案内をしてくれた少年の足がやけに速くて。

「あとはこの道をまっすぐ」彼はようやく歩みを止める。


「ここから公園までは一本道になります」

「そうか、感謝します。あとお水の代金を渡したいので……」

「お巡りさん、急ぐでしょ? 帰りでいいですから」

「それはだめ。きっちりさせとかなきゃいけません」

「それならこのまま公園に行きましょう」


 どうしてかを訊くと、公園にもともと用があったと。

 念のため「坊やの家はどの辺」と訊くと、あの自販機の前の家。

 それに「断って出てきているので公園には迎えが来る」とも答えた。

 名前だけでもというと、急ぐからとまた駆け出すのだ。

 俺も時間が押して来ている。

 少年の後を追い、公園の中道を北に早く抜けたい。


「お巡りさん、あれを見て!」


 そういって少年が指を差す方向には砂場があるのだが。

 公園内には夕飯時のためかほとんど人がいない。

 それと園内に踏み入った頃、雲行きが怪しくなってきた。

 一雨降って来そうな気配で周囲が薄暗くなった。


「なにを見ればいいの?」

「え、あれが見えないのですか?」


 砂場の中央付近を指差すのだが、何のことやらさっぱりだ。

 すると背後から、


「おい、子供が出歩いていて良い時間帯ではないぞ!」


 俺たちの背後から若い男の声が聞こえた。

 振り返ると昔の憲兵姿をした男性が一人いた。

 なんだ? 

 軍警察のコスプレ野郎か。


「あ、討伐隊だ!」

「えっ?」いま何と言ったんだ坊や!?


「おい、そっちのお前はおかしな格好をして怪しい奴め!」

「俺のことか?」


 ギラリと男の目が俺を睨む。


「そこを動くな、身体検査をする!」

 

 なんだって!? 


 おかしな格好をしている奴に身体チェックなど受ける筋合いなどない。

 俺は当然のように拒否する。

 だがそいつは「抵抗するなら連行する」と言い出した。

 馬鹿な! 

 コスプレだけで飽き足りず憲兵の真似をしようというのか。


「あんた、何のつもりだ!俺は警官だぞ、見て分からんのか?」

「警察を名乗る痴れ者め!」そういうと腰に携帯していた剣を抜き出した。


 あれはサーベル式軍刀だ!

 西洋風の両刃の剣と見受けるが本物だとかなりヤバイ奴だ。


「おい、君!それは銃刀法違反だぞ!? 引っ込めなさい!」

「おい貴様こそ、手にしているのは何だ?」


 何だと言われて手元を見るが少年にもらった水のボトルしかないぞ。

 これがどうした?と相手に見せる。

 俺の背に隠れていた少年がひょいと顔を出していう。


「お巡りさんが喉を渇かしたので自販機の隠しコマンドで差し上げたんです!」


 コスプレ野郎は子供を見るとなぜか激しく叱責しだした。


「住民のための貴重な死に水をよそ者に差し出しただと!?」

「ひぃ。ごめんなさい……」

「こんな水が何だというのです?」


 男は俺の問いなどに目もくれず、


「未成年のくせに酒を買ったな!子供といえど二つの重罪を犯したからには連行するぞ、神妙にしろっ!」



 そいつはかなりのイカレ野郎のようで、あの子を叩こうとするのだ。

 俺は思わず警戒態勢に入り、腰元の銃を抜き、構えてしまっていた。



「その子から離れなさいっ! 暴行および銃刀法違反の容疑で現行犯逮捕しますよ!」



 子供は酒を買った容疑をかけられる。

 加えて「死に水」をよそ者に与えた罪。

 いったい何を言っているんだ。

 警官の俺の保護下でとった行動は罪にはならない。


 だが少年は容赦なく重罪犯だとして不当な暴力を受けた。

 これは正当防衛だ。

 俺には護身術の心得がない。

 ゆえに銃を抜くしかなかった。


 まさか、拳銃を使う場面が訪れようとは思いもしなかった。

 だが俺はさらに驚愕の縁に立つ。


「だめだよ!お巡りさん。勇者の討伐隊に逆らっちゃ!」

「はあ? 坊やさっきから何いってるの?」


 そいつは勇者の討伐隊だと子供から説明を受ける。


 勇者が現実にいる世界。

 なぜ?

 うっ。なぜか頭痛が伴った。


 そいつを、少年を守るためとはいえ拳銃で迎え撃つ。

 コスプレ野郎は少年から距離を置く。


 俺と少年は砂場を背にして奴と向き合う。

 奴が手にした剣で斬りかかってきたので引き金を引いてしまっていた。



 バキ────ンッ!!!



 銃弾が奴の剣で弾かれるも、相手を撃ってしまった。

 銃声が園内に響き渡った。


 勇者……勇者の討伐隊……なぜか、その光景をどこかで。

 以前にも見たような憶えがあるのは「既視感(デジャヴ)」なのか。

 少年は続けて声を張り上げる。


「だめだよ!お巡りさん、銃では勝ち目がないよ。弾はあといくつ?」


 リボルバーなので六発式。

 安全装置が掛かっていた時点で五発しか弾倉になかった。

 いま一発撃ったから、


「四発だ。この至近距離で弾丸を剣で弾くなんて何者だよ?」

「勇者だよ、銃なんて効かないの知ってるでしょ?」

「坊やは勇者の存在を知っているのか……」


 俺こそ、何を口走っているのやら。


「なにいってるの? みんなの憧れの職業じゃない!」


 少年を庇いながら、その勇者の一人と対峙しているのか。


 どうなっている。

 ここは俺が知るもとの世界……なのか。

 うっ。……またかすかな頭痛が。



「このままでは二人とも勇者に討たれてしまうよ、あの中に飛びこんで見ようよ」

「あの中って……砂場に何かあるのか?」



 というより、少年は勇者の行動を非難しないのか。

 事情も訊かずに一方的で不当な振る舞いだぞ。

 彼は少なくとも腐った世の中を知っている側の少年のようだ。

 おかげで思い出せたことがある。


「このままでは現行犯処刑に遭ってしまう、というのだな坊や」

「うん。ボクにつかまって。この先に光の渦があるの!」



 少年は頷くと俺の手を取って、決して離さないでといった。

 その砂場の中に光の渦が出来ているらしい。

 少年の言葉を信じるのであれば。

 だが任務はどうするのだ。


 折角、裏路地を抜け……公園……裏路地? 自販機……酒?


 なぜ忘れていたんだ!この公園はもしや……。

 俺が討伐隊に詰められて斬殺されたあの場所か!



「お前たち、もしかしてホールの存在を知覚しているのか?」

「奴はいま何と言ったんだ……?」

「急いで、あいつが気づいた!」

「そうはさせるか!そこを渡る者……光の使者だな」


 何だか訳が分からないうちに勇者の奴が、横一線の薙ぎ払いを繰り出した。


「お前らを決して生かしておくものかっ!」


 俺と少年は太刀筋を見切れず、剣の攻撃をまともに喰らった。

 少年のいう光の渦、俺が知る光の帯。

 それは命の危機に瀕したときだった。


 再び俺の目にも見えた!

 と同時にあの日の記憶が全てよみがえった。


 つまり、その先に行くとまた一時的に記憶を失くしてしまう。

 そうだ! 坊やに名を聞こう。



「俺は岸だ、岸 勇者(ユウザ)。坊やは?」

「ボクはシェロ。シェロ勇者(ユウザ)です!」



 そうか君が行方不明の少年シェロくんだったのか。

 身体が聞いていた年齢よりも若干小さいのでそうとは気づけず。

 俺は勇者(ゆうしゃ)を名乗った。

 すると彼もその名乗りをした。


 勇者をユウザと発音するのは、資格なき者が名乗ることを許されていない為だ。

 その名乗りはいつかまた必ず互いに惹かれ合うときが来る。

 理想の勇者に憧れを抱いたもの同士。



「ハッ! いけないっ!?」



 勇者の奴が丸腰のシェロくんから処刑しようと剣に魔力を込めた。

 魔剣はシェロくんを傷付け、光の渦を消し去ろうと暗黒の瘴気を(みなぎ)らせる。

 俺は咄嗟にシェロくんの腕を引き寄せ、自分との位置を入れ替えた。

 身代わりになり、剣の斬撃を再びこの身に浴びた。


 そのまま彼を俺の光の帯に放り込んだ。

 あの光は、俺の経験上……『転生ホール』なのだと、たったいま知覚できた。


 俺の『転生ホール』は一時記憶を失くす。

 俺はシェロくんが見た光の渦に力尽きるように落下していく。

 同時に魔剣の勇者の奴もシェロくんにくっついて行った。



「くそっ!」



 俺なんかがどう足掻こうが勇者には勝てない。

 奴は俺の身に斬撃を飛ばして置きながら、なおもシェロくんを斬りつけにいく敏捷性を具えていやがった。


 シェロくんの『転生ホール』はいったい何を失くすのだろうか。

 魔剣の勇者も俺の『転生ホール』に滑り込んで行ったのを見届けた。


 つまり、奴も記憶は失くすはずなのだ。

 奴の素性は俺が必ず突き止めて、どういう立場であろうと息の根を止めてやる。

 可愛いショタのシェロくんは俺が守ってやらねば。


 ショタ愛こそが俺の正義なのだ!

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