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転生したら「交番のおまわり」だった件⑧


 勇気を出して受話器を手に取った。

 あ、この声は。



「やっと繋がったか。岸かっ! さきほど届け出があった迷子の件なんだが──」

「えっ?」

「おい、まだ寝ぼけているんじゃないだろな!」

「いえそんな。迷子って、どんな感じの子ですか?」



 声の主はあのラビさんだった。

 その人が言うには──。


 行方知れずになった男の子の家から捜索願いが出たようだ。

 服装、背格好、年齢があの子供にそっくりだったのだ。


 少年はひとりで繁華街に向かったらしい。

 目撃証言はいくつか上がっている。

 朝食後、友達の所へ遊びに行き、昼食時にも帰らず、夕暮れにも戻らないためだという。


 道玄坂の繁華街での目撃情報ということだから。



「少年の名は『黒耳シェロ』、母子家庭で一人っ子。──繁華街はお前の担当だっただろ? 何か見たりしてないのか」



 俺が出会った少年は『秘伝カムイ』くんだった……。

 

 姓が全く違うぞ。

 これは他人の空似というやつだ。

 流行りのキッズファッションなら偶然ということはいくらもある。



「なにしろ繁華街だから……人出が多くて目がチカチカするぐらい……」

「お前そりゃ、ゲームのやりすぎだよ! 警官が夜更かししてどうする」

「ゲームじゃないですよ。勝手に決めつけないで下さい! 体調不良だったんです。頑張って出勤してきたのにパワハラ並みに咎められるのは不愉快です!」

「お、おい岸っ! パワハラって。そうか分かった。けど出て来た以上は公務だから甘えは禁物だぞ」



 まあ、そういうことになるんだろうな。

 ラビが決めつけたような腹の立つ言い方をするからだ。

 つい、ムキになってしまった。

 言い過ぎたかも。


 だけど、カムイくんは別人なので巻き込んでは可愛そうだから伏せる。

 あんなに可愛いショタを巻き込むわけにはいかない。

 ショタ愛は正義!

 だから最初に見かけた少年の話を打ち明けた。



「──たぶん、その子がシェロ君だと思うけど。警官が同行していたから」

「その警官は誰だったんだ?」

「あの、それが……その……」

「なんだ? 奥歯に物が挟まるような言い方をして。はっきり言ってくれ」



 そもそも俺が知る訳がない。

 だが困る必要があるだろうか。

 上司かもしれないし、同僚かもしれないけど。

 それにどこかで保護しているだけかもしれない。

 こんな時間まで自宅に返していないのが不自然な話ではあるが。



「ラビ…………正直に話してもいいか?」

「当たり前だろ、どこの警官だよ? 上官であっても報告はしなきゃ」



 だよね。

 とはいっても顔も名前も俺にはわからない。

 だから正直に言おうと思う。



「じつは良く知らない、見た記憶がないんだよ……」

「お前。つまりそれは……うちの管轄(かんかつ)の者じゃないってことか?」

「そうなるよね。隣接している管轄かな?」



 知らないものは知らない。

 知らないから仕方ないんだよ。

 警察官はこの人達だし、プロが調べあげればわかるんじゃないか。



「繁華街と隣接してる管轄はひとつだろ。東越えの「こちら路地裏公園前」エリアになる」

「なにその分かりづらい管轄名は?」

「昔から、公園の裏道が入り組んだ路地になってるのが有名で」

「それなら、そっちに引っ張って行った可能性があるんじゃない?」

「岸!? 可能性ってどんな可能性だ? まさか警官が子供を連れ回しているとでもいうのか、おい」



 ラビは馬鹿なのかな。

「おい」はこっちのセリフだよ。

 警察は正義じゃないのかよ。

 そっちの線を疑ったらニセ警官も視野に入れなきゃならんぞ。

 なんでこんな奴と俺がライバルなんだよ。



「ラビ、あのさ。届け出を出した家庭はたしか、母子家庭だったよね?」

「あ……なるほど」

「そう、別れた父親がそっちのエリアに住んでる可能性なくない?」



 子供が自らの意思で向かったのなら。

 その子にとって特別な用向きがあるとしか考えられないでしょ。

 そして夕暮れ時にも帰らない。

 警官が談笑しながら同行して、仲良く消えて行ったのだから。


 俺はラビに促した。

 家庭の方に確認を入れて住所を調べて、折り返しここに一報してくれと。

 そうだと判れば、俺が直接訪問に行って来る。


 その警官と、シェロくんを目撃したのは俺だけだからな。


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