転生したら「交番のおまわり」だった件④
早速、繁華街にパトロールに向かった。
土曜の昼前のことだ。
随分と遅刻をしていたというのに大してお叱りもなかった。
優しい先輩だったのか、それともこの職質勇者の件で警官達が一致団結して連帯感を増していたのだろうか。
繁華街エリアに到着すると、一本の商店街がどこまでも続いている。
商店街のアーケードを潜り抜けて奥へ奥へと足を踏み入れる。
商店街が一旦途切れたような場所に出た。
十字路に出たのだ。
そのまま前方にも新たな商店街が伸びていた。
左右にもそれぞれ別の商店街が広がっていた。
「なんて広いんだ……。こっちが迷子になりそうだ」
こんなに広大なのにまさか俺一人の担当ってことはないよな。
俺が遅れて来ただけで先発の警官がどこかに居るはずだ。
繁華街だけに人出も多い。
人々が色とりどりのファッションで横行しているため目がチカチカする。
早く同業に追い付いて合流したいところなのに。
そう思っていたら、また眼球運動が始まった。
十字路で立ち止まっていた。
自分の首と視線は目まぐるしく、あちらこちらを物色するように見回していた。
「おや? あんなところに……」
視線の先にひとりの制服警官の姿が飛びこんだ。
俺の進行方向の先にさらに繋がっている商店街の中央をゆっくりこちらに向かって歩いている。
内心でホッとする自分が居た。
若手だが俺より微妙に逞しくて背も高い気がした。
その警官にとりあえず挨拶を入れて見よう。
知り合いかもしれない。
そうだったら共にパトロールしようということになってくれると嬉しい。
こういうのって大抵はコンビのはずだからな。
「先輩でもいいけど、同僚だったらいいな……」
しばらく、見つけた警官の視線を追った。
口が動いているところを見ると早速、職質をかける相手を見つけたのだな。
どんな人物なのかと視線の先に目をやると、なんと小学生の男児だった。
男児は十歳ぐらいで道の端っこの方を一人歩きをしていた。
迷子の様には見えなかった。
だが大人でも迷いそうな繁華街を一人で出歩いているのは頂けない話だ。
向こうの警官の彼もそう判断したのだろうな。
随分と声をかけ続けているようだが、少年がそれに気づく気配はない。
道行く人口が多すぎて気づけないのだろうな。
警官がしびれを切らしたのか少年の方に駆け寄っていく。
「え? あの子じゃなかったのか……」
警官が少年に駆け寄ったと思ったのだが、少年の横をすうっと通り越した。
それじゃ誰を見ていたのだ。
というより何処へ行くんだ。道の端っこには誰も歩いていないが。
「あ、Uターンをした……」
やっぱり警官が見つめているのはさっきの少年だ。
背後から距離を詰めていくみたいだ。
一人歩きに用心して走り去るのを回避するためかな。
警察を見ると逃げる人って結構いるからな。
少年の後ろから、また声を掛けているみたいだ。
その声掛けに少年が驚いたのか、キョロキョロとしだした。
「きみの後ろだよ……」
そう教えてあげたいけど、俺はまだ大分離れた場所にいるからな。
それに俺がいま駆けつけるわけには行かないから、遠目で少し見守ろうかと。
少年の前に警官が二人も現れたらもっとビックリするかもしれない。
ここは彼に任せておこう。
間もなく少年は背後の存在に気づいて振り返った。
しかし不思議だ。
警官の声に反応して振り返ったはずなのに、少年の視線はあの警官を見上げてはいない。
少年は自分の目線の高さを変えることなく警官と話しをしているようだ。
自分には警官から職質を受ける筋合いがない、そう思いたいのかも。
警官と視線を合わさずに喋る人は痛くもない腹を探られるのを嫌がる為だと聞いた事がある。
少年でもそういった心理が働くものなのだな。
気持ちはわかるけど怖がらなくていいんだよ、職質は単なる確認だから。




