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転生したら「交番のおまわり」だった件③


 なんだか良く分からないけど言われる通りの挨拶をした。

 交番にいた先輩が俺に言った。

 

 ラビさんは別のパトロールエリアに行っているが俺の担当エリアは東方面の繁華街近辺だと。

「遅れを取ったがお前なら巻き返せる」と軽く肩を叩かれた。


 遅れとは何かと尋ねると、ラビさんと俺は同期生のライバルでいつも活躍を張り合って来たらしい。

 この方は三十代半ばの中年のようだ。二人のさらに先輩の様だ。

 出入り口の壁に周辺の地図が貼ってあったので目を通すと東の繁華街の場所は頭に入れることができた。


「岸! 出かける前に手洗いに行っておけ。冷蔵庫に冷水ボトルが入っているから忘れずに持ち出せよ」


 外から蝉の鳴き声が聞こえているので真夏だとわかる。

 壁に掛けられているカレンダーから八月に入っていることも。

 ここは冷房が効いているので快適だが外はさぞかし猛暑なんだろうな。


 俺は奥の手洗いを借りに行く。

 用を足して出て来ると鏡が目に入った。

 そこに映り込む俺の顔はすこし大人びていた。

 

 警察官って最低は高卒の学力が要るはずだから、そこから警察学校を出て配属されたとするなら歳は二十二歳ぐらいで、さらに二年が過ぎてるって話だったから二十四歳ぐらいか。


 バッチリと制服の似合う警官になっている。

 凛々しいな俺。

 勇者にはなれなかったけど警官になったんだな。

 ここから手柄のひとつでも立てられれば勇者隊志願もかなうのかな。


「おい岸! もたもたするな! 地域の治安は俺たちの行動に掛かっているのだ! 宜しく頼むぞっ!」

「は、はいっ!」


 正義の味方だ。

 俺が……ついにこの俺が。


 腰にぶら下げているのは拳銃ホルダーか。

 中身は、やばいな本物じゃねえか。

 使う事なんかないよな。

 肩には無線がある。

 どう使うんだ? 学校出て無いからわかんねぇや。


 俺はすかさず先輩に無線の不具合があれば威信に関わると促した。

 先輩が自分の方から無線のマイクを外して声を入れると俺の方のがピーピーと鳴り出した。

 同様にそれを手に取るとゲーム感覚で使い方を理解した。


 ゲームといえば。

 目覚めてからここに至るまでの記憶が曖昧ではあるが、ゲームなどしていた覚えはない。いつの間にか二十代になった自分がいた。


 身体には何の痛みもなければ支障がある訳でもない。

 手洗いの個室に行った折に全部脱いで確認したんだ。斬傷の痕すらなかった。

 二浪の十七だった俺がどうして警官になっているのか知らないが、追っ手がいなくて高卒扱いに成っているのなら幸いだ。この人生を楽しもうではないか。


 生きづらくて居場所がなくて家に帰りたくなかったあの日常が嘘のように消えたのなら、深く考えず振り返ることなく過ごしたい。


 俺はふと先輩に尋ねた。


「あの、巷で横行している厄介事などはありますか?」

「ゲームの勇者が悪い意味で使われている例のやつだな。あれにはみんな迷惑している。特に若い警官が絡まれるから岸も舐められぬようにしなきゃな」


 何をおっしゃっているのかさっぱり分からない。

 だが情報を引き出す方法は心得ている。勇者になるために猛勉強してたからな。

 俺は「そーなんすよ、対処にあんまり自信がなくて」とパトロールに前向きになれない旨を伝えると、先輩が会話のポイントを踏まえたパンフレットを差し出してくれた。


 手渡されたパンフに目を通して見ると【職質スルーできたら勇者!】とあった。

 

 何という馬鹿げた行為が横行しとるんだ。

 勇者は決してそのような存在であってはならない。

 俺がそんな歪んだ世の中を正してやる。

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