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転生したら「交番のおまわり」だった件②


 確か……、ぶった斬られて。

 多分、殺された筈なのだ。

 塾の帰り道、普段は電車に駆け込んでいる時間帯だ。

 あんな裏路地自体も通らないし、ましてたどり着いた例の公園なんて足を踏み入れたのは初めてだった。


 剣を身体にぶつけられた衝撃で後方に弾き飛ばされた。

 その場所は地面から奇妙な発光物があった地点だ。

 切羽詰まった俺はそこへ赴いていたのだから間違いはない。

 その現象が何かは分からないし、こうして気づいたら朝になっていて自分の部屋にいた。


 身体を起こそうと試みるが思うように動けないでいる。

 本当に朝の陽の明るさか、それともあの不思議な光の帯の中か。

 部屋の窓のカーテンを開けて見ればはっきりすると思ったのだが。


 枕の上に頭部を戻し、力を抜いてふうっと息を吐く。

 俺は夢でも見ていたんだろうか。

 ただの夢を。

 ベッドから見るいつもの天井を眺めていると耳元で電話の呼び出し音が鳴る。

 俺のスマホの着信音だが高音質が聴き取れず音が(こも)っている。

 これはベッドの上のどこかにあるみたいだ。

 辛うじて腕が動くようになったので布団の中をまさぐって見る。

 スマホを手に取ってみて受話を選択してみると。

 

「岸っ! 急病かっ!? 出勤時間に顔を出さないなんて珍しいじゃないか」


 電話に出て見ると全く聞き覚えのない男性の声がした。

 誰だろう、同級生ではなさそうだ。

 もう少し年上のようだが。

 学校の先生からか?

 いや俺、通学していないし。

 俺は高校受験に二度失敗して今は塾の生徒だし。

 本来、高2の十七歳。

 出勤とか、全く身に覚えがないこと言われても意味がわからなかった。

 とりあえず、間違い電話かどうか尋ね返した。


「もしもし、岸ですけど……あなたはどちら様でしょうか?」

「なに寝ぼけてんだよ! 俺の声を忘れたのか? 二年前に同じ交番に配属された羅毘だよ。なんだよ寝坊したのか? わりと元気そうじゃねーか。正義を愛する警察官に遅刻とズル休みは認められていないぞ。早く出て来い!」


 ラビさん……?

 一体どなたですか。


 待ってよ、交番って何?

 二年前って……どういうことだ。

 もう一度尋ね返すしかない。


「ラビさん……の言っていることが自分には意味不明なんですけど……」

「お前、まだ寝ぼけてんのか! 道玄坂の繁華街のパトロールはとっくに始まってるぞ。どうせ夜遅くまでゲームしすぎて寝坊したんだろ。急病じゃないならさっさと制服に着替えて派出所に向かえ!」


 はあ?


 なんで俺が交番勤務のお巡りさんに成ってんだよ。


「悪い冗談はやめてくださいませんか? ………………」


 その言葉を出したら途端に頭の中が真っ白になった。

 電話の相手の返答も途絶えた。

 そればかりか手元にあった筈のスマホさえも消えてしまった。

 なんだか夢を見ている様な感覚だ。


 色んな景色や想い出が頭の中に蘇ってくる。

 自分の人生のダイジェストを早送りで見せられていく。

 ちょうどそんな感じだった。


「あ、なんだ?……また目の前が真っ白に変わっていく。ぼんやりと奥のほうに景色が浮かんで見えた。な、なんだか街の景色が浮かんでは消える……」


 無意識に眼球運動をさせられている。

 ついつい周囲をキョロキョロと見回してしまう。

 俺の身に一体何が起きているんだ。


 目覚めてからずっと気に掛かっていたことがある。

 身体に痛みが走らないのだ。


 あの夜の恐怖の体験だけがまぶたの裏にまだ焼き付いている。

 現実の体験のはずだ。


 俺はご法度の飲酒の現場を見られて追われの身となっていた。

 逃げて逃げて逃げ倒した挙句、討伐隊の剣で現行犯処刑に遭った。

 完全に即死ダメージを喰らったはずだ。

 それなら死んでいるはずなのだが。


 不思議な光の帯の中へ押されたことにより、死の運命より逃れたのかもしれない。




「おい、岸巡査! お前、来ていたのなら先輩に挨拶ぐらいしろよな」

「えっ。せ、先輩って言われましても……」


 俺はなぜか自宅の部屋の中から瞬時に交番の中にいた。

 ドラマのシーンが切り替わるようにパッと移動してきたようだ。


 俺に挨拶を迫った交番在中の先輩は、電話をかけて来たラビさんとは別の声の主だった。

 まだよく状況を飲み込めてないが、俺は今、ラビさんの言う様に交番に勤務している巡査の一人の様なのだ。


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