第6話
ボアさんに開かない方がいいですよ、と言われていたのに扉を開けてしまった。
起き抜けにこんなところにも扉があったんだと、ノブを回してちゃった。
「ん、お城の中!?」
開けた扉の向こうは、見覚えある王城の中だった。
作りが若干大きい?
廊下によく飾ってあった肖像画がない、私の家と同じてシャンデリアもないシンプルな作り。
わたしは呆然と開けた扉の前に立ち尽くしていた。
「あーっ、あの扉が開いてる!!」
誰かが驚く声を上げて、こっちに走ってくる姿が見えた。段々と近付くにつれて見てた。
「二足歩行のネズミさん!?」
シャツにズボンのゆるい姿だけど、腰には立派な剣を指していた。
「おい、その扉を開けたと言うことは、お前は魔法使いだな」
全身灰色のふわふわな毛に覆われた、どっからどう見てもネズミさんだ。
「お前は俺の話を聞いているのか!!」
彼がカチャッと剣を抜いた
「なんとか言え、魔法使い!!」
魔法使いと呼び剣を構え、私を睨みつけてくるネズミさん。
「一応です一応。魔法使いのジーアです」
「ジーアだと。俺は第1騎士団所属。ムース・トポリーノだ」
ネズミさんの名前、ムース・トポリーノ…このネズミさん姓が付いてる位が高いの?
ネズミさんは興奮しているのか、カタカタと音を出しながら剣を構えてる。
「あの、ちょっとお待ちください。トポリーノ様、私は何もいたしません」
「何もしないだと?だったら何故、この扉が開き出てきた魔法使いを捕まえよと、上の者から仰せ付かうんだ!俺は知っている、連れて行ったこの国の第1王子を返せ!!」
「だっ、第1王子!?」
え、ネズミさんの所にもいるの?
第1王子と言えば最近婚約破棄はされたけど…
「ネズミさんの所の第1王子は知りませんし、第1王子なんていりません」
「とぼけたことを言うな!」
「ごめんなさい本当に知りません。ご機嫌様」
「おい!!」
謝って素早く扉を閉めた。
ドンドンドン、ドンドンドン
ネズミさんが扉を叩いてるのだろう、叩く音が廊下に響く。
「この扉を開けやがれ。魔法使い!!」
ドンドンドン、ドンドンドン「開けろ」と、ガチャガチャとドアノブは動くけど。
どうやらネズミさん側からはこの扉を開けれないみたいでホッとしたけど、なんて獰猛なネズミさんだ。
「…怖かった」
二足歩行で歩く大きな灰色のネズミさんて初めて見た。
ドンドンと、扉を叩くことを諦める気はなさそうだ。
「ジーアどしたの」「何かあったのジーア?」「なに?」
扉の音を聞きみんなやって来た。
「キキ、スイ、メラ、私…どうしましょう。ボアさんに開けない方が良いと言われた、扉を開けてしまったみたいなの」
ドンドンドン、ドンドンドン扉を叩く音に「出てこい」と、扉の向こうの人の声にキキ、スイ、メラも驚いていた。
「うお、かなり怒ってる」「ジーア怖い」「やっべ」
「大丈夫よ。向こうからは開けれないみたいだから、ここから離れましょう」
頷いたみんなと扉から離れキッチンまで来たけど、まだドンドンと叩く音がキッチンまで聞こえる。
いまにも扉が壊れて出てきそうな勢いだ。
「ねえ、みんなは第1王子って知ってる?扉を開けた時に会ったネズミさんにいわれたの」
「ネズミさん?」「まさか扉の先って」「あわわわ」
私の話を聞いてキキ、スイ、メラが、徐々に青い顔になっていった。
その様子からして私は開けてはいけない扉を開けてしまったみたい。
扉を叩く音は止まず、青い顔のみんなと落ち込む私達の間にしばらく沈黙が続いた。
「あっ」と、キキが何か思いついたのか顔をあげた。
「そうだ、ジーア呼んで」
「だ、誰を?」
「ボア先生」「せんせー」
キキに続き、スイ、メラも声をあげた。
「そうだね、ボアさんを呼ぼう。私は部屋に行って呼び鈴を取ってくる」
「うん」
部屋に戻ろうと音を立てずに、扉の前を通ろうとした「本当なんだな、この扉が開いたのだな」さっきのネズミさんとは違う声がした。
扉の前で話をしているみたい…
何を話しているか気になり、黙って聞き耳を立てていた……いきなりドーンといままでにない扉を叩く音に「ひゃぁっ」声を出してしまった。
「この扉の前に誰かいるな、開けやがれ!!」
ドーン、ドーン、ドーン!!!
さっきよりも力強い叩き方で扉は壊れないけど、家が揺れた!?
「あわわわ」
揺れる家にびっくりをして尻餅をついた、このままじゃ扉が壊れると思っても、足が震えて立てない!
立てないまま動いて部屋からベルを取りみんなの所に戻った。
「みんな、大丈夫?」
声をかけながらキッチンには入ると、テーブルの下で固まっている3人を見て、膝をついたままテーブルに行く。
「キキ、スイ、メラ?」
「ジーア家が揺れる」「…うっ…うっ」「こわぁ」
「大丈夫だよ、いまボア先生を呼ぶね」
持ってきた呼び鈴を振った…リッ…リリン、リリーーン綺麗な音が鳴り響いた。
リリーーンと、キッチンで震える私達の前に緑色の魔方陣が姿を現した。
「ふわぁいい、ボアです」
昨日よりもスケスケな薄緑色のパジャマを着て、緑の三角帽子をかぶり手に大きな枕を抱えた、ボアさんが目をこすりながら魔方陣から現れた。
「ボアさん?」
「ボア先生…」「ボア先生…寝起きですね」「おはよー」
「はい、皆さん。おはようございます」
枕を抱えたままのボアさん。
うふふっとほんわかした雰囲気に、出そうになっていた涙が引っ込んだ。




