第89話 援軍の群青
「っちょ!」
牌は向かって来た拳を捌き。
「これは!」
振り下ろされる足を避け。
「どういうつもりなんですかっ!」
かすり傷を負わずに避け切った。
牌は竜之助と翡翠を両方に視線を向けて、大きくため息を吐いた。
運動神経に良さに、竜之助も関心したかのように腕を組んだのだが。
翡翠は、納得をしないし目を鋭くさせたままだった。
まさに、野獣のような目つきだ。
「で?! どういう要件なんですか?? おじさんは今、それどころじゃないんですから! 簡潔に用件を澄まして、帰って頂けますか??」
「はァ゛ああ゛?! 手前ぇエェえエッッッッッ‼」
激しく激昂をすると翡翠は牌を押し退けて、室内へと入って行った。
「あ! ちょっと‼」
「君。名前と、履歴書をくれないかい?」
「?? 何なんですか?? 偉そうに!」
淡々と話しを進める竜之助に、苛々と牌も声を荒げた。
目と目と。顔と顔が向かい合う。
「群青竜之助。愚息2号の、君の言うところの、おじさんの父親な」
「!? ぇ……えぇっと??? じゃあ、中に入っていったガラの悪い人相の男は???? っま、さ、か――……そん、な?????」
◆
――『っはっはっは! いい歳した男がなんて様だってんだよぉwwwwっほ、掘らっwwww』
「掘られなんかねぇしぃ! ギリギリの先端で蹴飛ばして逃げて来ただけだしっ!」
はだけた衣服、そのままに浴室に鍵を閉めて籠城中の竜二。
身体は浴槽の中にある、お湯だった水の中に沈んでいる。
ぶくぶくぶく――……
「じーさん。俺、こっから逃げたいんだけど?? どうしたらいい????」
――『んにゃ。大丈夫だぞぉ~~仲間が来たみたいだぜェwwww援軍だ♪wwww』
自身満々に言う竜典の言葉には安心感があって、その言葉も外れたこともないのだ。
浴槽から竜二が立ち上がると、鍵を開けると。
「平気かァ?! おい!」
「そいつぁ~~こっちの台詞だよ! 馬鹿野郎っっっっ‼」
両肩に手を置く翡翠に、胸ぐらを掴んで睨む竜二。
だが、竜二の顔は涙と恐怖に真っ青な状態だった。
そんな弟を翡翠も抱きしめた。
「きもっ」
「キモくねぇだろうが……ったく! 40過ぎの大の男で、群青家の末っ子次男ともあろう男が、年下の訳の分かんねぇ男に掘られ――」
「ってねぇからぁ~~‼ 無事な! 俺の尻は純潔を守り抜きましたー!」
ポンポン、と翡翠も背中を叩いた。
「はいはい。怖い世の中になったもんだねぇ。さて? そんな訳の分かんねぇ男をぶっ飛ばしにいくなら付き合うけどぉ?」
竜二の頭部に顎を乗せる翡翠。
「兄弟で何をしている? 離れなさい、竜二」
鬼の形相で、強張った口調で竜二に言うのは竜之助だ。
それに竜二も、
「えー俺が怒られちゃうのー? おかしくない?? 父さんンん???」
首を傾げながら翡翠から離れた。
「あ! ぁ、あれ? あれっ?? くまちゃん! たくまはどこだよっ! 父さん‼」
竜二の言葉に、竜之助と翡翠が見合った。




