第88話 ガチの親子
行きはどうであれ、帰りはいつだって嬉しいんだよな。
そこに帰る家と。
待って居る誰かがいるんだから。
◆
「ねぇ。父ちゃん?」
「何だ? やっぱり、どっかに寄るか?」
「ぅんじゃなくてよぉ」
かなり遅い速度の車内で、翡翠さんがお父さんに聞く。
どこか顔は神妙なもんだ、どうしてなんだろう。
「結婚……認めんの? 子供はどうすんのよ、《獣王》はどうなんの?」
ああ。そういや、そんな話しもしてたような気がする。
待って、ちょっと待ってくんないかな。
「ほら。基本は本家の子供でしか受け継ぐことが出来ないんだぜ? アレ」
「……甥っ子は2人いるんだ」
翡翠さんのお父さんは、
「どちらかに譲度すればいい。それでこの問題も解決するだろう」
なんて非道で、畜生なんだろう。
おじさんから資格を奪って。
勝手にしろと言わんばかりだ。
(でも。その方が、正直に言っちゃうと。おじさんの為にもなるのかもしんないな)
群青なんかじゃない――早乙女リュージとして生かす。
(……あれ? むしろ。いい人、なのか? お父さん)
「っざけんじゃねぇエ! オイラの息子に手を出すんじゃねぇええ‼」
「ひ、翡翠さん……」
車内に翡翠さんの声が轟いた。
「18歳だぜ!? まだ、18歳だ!」
「もう一人も17歳だが」
ハンドルを握り動揺することなく運転をするお父さん。
運転席を強く、両手で殴る翡翠さん。
「そうだよ! 分かってんじゃねぇかよッ!」
「君は竜二に10歳の時に譲度した癖に、何を今さらって感じじゃないのか」
その言葉に、翡翠さんの身体が大きくビクつくと。
拳を握ったまま納めた。
「父ちゃんは男と、……竜二君が結婚してもいいってのぉ?」
「構わないよ。また、変な女とくっついて、また孕ませるよかいいさ」
え。
今、さらっと重要なこと言わなかった。
翡翠さんの。おじさんのお父さん。
「オイラはさぁ。可愛い義妹がいいなぁ、姉ちゃんもだと思うよぉ」
「竜子も同性婚には賛同してくれたよ。さっき」
「「いつ、話した??」」
そうこう、重要な話しをしているときに限って
家に着いちゃうもんなんだよな。
「ほら。着いたぞ」
「やった! 降りよっと!」
俺がドアに手をやる前に。
がっし!
「??」
翡翠さんとお父さんが、俺の肩に手を置いて。
身体の動きを止めさせた。
「「車内で待っていなさい」」
恫喝に似た空気だ。
「っつ!」
俺もトトナを抱きかかえて頷く他ない。
◆
バーバーバロンの前の一階の、左の一番はじっこ。
「一回だけ。来たことがあるな」
「そぉなの? オイラは頻繁に来てたけどぉ?」
「知ってる。日時も、何もかもな」
冷淡に言う竜之助に、
「……怖っ! 何だよ、それぇ??」
少し、翡翠も距離をあけて歩いた。
その行為に、竜之助の内心はヤバい程に吹き荒れてた。
(かぁーわーいーい~~♪ 盗聴はしてるが、ああ! 動画! 写メぇ~~!)
ただ、あくまでも内心であって。
一切、表情に緩みもない。
◆
ガチャガチャ。
ガチャ。
「っち! 開いてねぇでやんの」
「当たり前だろうが。全く、社会の常識だぞ」
「オイラの家は会社なんですぅ~~閉じまりなんか必要じゃなかったもぉん」
「施錠はしろよ。おい、書類課」
ガチャン!
「「!?」」
騒がしかったからなのか。
中から、鍵が開いたのだが、出て来たのは。
「うっさいですね……人の家の前で騒がし――」
竜之助は拳を勢いよく振りかぶった。
翡翠は腰に両手をズボンのポケットに入れ。
左足を振りかぶった。
「ん?」
親子は一斉に――牌文明を攻撃した。
「「悪かったなぁアアッッッッッ‼」」




