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第87話 帰り道はみんな一緒に

「本当ならよぉ。オイラが手前を助けるべく行くとこだったんだぞ」


 おじさんのお父さんのオレンジ色のワゴン車の中。

 翡翠さんが饒舌にも、あったことを言ってくれた。


 正直に言っていいものかな。


「んなときに限ってよぉ。前の……一昨日までの職場の子達と出くわしちゃってよぉ」


 本当に、言ってもいいのかな。


「パツバレしちまってな。時間も押しちまったもんだからオペレーション室に乗り込んで、手前の倉庫に直でナビしたってんだ。感謝として《Δ硬貨コイン》を寄越せよなっ」


 後部座席で俺と肩を並べて、両方の人差し指を俺に差した。

 思わず、俺は指を平手打ちをして弾いてしまう。

 それには翡翠さんも、弾かれた指を握った。

 

「翡翠さん。いきなり素に戻るの止めてくれませんか?」

「はぁ?」

「すっげぇ~~怖いんでっ!」


「チキンかよ。手前はっ」


 言い合う俺と翡翠さんを、バックミラーでおじさんのお父さんが睨んでくる。

 心臓に悪い視線も、また、堪らなく怖いんですが。


「つうか! 勝手に通信を切るなんざぁ! 愚の滑稽だかんなっ?! あり得ねぇえんだぜぇッ?!」


「っひ! すびまぜん゛っっっっ‼」


 頭を叩かれそうになった俺は咄嗟に、

「あ。奥さんに会いに行ってたってこと??」

 翡翠さんに聞いてしまった。


「そうなのか? 翡翠」


 バックミラー越しのおじさんのお父さんの顔も、どこか引きつっていた。

 強張った表情のような、驚いたような表情をしている。


「だからよォ!?」


 翡翠さんが俺の胸ぐらを掴んで、顔を引き寄せて額を当てた。


「言うなっつぅったよなぁ~~?! オイラさぁあ??」


 ここで《三ツ星に霹靂》を使えたらどんだけいいか。

 正直、横暴だと思うんだよ、これ。


「ああ。だから、素に戻っていたのか、正直な身体だな。翡翠は」


「余計なこと言ってんじゃねぇよ! ぶっ殺すぞっ、手前ッ!」


 おじさんのお父さん、つまりは翡翠さんのお父さんなのに。

 流石に、その言い方は――


「翡翠さん!」


 許さない。


「! ……っち。わぁったよぉ」


 翡翠さんが俺から身体も、顔も離して座り直していた。


「このまま、どこかで飯でも食うか? 驕ってやるぞ」


「!? マジっかよぉ‼」


 目を輝かせる翡翠さんには悪いんだけどさ。


「いいえ。そのまま直行で帰宅して下さい」


「「!?」」


 バックミラーのおじさんのお父さんの顔も、翡翠さんの顔も、凄く悲しそうに俺を見ていたんだけど、そんなのんびりもしてらんないし。おじさんだって。おじさんのお父さんが吐いた嘘に、心配をしてくれているんだろうし。


「……昼時だしな。Δで好きなだけ食わせて――」


「帰ります」


「朝がアレだし。もうちょっと食いてぇんだけどぉ? オイラもさぁ」


「……二人で行って下さい」


 俺の決意に揺るぎはない。

 断固として、もう帰るんだ。


「ひゃん! ひゃん!」

 トトナが俺の膝の上で立って、顔を肉球で叩かく。

「トトナぁ~~止せってば~~」

「ひゃん! ひゃん!」


 俺はトトナを持ち上げて、強く抱きしめた。

 短くも柔らかいパグのトトナ。

 人間の容姿に戻れても、また、パグになってくれるかな。


「「パグ」」

 

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