第81話 たくまを奪還した翡翠
俺を挟んで翡翠さんとジャンさんが睨み合う。
トトナは俺の足元で、ぐるんぐるんと纏わりついている。
「スタートトナぁ~~うっざぃんだけどぉ~~??」
「『‼』」
俺の言った言葉に、トトナの動きが止まった。
でも事実、邪魔だしなんで。
「家でぇ、弟がたくま君を首を長くして待ってんのよぉねぇえ? だからぁ」
目を大きく見開くとジャンさんを見下す翡翠さん。
「返せってんだよッ!」
あまりに低い口調と恫喝に。
「!? ――……お前さぁ? このおじさんに言ってないとか、ないよな??」
目を細めて俺に聞くジャンさんに、俺は顔を背けた。
それにはジャンさんの表情も冴えなくってか。
「たーくーま~~っっっっ‼」
怒りの色に染まっていた。
思わず、俺は耳を塞いでしまう。
翡翠さんも、見開いた目で俺を見ているのが分かるんだけど。
見ることが、直視が出来ない。
「二度と顔を見せんじゃねぇぞ」
そう言い捨てると翡翠さんが俺を抱きかかえた。
いとも簡単に、軽々と。
「っわ゛! っちょぉおお~~‼」
「黙れ」
低い怒りの声は俺にも向けられた。
だから、俺も口を閉じる他ないじゃないか。
「っふぁ、ぃい……」
そのまま自転車に乗ると、ペダルに足をかけた。
もう、発進するという姿勢だ。
トトナは翡翠さんの肩にちゃっかり乗っている。
でもジャンさんは腕を組んでいるだけだった。
慌てる様子もなく、睨んでいる。
ただ、無言で立ち竦んでいる。
「たくま君。きっちぃんとぉ、しがみついててねぇ」
俺は言われるままにしがみついた。
顔は翡翠さんの胸に押し込めて。
「よっとぉ!」
ゆっくりと、漕いで行く翡翠さん。
チャリン!
チャリリン‼
ベルを鳴らして進んで行くのは、多分、従業員の人達がいるからだ。
ザワつく声が聞えるから。
◆
「っは~~怖っ! 何?? あれっ!」
残されたジャンは携帯を取り出した。
そして、耳元に置きながら乗って来た社内車に乗り込んだ。
「あ! 鯨ヶ浜室長補佐官?? あの~~何か変なおっさんに持ってかれちゃったんっすけど!」
◆
「あの……翡翠さん……」
「あぁ゛?」
俺は言わなきゃいけない、それは牌さんにも怒られちゃったことだ。
「ありがとうご――」
「っは~~本当に大変だっただよぉ?? 聞くぅ? つぅか聞いてくんなぁい?」
苛立った声で、俺に言い始めた。
「き、聞きます……その、どっかで。ゆっくりと」




