第77話 翡翠の盗み見
たくまが隊長として仕事をさせられている中。
「くまちゃんー遅ないー兄さんー」
「ん。パン、食っちまうかなぁ」
たくまの分のパンに手を伸ばすと、それを、竜二が皿ごと奪った。
「竜二君??」
睨む翡翠を他所に、立ち上がって台所へと向かって行った。
「ずっこいなぁ……もぉ」
横目でため息を吐くと、翡翠は目を大きく見開いた。
すると、水色の目が――真っ赤に染まった。
この目は祖父である竜典からの遺伝である。
しかしながら、その名前は知らない、教えてもらおうともしなかった。
敢えてだ。
(さぁてとぉ。たくま君はどっこっかなぁ?)
見開いた目には、宙に文字が羅列して浮かび上がった。
ただ、それを視えるのは翡翠だけなのは言うまでもない。
その文字の羅列を追い、名前を見つけると。
「在ったぁ。でわ、よっとぉ」
携帯画面へと転送した。
(どっれ、っどれぇ~~♪)
◆
「何あれ! 何なのあっれぇわぁ゛ああ゛っ!」
おやおや、何か走ってるねぇ、たくま君ってば。
でもぉ、そこは一体全体として、何処なんだい。
コンビニなんかじゃないってのは、一目瞭然だぜぇ。
「本当に! この倉庫はおかしいっだろぉう‼」
◆
手前は知らねえだろうが、そこは異世界と繋がってんだ。
んだから、あちらさんの異人がこぞって、向かって来んのさ。
こっちの従業員と戦うのが生き甲斐なのさ。
ま、向かって来るのは基本が雑魚部隊の連中。
(面倒なのあ、オイラ達みてぇな異人連中……好戦的で、確保部隊をいかに甚振るかの作戦会議までする連中だ。よかったこと……いや、こいつぁヤバいか。たくまは会って、対戦したことがねぇってこった)
オイラも携帯を片手に、苦笑いってか、胸がバクバクバクバクバクし過ぎて見てらんない。
同時に、身体が小刻みに動いてしまう。
あぁ、オイラも探索をしたい。
ようやく父ちゃんからの許可も得たんだ。
たとえ、体質で異人を引き寄せてしまっても。
(死ぬのも本望なんだよねぇ)
オイラは台所の方へと視線を反らした。
きっと、今、アイツが視たら発狂することは間違いねぇ。
ま、視えないんだけどぉ。
(こいつぁ。行っても、バレねぇかもぉ?)
オイラは、そわそわとし出してしまう。
(どういう経緯で、そうなったのかなんざぁ。オイラは興味なんかねぇしぃ)
オイラは携帯へと、たくま君へと戻した。
◆
「本っっっっ当に、怖かったぁああっ!」
息を荒くして立ち止まったたくま君。
倉庫は、恐らく――玩具んところだろうなぁ。
「あの煤みたいのは……本当に何だったんだろう??」
煤みたいのってのは、何だ。
オイラは見てねぇぞ、おいおい。
「しっかし! 今、何時だよっ」
◆
【48:19:00】
ああ、さっき入ったばっかりなのかよっ。
こいつぁ、行ってもいいってもんだろぅよぉ。
「うっし♪」
オイラが立ち上がると、
「? はい、パン」
台所から竜二君が半分に、二つに切った皿の上のパンをオイラに見せた。
「ぅん~~オイラ、ちょっと出かけてくっからぁ」
「!? っはぁー~~??」
悪いな弟君。
オイラぁ、本能に忠実なのよぉ。
「手前はよォ。たくま君が帰って来るまで、お留守番をしてやがれや」




