第75話 阿保と馬鹿
「『……行ってしまったか……』」
トトナは倉庫の前から扉を見据えていた。
たった今、中に入って行った彼の背中を思い出している。
伏せてしまうトトナを、
「まーきっと、彼なら上手く立ち回れるでしょう♪ 隊長になちゃったのが偶然だとしても、運も実力の内なんだから」
抱きかかえると背中を撫ぜるも、トトナも大人しく抱かれていた。
「だから。待ちましょう♪ 手前の大好きな隊長さんを、さ」
◆
【59:14:07】
真っ暗だった中に灯りが燈った。
前々回と前回と、今回とではやっぱり、違うんだ。
「ぅっへー~~……! っそ、そぅだ! ぉ、おおっ! オペレーションンんん‼」
ようやくここで俺はオペレーションのことを思い出したんだ。
蓬田さんと、もう一回、話すチャンスじゃんかと。
わたわたと、俺は《英雄の拳》を嵌めた手を見た。
どっかにあった、何かを探して押すとだよ。
――こちらオペレーション。えぇと……《牛男たくま》隊長、ね? わぉ! 昨日入社で昨日隊長昇格ですってぇ~~?? お前、すっごいんだねぇ~~♪
テンションの高い女の子、多分、まだ10代じゃないのかな。
「あの……オペレーションの、人ですか??」
――ええ! って言いたいところだけど違うんだよね~~母さんの職場でね、届け物をしに来ただけなの。モニターで視えているわよ、初めまして♪ あたしは琥珀っていうの。オペは見習い中なの♪
ブチ。
俺は能天気な女の子、琥珀との回線を閉じた。
蓬田さんじゃないんなら、話すこともないし。
ビィ。
ビィイイイッッ‼
(うん、無視しようっと)
俺は腕を組んで、前を見据えた。
扉の中に入ったのに、どうしてだがショッピングモールのような場所に突っ立っているからだ。
蓬田さんと話せないなら、一刻も早い商品確保をした方がいい。
ビィ。
ビィイイイッッ‼
「ぅっさ……切っちゃえ!」
ビィ。
ビィイイーー……
「さてと――……ぁ、っと……??」
◆
「あ! そういや、忘れてたなぁ~~」
「『? 何がじゃ??』」
思い出したとばかりに身体を大きく撥ねた彼にトトナが聞く。
申し訳ないという表情を浮かべると、
「この~~隊長の証で、道順を知らせてくれるやつをだよ~~隊長各は必須の道具ね~~ほら! 子分を引っ張ってかなきゃなんないっしょ?」
淡々と説明し、ジャラ! とそれらをトトナに見せた。
「『った、たくまぁああああ~~~~っっ‼』」




