第70話 君島の誘惑
(困ったちゃったなー)
ベロベロに寄ってしまった君島を横目に。
竜二も口をへの字にさせてしまう。
「だかえね~~あんたがあんときゅにっきっち~~~~んとねぇ~~~~」
しかも、だ。
竜二に絡んできていて、離れる感じもしない。
「ぅ~~んーぇっとーあべこさん? そろそろ帰る? タクシー呼ぶよ?」
平静を装って竜二が君島に言う。
「きゃえらにゃいっ!」
「えぇー……」
困惑する竜二の正面には翡翠と、そのまま残っている無花果。
たくまも、一緒に飲んでいるのだが。
「「「……」」」
「あのぅー助けて? ね??」
困ってしまった竜二が、半笑いで助けを求めた。
「助けって……おじさん言ってますよ? ひ、ミドリさん」
たくまも翡翠に言うのだが、
「んぅ。じゃ、寝よっかぁ、たくま君」
彼は、全く聞いていないかのようにたくまに言い返した。
そして、立ち上がるとたくまの腕を掴む。
「ほらぁ、立ってぇ。立ってぇ」
「~~……ぁ、はい」
初めてのアルコールもあって。
立ったたくまの足腰はフラフラだった。
「ふにゃ?」
膝が落ちそうになったたくまを。
「よっと! さ。布団に行きましょうっか? お姫様ぁ♪」
お姫様抱っこをして、奥の和室へと向かう。
「あ、俺も泊まっていいれふか~~??」
手を張って、そんな二人に後ろを無花果もついて行く。
「‼ っに、兄さんっっっっ??」
立ち上がろうとした竜二を。
「こにゃあ~~いくらろぉ~~」
君島が抱き着いた。
「!?」
「まらぁ~~のむろぉ~~♪」
「あ、あべこ、ちゃん?? ね? も、寝よう?」
「やらぁ~~~~」
◆
(困ったなぁ)
そうまたため息を吐いた竜二の腕の下には。
荒く息を吐いた君島がいた。
上半身裸で、肌も赤く染まっている。
◇
『しよ? ね? 私、乙女とヤりたい』
◆
誘ったのは君島。
溜まっていて、そんな酔っ払いに乗ってしまったのが竜二。
今、賢者時間に苛まれている。
ただ。まだ前戯であって――後戻りは可能だ。
「ぇえ、っと……」
「っふ……乙女ぇ? んぅ~~っは」
「んぅ」
荒く、甘く息を吐いて自身の偽名を呼ぶ彼女。
「っはー~~……」
当然の竜二も、いい歳をした大人であって。
股間もキツくなってしまう。
「えぇっと……後悔しないかい? こんなおじさんとなんか」
優しく、君島の頬を撫ぜてやる。
それに君島も、甘えるように頬ずをする。
まるで、猫が甘えるかのように。
◇
『あなたが群青の末っ子次男なのか。希少動物だな、まるで』
◆
「‼」
ぼた。
ぼた、ぼたた――……
「ゃ、っぱ……――ごめん、ごめんなさいぃ!」
慌てて竜二が君島から身体を離した。
大粒の涙を流しながら。
「ごめんなさい……ごめんなさいぃっ!」
蹲ってしまう竜二の様子に、
「何を、あやまゆの?」
起き上がった君島が聞く。
「ぉ、奥さん」
竜二の言葉に、左手の薬指を見た。
「私を、見て」
ぶんぶん! と竜二が顔を横に大きく被り振った。
「私は、あんたをみてゆ」
背中に重かったが、温もりが伝わる。
ドキドキ、と早い心臓音。
「さみしいの」
そのまま竜二は起き上がった。
背中にいた君島の身体はひっくり返ってしまう。
「オレも……――寂しいよぉ」
「ん。ね? シよ?」
◆
襖の隙間から、
(そぉ、そぉ! シちゃえ、シちゃえぇ♪)
出刃亀の翡翠がほくそくんでいた。




