第67話 何を食べるの?
「いいや~~これは正直なところ。試合とは呼べるものではないよねwwww」
終えた俺の肩を井之頭さんが、ポンポンと叩いた。
やっぱりなと俺も思った。
「はい……だと、思いますが。背に腹は代えられないし、でも井之頭さんから観ても、そう思ったのに。どうして、俺を勝者にしたの?」
声を潜めて言い合うのは理由がある。
前には項垂れた姿の紫陽花の野郎が歩いているからだ。
「観客が燃える試合には価値があるからね。ま、観ていたのは俺だけだと思うけどね」
高揚する井之頭さんの頬。
この人も興奮をしているようだ。
「今日の試合は、もう中止ですか?」
「だね。会場もしっちゃかめっちゃかだもんな。店長が発狂しそうだ」
「っす、ぃません……」
「いいよ♪ いいよ♪ はい、名刺」
「? 名刺????」
俺は井之頭さんから名刺をもらって首を捻った。
「隊の編成や呼び出しに使えるんだ。QRコードを読み込ませてとか、分からないっか。んじゃ教えてあげるよ」
背中を叩かれて、
「っは、はい……お願いします」
俺も頷いて、お願いをした。
「あ。紫陽花君。君も《引き渡し》の準備をしてくれ」
「分かってるよ! 井之頭さんっ!」
涙声で言い放つ紫陽花が、俺を横目で睨みつけている。
んな目で見られるのは当然だとしても、
(勝ちは勝ちだもんね)
俺は、目を反らした。
◆
向かったのは事務所の中の横にある部屋だ。
「ぅお。何だこりゃあ」
大きなデスクトップに、大きなモニターのタッチパネルの液晶画面。
「社員証を頂戴。オジサン」
「っは、はい! はい! どうぞ!」
「うん。借りるね」
井之頭さんがタッチパネルの下にある社員証と書かれた場所に。
俺の社員証を当てると、
「あ。パスワードを入力して、オジサン」
俺も頷いて押した。
「ほら。立ってないで、紫陽花君も社員証出して、タッチして頂戴な」
「分かってますよ! 分かって、ますってば……っつ」
――《アジサイ》から《オジサン》へと譲度するものを選択して下さい。
→【Δ硬貨】 28Δ
→【P通貨】 3000P
――指定されますか? 全部ですか?
→ 全部
――データの送信が完了しました。
「~~~~何なんだよ! あんたはいつまでアイパッチなんかしやがんだよ! 素顔ぐれぇ見せろよ!」
「あーはい」
ぺりぺり――……
「名前は?! 俺ぁ~~無花果紫陽花ってんだ!」
どうしようと俺は戸惑ってしまって。
俺は井之頭さんを見た。
「まぁ。まぁ~~いいじゃないの。いいじゃないの♪ 職場で会うこともないんだろうし」
「でもさ~~井之頭さん!」
「さ。ささ、お帰り下さい、紫陽花君」
肩を押す井之頭さんに、紫陽花も文句たらたらで出て行く。
かと、思えば、
「これやる! じゃあな! 糞野郎‼」
俺へと名刺を投げ捨てるように渡して、今度こそ出て行った。
地面に落ちた名刺を井之頭さんが拾うと。
「ま。これも何かの縁だから。ね? はい」
「うん。ありがとう」
「で。社員証の隊登録欄がこれでね。俺と彼のQRコードを読み込ませてっと」
→ 井之頭 豊
→ 無花果 紫陽花
――この二名を登録しますか?
→ はい
――データ登録を完了しました。
「はい。これで使い魔が登録されましたってねwwww」
「使い魔って……あ! じゃあ、そろそろ行きますね! ごめんなさい!」
「え。もう行っちゃうの? 一緒に飯って思ったんだけど」
「腹を減らして倒れちゃったおじさんがいるんで!」
俺は慌ただしく事務所から出て行った。
携帯を取り出して、
「あ! 翡翠さん?? 今どこにいるの??」
翡翠さんにかけた。
「えぇ? ここよぉう」
「!? ぇ゛」
事務所前の椅子に腰をかけて。
手を振る翡翠さんの姿があった。
「何か食べに行こう! みんなで!」
「……いいねぇ~~人の金で食べに行くんだぁ~ふぅん????」
「‼ っげ! い、いたのかよ。あンたって、根にもつタイプかよ」
腕を組んで事務所の前の壁にもたれかかった紫陽花が。
苦虫を噛み潰したような表情で俺を見てくる。
「でぇ? どこに食いに行くの? あてとかあんのかよ????」




