第62話 たくまvs紫陽花 開戦
「『オジサンにゲーム説明をするから。もう少し待ってってもらってもいいかな?』」
にこやかに井之頭さんが手を合わせて。
ソイツに言うと、
「いいぜ♪ いいぜェ~~俺は寛大だからっさぁ~~」
ソイツもOKサインをして見せた。
何から、何まで。
俺は苛立って仕方がない、のを顔色でバレていたのか。
「こらこら。戦いはゲームの中でしなさいって」
コツンと、井之頭さんに叩かれてしまう。
「ぁ……はい、すいません」
「じゃあ、まずは♪ この端末で攻撃や防御を覚えてねwwwwはい♪」
俺は勉強が苦手だ。覚えることも苦手だ。
眠くなってしまうのは、誰だってそうじゃないのか。
「あ。ここ重要だからね。何回か視てくれるかな?」
「ぁ。はい」
◆
翡翠は竜二を依然として、背負ったまま。
たくまが上がったステージを見つめている。
「あらあらぁ。何か、井之頭ちゃんが浅知恵を入れて上げちゃってるぅ」
へら、っと笑いながら。
背中でヘタれてしまっている竜二を見た。
「手前の秘蔵っ子の初舞台戦だってのによぉ。お寝んねたぁ~~しょうもねぇ、おじさんだなぁ」
軽く身体を浮かして、態勢を整え直した。
普段の眠たそうな目の中の青い瞳が。
眼鏡越しに真っ赤に染まっている。
「ま。見ない方が正解って、現実もあっしねぇ」
そんなボヤきを漏らしたときだ。
「ん? おんやぁ??」
翡翠のポケットが震えた。
何度も、何度も伝わる振動に。
「!?」
翡翠の目が、細くなっていき。
口もわなわなと震え出してしまう。
頭の中の発信者は――嫁の蓮である。
「っひ! ぁ゛、あア゛っっ‼」
ガタガタと震えながら。
携帯の着信者を確認したところで、身震いも収まった。
「ま。試合の結果なんざ。視えてんのさぁ」
翡翠が吐き捨てると携帯を耳に取り。
身体を翻した。
「はいぃ。もっし、もっしぃ。翡翠でぇっす♪」
ついには。
モブになってしまった翡翠も。
会場を後にするのだった。
◆
「どうかな? 戦れそうかな」
プスプスと音がなるような気分だ。
暗記だって、俺は苦手だってのに。
「ぅ、うぅ゛う゛~~た、分」
「そうか。じゃあ、開戦しょう!」
「っは、っひぃいい」
俺は会場を翡翠さんと、おじさんを探した。
でも、姿がないように思えた。
「ぇ…翡翠、さん? ぉ、おじさん????」
椅子から立ち上がってしまいそうになった俺の肩を。
制止させるかのように、井之頭に押さえつけられた。
「次に立ち上がるのは。君達の《勝敗》が決まったときだよ」
あまりにさわやかな笑顔に。
「ぁ。……はい」
俺も、頷く他ないじゃないか。
「っは! 万年4位の実力に恐怖しな♪」
ウィンクを飛ばしてくる紫陽花に。
反吐が出そうにもなる。
ヘッドギアを装着させる様子に。
俺も装着させた。
時間はかっきり――三分勝負。
【00:03:00】
「《オジサン》――行きます!」




