第47話 魔法使いがやって来た!
誰だって絶望の中で一筋の《奇跡》を望むんだろう。
状況が状況で。
退路も見いだせなかったら。
誰だって神様に助けを望むんだ。
《ワールドルーツ》って通販業界のトップに君臨する会社の。
日本支部の倉庫内は、どこもかしこも隊が《60分》に命をかけて。
商品を確保しに、身を削っているのを初めて俺は知った。
だから、源さんも泣きじゃくっている津軽さんと大怪我を負っている諸星さんが。
ごきゅ、っと俺の喉が鳴ってしまう。
ペーペーの俺なんかを頼みの綱と見ているんだぞ。
緊張しかないじゃないかよ。
下手に、何かを言えばどうなるのかな。
俺の指先が震えた。
「タクマ! 主も従業員であり! 従業員じゃろう!」
俺の口許も震えてしまう。
奇跡ってのは起こすことが奇跡なのか。
訪れたことを奇跡って呼ぶのか。
どちらも知らない俺に、どんな奇蹟が起こせるって言うんだよ。
ねぇ、教えてよ。
「俺なんかが奇跡は起こせない!」
俺は三ツ星を一気に押した。
「魔法使いさんだって! そう思うでしょう!」
【13:09:11】
俺が望むのは奇跡なんかじゃない。
きっとりと、足をつけて解決する方法だ。
【――:――:――】
「『だから、嫌なのwwww子供と関わるのはねwwww』」
泡の中に真っ黒い煙が吹き荒れた。
同時に、俺の首から下げた時計が止まった。
「魔法使いっ! じゃなくて、後方さぁ~~んッッッッ‼」
俺は煙状の後方さんに抱き着こうとしたけど。
相手は煙だもんで、それは叶わない。
すぅうう~~
「『ああ。窮地かなんかっだったりしたのか?』」
っふぅうう~~……
「はぃいい~~」
「『ふぅん? よっと』」
後方さんがアバを解いた。
「ありゃ! ぇえっと、確か~~そうそう。諸星日向君の両腕がないねぇwwww」
「っは、ぃいい~~っ」
「ま。商品確保してボタン押しやぁ治るし。もちろん戻るよ。心臓が止まっててもな」
「……――ぇ゛? っそ、そぅなんですか??」
「ま。ペーペーにゃあちと酷な局面だったかwwwwでも、慣れろ。そしたら、あンたはもっと強くなれる。慣れなきゃ、あんたが怪我を負ってさ~~あのおじさんも、また引きニートになっちまうよ?」
何が楽しいのか後方さんが笑う。
「でもな、肉塊が一部でもなけりゃあ蘇生も出来ねぇかんな? 覚えておけよ、たくま」
「!? っは、はいっっっっ」
「つぅかさ~~何で、俺なのよ~~ほら! おじさんがいたじゃん?? あのおじさんが‼」
「何でって……おじさんのさ。手助け借りたくないっつぅっか~~なんてぇかさぁ~~」
「んで? 魔法使いを呼んだってのwwwwおじさん、泣いちゃうよwwww」
そんなこと言うなんて、俺泣いちゃうんだけど。
ただでさえ、こんな局面だってのに。
「ま。それはそれで正解かもなwwww所詮は群青の人間。戦うことしか頭にない化け物さ」
「っそ、そんなことなんかない! おじさんのこと悪く言わないでくれ!」
「あンたもいつか分かるさ。あれは執念深い異様な馬鹿だぜェwwww」
俺は思わず後方さんの首元を掴んでしまった。
「っざけんじゃねぇ! あんたにおじさんの何を知るってんだよ‼」
後方さんは煙草の煙を俺の顔面に吹きかけた。
「産まれる依然から、今の今までの成長過程を全部? だけど?wwww」
よく意味が分かんないけど。
恐らくは言葉のままなんだろう。
だって、この人は――《魔法使い》だ。
「ほらぁwwwwお手て、お離し? 可愛い可愛いぃ~~たくまっちゃあぁん♪」
眼鏡の奥の目が細められた。
瞳の奥に映る俺の顔は仏頂面になっている。
ああ、本当に。
「……取りあえず。今は打開だけを言ってやんよwwwwそっからはあンたが導くんだぜ。奇跡なんかに頼らねぇ姿勢を、どこまで貫くのか……本当に視ててやんよwwww」
俺はどうしてここにいんのかな。




