第46話 魔法使いからのヘアピン
「馬鹿で下っ端だから……撃沈覚悟で撃沈させようって向かって来るとか」
トトナが言った言葉に俺は絶句してしまう。
だって、そんな特攻みたいなことをして。
仲間が死んでも、顧みずに俺達――《従業員》を。
倒そうと躍起になって飛んでくるのか。
「仲間じゃねぇのかよ! 死んだってのに顔色一つも変えずに来んのかよッ!」
俺はあまりにあまりな異人ってイカに。
怒りが爆発してしまったんだ。
「ま。異人は……戦闘民族? って言やぁええのか知らんが。狂戦士じゃて、本能のままに生きる。そこんとこは地球人も一緒じゃろう? 違うのは――理性や情の楔だけじゃ」
俺の怒りに油を差したいのが、水を浴びせたいのか。
よくわからないトトナの奴。
「わしも血が躍る。今、この場で《繭》開放したいという欲求は持ち合わせておるのじゃが?」
「? 卵がなんだが知らねえけどさぁ。今、この場にいるあんたを俺は地球人だと思ってるよ」
「主は。まだ異人を知らんから、そんなことを言えるんじゃ」
「? そぅかな? んでも。そうかも♪」
深刻な表情を向けるトトナだけどさ。
俺はない頭で必死に考えているんだ。
怪我を負っている諸星さんと泣きじゃぐっている津軽さん。
前だけを見据えている源さん。
トトナは異人だから、手出しは出来ないって言っているし。
ただ。
俺はペーペーだし。
何の案も出せないことが悔しかった。
「? そういや主。その首元のを見せてもらうぞ」
そんな何も出来ない俺からトトナの奴が、何かを抜いた。
トトナの持つピンでようやく取られたモノに気がついた。
「あ! っちょ、ちょっと! 勝手にとんないでくれるか??」
俺も慌てて手を伸ばした。
その手をトトナが掴んだ。
「主! このピンをどこから盗んだんじゃッ?!」
「はァ?? 盗むって人聞きの悪いこと言わないでくんない?!」
「じゃあ! どっからこれを持ってきたんじゃ‼」
口を大きく開けて、俺に怒鳴り散らすトトナの様子に、
「魔法使いから貰ったんだよ! 要らないっつたのにさぁ‼」
俺だって、キレんに決まってんじゃんか。
「――……分かった。今は咎めまい、主。早く、これを使うのじゃ」
「……何? ぇ、これ……ヘアピンだぜ? トトナ、目悪いの?」
「ちーがーうーだーろ~~ぅ?? これは武器専科でも、もう手に入らないとされとる、れっきとした武器じゃ! 2つセットが常じゃが? ま。それも今はどうでもよかろう! ささ、漫才はここまででお開きじゃ! とっとっと……まさか、主――」
「だから、何?? 知んないってっば!」
俺の身体を引きよせて、顔を近づけるトトナ。
顔面のどアップは、流石に地球人じゃないから怖いんですけど。
「ならば、わしが《三ツ星の霹靂》の使い方を教えてやろう!」
三ツ星の霹靂って言うのか、後方さんが強引にくれたやつは。
「今は緊急事態じゃから! MAXの全開で行くぞ‼」
ちょっと意味が分かんないけど。
俺は津軽さんの鳴き声に、諸星さんの苦痛に歪んだ表情とくぐもった息に。
俺とトトナを見る源さんの視線と、目がかち合った。
「何が……起こるんだ? この状況から、何をするつもりだ? トトナ君」
「わしじゃないよ、ゲンジ。このペーペーのタクマが起こすのじゃ」
「え? ぉ、俺が?? 何をぉ、起こすってんだよ??」
「奇跡をじゃよ」
腰に手を巻き、開いた手にピンを置くとだ。
「三つの星を同時に押して願うのじゃ! タクマ‼」
俺に選択肢のない言葉を吐いた。
周りの好気の目と、何とも言えない期待感に。
俺の背筋も冷えていく。
「ぉ、俺が願うのは――」
訳わかんない状況だ。
でも、一心に期待されてしまっている。
それに俺は応えなきゃいけないんだろう。




