第41話 群青一族とトトナ
【51:31:09】
今回の倉庫内部は――《海中》
「ぅ、浮く! 浮く!」
俺は浮きそうになる身体を、何とか踏み留める。
他の従業員は勇ましくも。
手慣れた様子だった。
◇
「ああ! 自己紹介をしなけれならんなぁ! 儂は諸星日向じゃ! 隊のリーダーを務めておる!」
腕を大きく回してにこやかに言う諸星さん。
多分、おじさんよりは若いような気がする。
「それで! こっちの可愛い女性が儂の婚約者の津軽もも花ちゃん!」
にこやかに言う諸星さんを他所に、耳まで朱に染める津軽さん。
「そして、こっちのむっつりスケベなのが源源氏君だ! 彼は儂のお気に入りで、ほぼほぼ、この面子で活動をしておるんじゃ!」
ノリや癖が、どこか叔父さんに似ているような気がした。
どこか懐かしいと思ってしまう。
「ムッツリって何なんすか! もぅ~~はい。自己紹介はどうであれ、僕は源だ。で、こちらの異人がトトナ君で、僕達と倉庫内で敵対する側の留学生なんだ。ほら、トトナ君」
むっつりとトトナ君は腕を組んで見下ろしている。
この俺を。
「主は人間なのか?」
「? ええ、日本人ですが??」
「ほぉん? そうかそうか」
含みのある言い方をして、身体を離していく。
「何なんだよ!?」
◆
ぶくぶくぶく――……
「『っだ、りゃあああァアアアッッッッ‼』」
諸星さんのアバはキメラだ。
豚の顔に猿の身体と蛇の尻尾を振り回して。
鋭利な牙を持つ魚を毒でせん滅していく。
「おっしゃ! すっげ~~諸星さんっ!」
俺は頼もしい諸星さんに拍手をした。
「主。自身も《従業員》だと忘れるんじゃないぞ」
冷やかに言うトトナ。もう、お前なんかに君づけはしないかんな。
「分ぁ~~てる!」
「子供じゃあるまいし」
「ぅっさいなぁ~~もう!」
何かを言えば突っかかるトトナ。
何だって言うんだよ、こいつは。
「『ねぇ、仲良くしなって。今は同じ隊なんだからね』」
源さんの言葉に、俺とトトナが見合う。
それに、
っは!
トトナのドヤ顔と、鼻先の一蹴に。
「無理! 絶対に仲良くなんかできない‼」
俺は源さんに叫んでいた。
「『あー~~そぅ……で。今、時間は?』」
【46:19:12】
「46分です!」
「『ですってー諸星隊長』」
ぶくぶくぶくぶく――……
「『トトナ君。仲良くならんで結構じゃ!』」
諸星さんがトトナに続けて言う、
「『しかし、今は同じ隊員じゃ! 彼に従業員としてのいろはを教えてやってくれまいかな??』」
魚を噛み、手で潰しながら口も動かす。
「『あんただって教育されたじゃろう??』」
その言葉にトトナの口も尖って、頬も膨らませていく。
じろっと俺を睨むトトナ。
「この給料泥棒がっっっっっ」
「!?」
言われた言葉にぐぅの音も出ない。
言い返すことも出来ない。
おっしゃる通りでしかない。
「わしが叩きこんでうやる! 感謝しろよ! ――ウシ!」
「誰が牛だ! っざけんじゃねぇよ! 犬ころの癖にっ」
「誰が犬じゃ! それが教わる態度ってもんか‼ っざけんなっっっっっ‼」
胸ぐらを掴み合う俺とトトナの頭上から。
ガン!
「っだ!」
ゴン‼
「っな、何をするんじゃ! ゲンジ‼」
「『子供を甚振るのは感心しないよ。お前が先輩で大人なんだぞ』」
「――~~っっっっ」
わなわな、と震えるトトナ。
「『きちんと教育をしてくれたなら。そぉだなァ~~あの群青の一族と合わせてやってもいいぞ?? どうだ、会いたがっていただろう? トトナぁ?』」
「‼ 本当か? それは口約束ではないじゃろうなっ? ゲンジっ」
目を輝かせるトトナに俺は、
「え。おじさんに会いたいのか? へぇー」
思わず首を傾げてしまう。
「何を言ってるんだ! あの伝説の一族に会えるなんて! 会えるなんて~~やる気出てキタァあ~~‼」
喜々となるトトナ。
「あのぅ~~時間が進んでるんで。行きません?」
俺はトトナは喜ぶ意味が分からずに。
そう吐き捨てた。
【42:33:03】




