第40話 拉致と招集の隊
「『テンションMAXじゃなぁ~~♪』」
「『諸星さんが《復帰》で嬉しぃっすねぇ』」
そう話すのは、俺を拉致った諸星さんと源さん。
源さんは大きな黒の眼鏡と髪をオールバックにして、後ろで束ねている。
「『儂がいなくて寂しかったじゃろう~~』」
「『僕は交流が出来ない子なんで、この隊だけの勤務なんです! もう二度と《殉職者》の一歩手前の《不可》になんかになんないで下さいね! 僕も生活がかかってるんで!』」
横で目を覆う真似をするのは津軽さん。
ちなみに。
諸星さん → キメラ
津軽さん → 雉
源さん → 雷神
て、アバってる。
その和気藹々な中で、俺は遅れながら走ってついていく。
俺はアバ化できないのが、それだけが悔しかった。
ただ、俺には装備がある。
《約束の指輪》と《英雄の拳》だ。
それと、後方さんから貰った――《三ツ星のヘアピン》もある。
(これで、経験を積んで――)
少し、にやける俺に、
「主、何をにやけておるんじゃ? 仕事中に妄想は禁物じゃろう?」
棘のある言い方で注意するのは――獣人であり。
「っも……妄想って」
異人の留学生のトトナさん。
◇
トイレをし終えた俺を待ってましたとばかりに。
喜々として、拉致った人間が俺の腕を引っ張る。
「これで足りるか?? いや! あと一人ぐらい欲しいもんじゃな~~!」
「何人、揃っているんですか?!」
「ぅんー~~どうんぐらい居ったじゃろうかなぁ~~?? はて……」
首を捻りながら俺の腕を引っ張っていくおじさん。
俺も生唾を飲み込んでしまう。
あっちのおじさんや、あべこさんのときのような安心感がない。
これは俗に言うところの。
(っし、しくったぁあああ?!)
草も生えない状況に、俺は自ら飛び込んでしまったようだ。
冷や汗が至るところから吹き出してしまう。
これ、あかんやつやとばかりに。
勢い、そのままに腕を引っ張られて行ったのは。
勿論、倉庫の真ん前だ。
「日向さん! おっそいぞぉ!」
そう腕を振ったのは、豊満な胸を揺らす女の人。
壁には背中をつけて、俺と諸橋さんを眼鏡越しに見る、多分男の人。
「時間! 時間! リーダー!」
その男の人は時計を指差して急かしている。
「すまん! すまん! ほれ! 人材は確保したんじゃ! 許せ!」
俺の腕を上げて、二人に言う諸星さん。
「ぇ……3人。なんです、か??」
思わず、俺は聞いてしまった。
だって、6人での隊行動だって。
おっさんも言っていたじゃないか。
話しが違うんじゃないのか。
愕然とする俺に諸星さんが指を差した。
「えぇ~~その子ぉ? ちょっとー~~大丈夫なんでしょうねぇ? 日向さぁん!」
「《新人》じゃが! 儂の目に狂いないのあんたも承知じゃろう?? もも花ちゃん」
「他の従業員の前で名前を言うの止めてちゃうだい! 馬鹿‼」
「ぅおおぅ! ぁ、ああ。っそ、そうじゃなァ~~つ、津軽ちゃん……」
半ギレで言うのは津軽もも花さんて名前らしく。
乾いた笑いで日向さんって呼ばれたおじさんも頷いた。
「夫婦漫才はよしましょうよ。リーダー~~」
「ああ。済まないね、源君」
壁から腰を離して、こっちに来るのは源さんって名前らしい。
「さて、と。この隊で商品確保ですか」
「そうなるなぁ~~どっかに落ちて居らんかな~~?? もう一匹くらいは欲しいのぅ」
楽観的に言う諸星さんに、
「そぅですね~~あ! ちょっと、待ってってくださいね~~」
声 携帯を耳に当てて、行ってしまう源さんの背中を、俺と2人が見送った。
「っちょ!? ぇ、ええ゛??」
思わず、俺は素っ頓狂な声を上げてしまう。
でも、すぐに戻っきた源さん。
そんな彼にゲットされて、怪訝な顔をする従業員の1人が連れられていた。
「リーダー~~短期留学生のトトナ君をゲットしてきましたよっと♪」
◆
トトナさんは俺達みたいな耳の箇所から動物の耳を生やしている。
細くつり上がった三白眼と、白茶の髪の毛は短く。
前髪を後ろに束ねて縛っていた。
「っべ、別に妄想なんかしてねぇし!」
あまりな言い様に、俺もトトナさんに言い返してしまう。
この人だけがアバ化しない。
不思議そうな顔をしていたのがバレたのか。
「倉庫に居る人間を敵対するんじゃよ、ここの仲間連中は。じゃから、皆さんは《動物》をメインに《変態》化させて倉庫に入ってお宝を取りに進むんじゃ。そのような知識もないのか主は? まぁ~~《新人》じゃし、その程度の知識もないとは情けないもんじゃ」
間違ったことは何一つとして行っていないってのに。
どうして、こんなに苛立つのか。
多分。
「『トトナぁ~~虐めない! 新人なんだかんね? 君とは出が違うのよ、その子は』」
情けなくて、歯痒くて、悔しくて。
まるっと踏まえて。
現実を当てつけられたからだ。
当然の現実。
必然と現実。
おじさんの傍にいない俺は、この隊とっては。
「だから……言ったじゃないか。俺は、新人だってっ」
どう足掻いても。
やっぱりと言ったところの。
お荷物なんだ。
【56:47:29】




