第39話 行方不明
「ま、迷った……やっばい!」
小田切さんから聞いた通りに来たハズなのに。
ここは一体、どこなんだろうか。
俺は辺りを見渡した。
さっきの場所とは違って。
従業員達が行き交っている。
「教えてもらった路……間違ってた?!」
狼狽える俺なんかに声を掛ける従業員はいない。
そりゃあ、そうだよな。
皆が皆、商品確保に目くじらを立ててんだから。
《P通貨》だの《Δ硬貨》が欲しいから。
おじさんみたいに頑張ってるんだ。
「困ったな……」
俺はどうしょうもなくなってしまう。
だから、もう一回来た道を帰ろうとしたときだ。
「!? あんた、暇か?!」
「‼ ふぇ??」
思わず、俺は辺りを見渡した。
声は俺に話しかけていて、
「ぉ、俺ですか?」
俺は目の前の人を見た。
大きく吊り上がった目、曲がった鼻。
太く大きな眉毛と人懐っこい笑顔をしたおじさん。
「あんたさ~~どこの隊なんだ? 休憩中とかか?」
俺はおじさんの勢いにたじろぎながら応えた。
「ぁ。いえ、その……迷ってしまったんです。俺――」
「じゃあ! 働くか!」
腕に腕を回されて、
「……――え??」
おじさんは俺を引っ張っていく。
「はいー確保~~」
このおじさんは俺の話しを聞くまでもなく。
名前すら名乗ることもなく。
「っちょ! ちょっと! 俺、アバれないから! もってないからぁ~~!」
俺も、このまま連れて行かれるのは。
ヤバいってことを悟って。
声を大にして言った。
「はァ? ないって……あんた。《新人》かァ??」
少し、ため息を吐いたおじさんが。
俺に聞き返したから、俺も必死に訴えた。
「っそ、そうです! ペーペーなんです! お荷物にしかならないんで行けませんンンっ」
こう言えば、きっとこのおじさんも諦めるはずだと思った。
「倉庫に行ったことはないのか?」
「いえ。今日、行きました。2回程」
「規則とかお分かり?」
「ちびっとなら、ですが」
俺は自分で首を絞めていた。
そんなことを言ったらどうなるかなんて。
きちんと考えたら、分かりそうなものなのに。
「儂の隊の《従業員》に欠員が出てな~~困っとんだわ~~あんた、名前は?」
俺よりの低い身長に、昔の親父みたくでっぱった腹。
自信満々に、真っ直ぐに立って俺を見ている。
これはチャンスなのかもしれない。
「ぉ、俺は――牛男たくまだよ」
おじさんなしで経験を積む、チャンスだ。
「あと、トイレ行きたいんですがどこでしょう?? 漏れちゃうぅうう!」
◆
「くまちゃん。帰って来ないー」
そう短く、そわそわと竜二が漏らした。
心配をする彼に翡翠も、
「うんこなんじゃない。ゲリピーかもねぇ」
肩を拳で殴って言う。
「つぅか。アレ、方向音痴なんじゃないのか? 違うのか??」
じゃれ合っている二人にミザリヤが首を傾げた。
「……どういうことだよ」
低い声で竜二も聞いた。
「どういうも何も。しょっぱなから路を逆に行ったぞ」
頭を掻くミザリヤに次いで、
「やっぱりかー何か、逆だとは私も思ったんだよな」
小田切が苦笑した。
そんな彼を他所に竜二の表情が固まってしまう。
「っざけんじゃ、ねぇよ」




