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第31話 終わりのオペレーション

 俺の頬に走る衝撃はおじさんの手が。

 勢いよく当たったからだ。


「ぉ。おじさん……」


「お前! ふっざけんじゃねぇしっっ!」

「ぅ、あ゛!」

 おじさんが俺の胸倉を掴むと。

 身体がじわじわと縮んでいった。

「おじさん」

「お前に俺は言ったよな? 言ったよなぁ?!」

 おじさんは自分の身長が縮んでしまっていることに気がついていない。

 それ程に、怒っているからだ。

「言わなかったかぁ?!」

 俺は軽く首を振った。

 それにおじさんの顔色はさらに真っ赤になった。


「俺の傍から離れんじゃねぇよ! 二度と言わすんじゃねぇぞ‼」


 そう言い捨てると、おじさんは俺の首元から手を掃った。

 そして。


「ぁ、れ?」


 徐におじさんが手を回転させ見た。

 身体は硬直しているようだった。

 俺は、それどころじゃない。

 おじさんに叱咤されて、膝がかくかくしてるし。

 腰も落ちそうだし。


 いや。


 かっくん! って落ちちゃったし。


「あ~~ぁ。こんなんで腰を抜かしてたら、曲者揃いの従業員相手にしたら過労死しちゃうんじゃないの? 精神メンタル面も鍛えた方がいいな。あンたはwwww」


 後方さんが俺の横に腰を下ろした。

 そんな何で、わざわざ座るのかな。この人。

「過労死は嫌ですけど」

「っは! っはっはっは! 俺も、俺も!」


「母さんも過労死だったし」


 思わず、俺は思い出してしまった。

 ほんの少しの過去を。

 

「あぁ~~……なんつぅか。デリカシーなかったな」

「昔だから、もういいんです」


「そう? じゃあ。あンたもそうならないように俺が鍛え――」


 後方さんが言い終わらないうちに、おじさんの手が後方さんを掃った。


「コイツはオレのなの! んだから! お触りダメよー」


 にこやかに、引きつっているおじさんの表情に。

 後方さんも腰を上げた。

「んじゃ。俺はほむほむさんと、まぁ~~た。共同があるから行くな」

「む! むむむ! っわ、忘れておった! っじ、時間は?! ここから間に合うでござ――間に合いますか??」


「誰に言ってんのさ。俺ぁ、魔法使いよ?」


 すぅ~~……


 ふぅー~~……


 煙草を吹かすと辺りが靄にかかったようになって。

 薄くなって消えると。


「いなくなった……てか。倉庫外でもアバれるの??」

「通常は出来ないけどぉ。あの馬鹿は特別っぽくてねぇ。オイラはどうだっていいんだよねぇ」

 首をゴキゴキ! と鳴らしながら言う翡翠さん。

「てか。本当に《パステル46色》って必要だったのかなぁ」


 そんなときだ。


 ピィイイイッッ‼


 俺は思わず自分の軍手を見たけど違った。

 翡翠さんへと《オペレーション》の通知が来たんだ。


「はいはいぃ、っと」


 ――遅いわよ。あ・な・たァアアアア~~っっっっ‼


「!? 竜二君! っぱ、パス!」


 顔を真っ青にさせた翡翠さんが。

 おじさんに軍手を投げ放った。


「ぅえ~~オレェ? もぉーはぁーい。義姉さぁーん、兄さん逃げたんだけど」


 渋々と受け取ったおじさんがオペレーションの人に言う。

 どうも、知り合いみたいだ。


 ――本当に現役に復帰したようね。群青の末っ子君は。


「皆ーそう言うねーそれでー何ですか?」

 おじさんも嫌味を言う。

「小言でも言いに?」


 ――いいえ。職場に家庭を持ち込むことは御法度。さっきキャンセルになった《パステル46色》が再発注になったわ。だから、もう一度。倉庫に入って商品確保に向かって。


 俺は、翡翠さんの手中のモノを見た。

 ああ。

 確かに。


 《P通貨》も《Δ硬貨コイン》も貰えないや。


「それは持ってきたから。もう、達成しているよ。レン義姉さん」


 おじさんも歯を噛み締めた。

 とても、忌々しいといった表情だった。



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