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第29話 殿(しんがり)

 【09:21:19】


 多分俺達は時間を無駄にしまくっている。

 最初から、この現時点まで。


「キャンセルなら退却しよう。時間もないしねぇ」


「それはそれででござるが。未来サキ殿の予知は当たるでござる」

「《P通貨》も《Δ硬貨》もないんだろぉう? ヤル気も失せちゃったんですけどー」


 従業員が集まって喧々囂々と言い合う。

 でも、その中に俺は入れない。

 LVが違い過ぎるから。


(いつかは。俺も、あの輪の中に入って議論をするんだ!)


 だから。

 今は我慢だ。我慢、我慢。


「別に俺だけでもいいぜ? 群青さんも帰っていいし。律さんも帰っていいし。群青の末っ子も帰たっていよ」


 すぅ――……


「俺と、恵比寿君で完遂するからよぉ」


 ふぅうう~~……


「っだ、駄目だ! おじさんはそんなの許さないぞ!」


 おじさんが目を細めて腕を振るった。

 その横で、

「《新人ペーペー》に何を期待してんのよぉ。後方君」

 翡翠さんも苦言を漏らした。


「うむ。お主がれば大丈夫でござろう! 良し! 拙者らは退却でっごっざー~る!」


 ただ一人。

 律さんだけは賛同してくれた。

 よく分かんない人だけど。


 懐の広い、底の知れない怖さも残るけど。


「ありがとうございます!」


 確かにこの人は隊長各の優れた従業員だ。


「たくま! オレが許さないって言ってんだろう??」


「‼」


 低い怒っている口調と表情のおじさん。

 そんなに俺は悪いことをしてるんだろうか。


 しょうとしているんだろうか。


「あンたの許可なんか必要ないんだよ。群青の末っ子さんよォっっ‼」


 声を荒げて吐き捨てると、後方さんも地面に何かを放った。

 あん時のおじさんと同じように。

 ただ、違うのは。

 胸ポケットから小さな瓶を出して、

「そういやあンたに聞きたいことがあったんだわぁ~~」

 水をかけた。


 木が勢いよく生えた。

 あの時と同様に。


 葉のプレートは全てが緑というのも同じだ。


「何様のつもりだ。お前は!」


「《強制退場リストラ》された経験ある? 現役だった時にさ?」

「このオレにそんな経験なんざ、ある訳がねぇだろうっっ‼」


 小走りにおじさんが俺へと腕を出した。

「おいで! たくま!」

「ゃ、やだ! 行かない。ごめん、なさい」


「たくま? たくま‼ オレの言うことが聞けないってのかよ‼」


 苛立った声に、俺もおじさんの顔を見ることが出来ない。

 嫌われるのは嫌だ。すっごく怖い、怖いんだけど。


「聞けないッ‼」


「たくまぁああ‼」


 ぽち!


「はい♪ 《強制退場リストラ》ねっと♪」


 おじさんと、律さんと翡翠さんの姿が消えた。

 残ったのは俺と後方さん。


 【07:31:51】


「この時間で完遂は可能でしょうか?!」


 すぅ~~……


 っふぅううう――……


「ああ。煙草がうめぇや。一本どう? 恵比寿君」

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