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モノガリのユディ  作者: ササユリ ナツナ
第一章 ひとりめ
42/137

42戸惑いの再会

 ユディを呼び出したリコリネは、悄然とした様子で川の流れを見つめ、じっと考え事をしているようだった。

 ユディも静かにその隣に立ち、リコリネが話し出すまでじっと待つ。

 色々あって泣き疲れたリルハープは、だいぶ前からユディの胸ポケットで眠っている。


 やがてリコリネは、意を決してユディの方にフルフェイスを向けた。


「その…主。本日のことですが…」


「ああ、うん。ありがとうね、リコリネ。すごく嬉しかった」


「……? 何がですか?」


「何って…この街じゃなくて、僕の方を選んでくれたこと」


「!?」


 リコリネは、出鼻をくじかれたように凍り付いた。

 ユディはうきうきと話を続ける。


「あの時はさ、もう心の中では『ざまーみろ』って叫びたくなってたんだよね! これでリコリネは正真正銘、僕のだぞって。人と何かを競り合ったことって、生まれて初めてだからさ、勝つって、あんな感じなんだね? ものすごい達成感っていうか、やったーっていうかね! ああ、人じゃなくって、モノと競り合った? あははっ、変な感じ!」


「主……テンションがおかしいです……」


「ごめんごめん、だって本当に嬉しかったから」


「あの…お怒りではないのですか? 私が、主に歯向かったことについて」


「うん? だってあれは仕方がないよね。それとも、本気でこの街の側につこうか悩んでいたの?」


「いえ、滅相もありません。あの時は、自分のものではない使命感にひたすら突き動かされておりました」


「そうだよね!」


「し、しかし、それはそれとして、私は詫びねばなりません。それが、自分の行動に責任を持つということです」


「…うーん? 君の気がすむんだったら、それでいいけど…。でも、なんだか嫌だな。モノのせいで背負った責任を、君が取る必要はないよ。いちいちそんなことをしていたら身が持たないんじゃないかな。そもそもこれは、そういう旅でもあるんだし」


「…そう…ですね。確かに、最初からそういう話でした」


「なんていうのかな…僕としては、次からも遠慮なくリコリネはかどわかされてもいいと思うんだよね! 何度だって僕が助けに行くよ、お姫様! なんちゃって!」


「………」


 はしゃいだような声を上げるユディに、リコリネは絶句した。


「ちょっといいよね、ヒーローみたいで。その時が来た時のために、決め台詞とかも考えておくべきかなあ」


「……あの、主」


 リコリネは、とても言いづらそうな雰囲気を発しながら、控えめに声をかけた。

 ユディは、楽しくて仕方がない顔を向ける。


「なんだいリコリネ」


「申し訳ありません……そろそろ恥ずかしくて見ていられないのですが……」


 ユディは、ぴたりと動きを止める。


「え……なにが……?」


「何と言いますか~~…」


 いつの間に起きたのか、胸ポケットからリルハープが、ひょこりと顔を出した。


「例えるなら、ずっとモテなかった男の子が、生まれて初めて告白された時の舞い上がったテンション、みたいな感じで、痛々しいです~~……」


「!!!!(がーーん)」


「い、いえあの、今回のこと、主が気に障っていらっしゃらないのであれば、それで本当に、よかったです…!」


 リコリネが必死で話を元に戻そうとしている。

 しかしユディは、周囲の言葉が耳に入っていないかのように、ショックを受けたままだ。


「そ、それでは、明日の復興活動のために、私はそろそろ眠りに行きますね」


 リコリネは耐えきれずに、そそくさとその場を立ち去る。


「リコリネ待ってください~~、リルちゃんも行きます~~!」


 リルハープは、のんびりと羽を震わせて、パタパタとリコリネを追いかけて行った。


 後には、悲しげな顔で、川の水面を眺めるユディだけが残された。



-------------------------------------------



 次の日から、本格的な復興作業が始まった。


 ユディは前日受けた精神的なショックで死んだ目をしつつも、街を解放したモノガリの恩人、という立ち位置で、代表者であるデギーデジーの補佐と、食事係をやることになった。

 最初はそんなことで役に立てるのか心配だったが、今誰がどこに居て、何をしているか、どこまで作業が進んでいるか、という全体を把握する者が一人いるだけで、みんな動きやすそうだった。

 昼と夜には、音の精霊の奇跡で全員の疲労を癒していく。

 意欲にあふれた人々は、おかげで存分に動けると喜んだ。


 デギーデジーは、何の能力も持たない男だった。

 しかし、本当に一生懸命に動こうとしていることだけは、ひしひしと伝わってくる。


 希望の街の全員が、「デギーさん、畑はこの地区に作ったほうがいいですよね?」などと、さりげなく誘導をするように話しかけ、デギーデジーは嬉しそうに頷いていくことで作業が進んでいく。

 誰一人デギーデジーを侮ったりはしなかったし、むしろニコニコしながら、必死に作業を覚えて行こうとするデギーデジーを見守っていた。

 リコリネが、「きっと彼はいい町長になるでしょうね」としみじみと言っていたのが、ユディの印象に残った。



 やがて、商人からの知らせを受けた、大河の街の騎士が数人、調査にやってきた。

 ジャンティオールに会えるかとちょっと期待していたのだが、事態が事態だけに、やってきたのはベテランの騎士だった。


 事件の性質上、ユディはモノガリであることを話さざるを得ず、騎士たちも面食らったように話を聞いていった。

 結果的には、復興の手伝いができるかどうかを上に打診すると言ってくれて、一応何の問題もなく話が進みそうで、ユディはホっとした。



「すみません主、数十日の滞在の予定だったのですが…」


 ある日の夜、リコリネが食事をとりながら、申し訳なさそうにそう言った。


「ううん、正直楽しいよ。みんなで何かを作っていく感じって、僕は初めてだから。でも、ついつい長居しちゃいそうで、それだけは怖いかもしれないなあ」


「ふふ、期日を決めるのも手かもしれませんね」


「そうだねえ。人が暮らすためにやっていくことって、こんなに後から後から出てくるものなんだね。なんだか、まだ面白いよ。竜の夢は醒めたはずなのに、今この瞬間こそが夢みたいだ」


「ご主人サマは、本当に大事に世界と関わっていく感じですね~~…。また離れ難くなっても知りませんよ~~?」


 リルハープの言葉に、ユディはスっと死んだ目になる。


「まあね。痛々しい思春期だからね……多感なんだよ……」


「ご主人サマったら、先日のことを気にしてます~~! 残虐王子ル・フリクスっていうのがいましたが、ご主人サマの場合は、残念王子ユディエルですね~~!」


 リルハープのツボに入ったのか、きゃらきゃらと腹を抱えて笑っている。


「二つ名までつけるのは流石にやめてよ!?」


 抗議するユディに、リコリネもひっそりと、肩を震わせて笑っていた。




 なんだかんだで、一ヵ月以上が経過した。

 最低限の生活ができるくらいの建物がたち、食料の供給も無難に行えるようになってから、ユディたちは引き継ぎの作業に執心する。


「ええっ、ユディさんたちは旅立っちまうんで?」


 一番驚いていたのは、デギーデジーだった。


「いやはや、あっしは勝手に、一緒に暮らしていくもんだとばかり! そういやモノガリとかの使命とやらがあるんでやしたねえ、すっかり失念していやした! 次はどちらへ?」


「はい。ええと、最初は大滝の村に寄る予定だったんですが、もう直接、海峡大橋のある宿場町の方に行こうかなって」


「ああ、そりゃ残念だ…いや、もちろん、快く送り出す気ではいるんですがね!?」


 慌てて付け足すデギーデジーの横合いから、もう顔見知りになった住人が顔を出した。


「じゃあちょうどいい、商人さんの様子を見てきてくれないか? あっちの方に、新しい鳥車を調達に行ったまま、なかなか帰ってこないよな?」


「ああ、そういえば…。結局、騎士団からも音沙汰がないような?」


 ざわめく住民たちに、リコリネはたしかに、と思案気な仕草をした。


「そういえば、日々を暮らすのに集中しておりましたが、もうだいぶ経ちますね。何かあったのかもしれません。我々が見てきましょう。とは言っても徒歩ですので、すぐに行けるわけではありませんからね、気長にお待ちいただければと思います」


「へい、そりゃもちろんで! 姉さん、よろしくお願いしまさあ!」


 デギーデジーは代表者になっても、いまだに腰が低い。

 その日は住民たちと最後の挨拶を交わしてから、ささやかなお祝いのような食事をとった。



 翌日。


「デギーさん、これ少ないですが、復興資金の足しにしてください」


 ユディは見送りに来た人々の前で、デギーデジーに小分けにした金銭袋を手渡した。


「へえ!? いや、でも…」


「餞別、という感じなので、黙って受け取っていただけると助かります」


 仰天するデギーデジーにユディは微笑みかけ、リコリネも言葉を添えた。


「もちろん余剰分であり、我々の必要な分は確保しています。それに私は旅先で賞金首を狩れますのでね、ご安心ください。むしろ金銭で済ませようとする辺りは、若干、はしたなくも感じますので、お恥ずかしい限りですが」


「い、いやとんでもねえ! ありがたく使わせていただきやす!」


 デギーデジーは焦ったように言葉を被せて、袋を掲げてみせる。


「よかった。それじゃみなさん、お元気で!」


 ユディは手を振って歩き出す。

 「元気でなー!」「気を付けてー!」「またいつかー!」という人々の声が、背を押すように、しばらくの間響き渡った。



「…妙な気分です」


 しばらく行くと、リコリネがぽつりとつぶやいた。

 ユディは、リコリネに目を向ける。


「…鐘の音が聞こえないのが、寂しいから?」


「…はい。ふふ、主もそう感じていましたか」


「うん、ちょっとだけね」


「リルちゃんもです~~。希望の街にも、いつか鐘の音が響き渡るといいですね~~っ」


「そうですね。いえ、きっとそうなるでしょう。誰も何も言いませんでしたが、あの音を懐かしく、そして愛おしく思っているのは間違いないですから」


 3人で顔を見合わせて、笑い合った。


 目指すは海峡大橋だ。



-------------------------------------------



 商人の様子が気になるという意見は一致したので、ユディたちは、通常よりも少し足を速めた。

 体力面では自信が無いユディだが、長旅を経て、そこそこ健脚になってきた気がする。

 3人で、体調面に問題がありそうだったらすぐに言うこと、という約束をして、先を急ぐ旅というものをやってみることにした。


「わき目もふらずに前へ進むご主人サマって、ちょっと珍しくっておもしろいです~~。これはこれでありですね~~、黙っていればかっこいいですし~~」


「またそういう憎まれ口をたたくー。僕は色々寄り道したくなる癖があるから、必死で前だけを見ているんだよ。そういうリルハープは何の問題もなさそうで、安心したよ」


 ユディは、ちょっと困ったように笑いながらも、妖精への負担がそれほどでもないとわかり、内心で安堵していた。


「面白いですね。ただ歩く旅でも、このように変化を持たせられるとは。私は主と居る限り、何かに飽きるという日は来ないような気がします」


 リコリネは相変わらず大袈裟だ。

 ユディ自身も、もうちょっと苦痛なものかと思っていたのだが、リコリネとリルハープが楽しそうにしているだけで、特に苦も無く移動を続けていくことができた。


 旅はトラブルもなく順調に続き、予定よりは早く目的地が見えてきた。




「……え?」


 あまりに既視感のある光景に、ユディは驚きの声を上げる。


 なぜか閉まっている門の前で、数人の騎士が顔を突き合わせて何かを話しあっているのが見えたのだが、そのうちの一人がすぐにこちらに気づき、とても嬉しそうに手を振っているのだ。

 まだ遠いが、その輪郭には確かに覚えがある。


「ジャン殿…に見えますね?」


「やっぱり?」


 リコリネの言葉に、ユディはちょっと声を弾ませた。

 リルハープは、こそこそとユディの胸ポケットに入っていく。

 それを確認すると、ユディとリコリネは、小走りに海峡大橋の宿場町へと近づいて行った。


「ユディ君!」


「ジャン! どうしたの、こんなところで!」


 ユディの問いに答える前に、ジャンティオールは胸を張って騎士たちの方を振り向いた。


「ほら、待っていればきっと現れるって、ジブンの言った通りでしょう! この方々が、圧殺鎧鬼のリコリネさんと、ユディ君です! このお二方は、無敵のコンビなんス! きっとこんな騒動、パパっと解決してくれるっス!」


 ジャンティオールは、我が事のように自慢げにしている。

 騎士たちは、「おお…」「この方々が…」と言いながら、期待を込めてこちらを見てきた。


 勝手に話が進みそうなので、ユディは急いで話に割り込んだ。


「待って待って! ジャン、どういうこと? 何か事件が起きてるの?」


「そうっス、実は…」


 言葉を続けようとしたジャンティオールは、驚いたようにユディの後方に目を向けた。


「……?」


 ユディとリコリネは、釣られたように背後を振り向き、そして驚愕した。


 物凄い土煙が見える。

 瞬く間に近づいてきたそれは、全力で走らされている鳥車だ。

 よく見れば騎士団のマークがあるので、どこかの街の備品なのだろうが、それにしてもあの勢いで止まれるのだろうかと心配になるほどの速さだった。


「ハイヨー!」


 しかし御者は手練れらしく、随分と手前で鞭を振るうと、鳥車はすぐに向きを変え、ぐるっとUターンするような軌道を描いて、ザザザアっと急ブレーキをかけた。

 とても、大事な荷物が乗っている時の動きではない。


「おっしゃ間に合ったーー!!」


 鳥車の幌の中から、放り出されるような勢いで、一人の騎士がバッと飛び出してくる。


「…ウェイスノーさん!!!?」


   ザザザザーーーッ!!


 足の裏ですべるような着地を決めたウェイスノーは、ユディとリコリネの姿を認めると、瞬時に何かを理解したように表情をこわばらせながら、着地の勢いのまま、ジャンティオールに突っ込んできた。


「っっこの、大馬鹿野郎が!!」


   ガッ!!


 いきなりの出来事に、誰も反応ができなかった。

 ウェイスノーが、ジャンティオールを殴り飛ばしたのだ。


「!?」


 ジャンティオールは、成す術もなく殴り飛ばされ、ドサリと倒れ伏した。


 ウェイスノーは、ハアハアと荒い息を吐きながら、さらにジャンティオールの胸ぐらを掴み上げようとする。

 その中で、誰よりも早く冷静さを取り戻したのは、リコリネだった。

 リコリネは、慌ててウェイスノーを羽交い絞めにする。


「ウェイスノー殿、どうされたのですか? 落ち着いてください」


 ウェイスノーは、信じられないとばかりにリコリネを振り向く。


「落ち着けって…、どこまで人がいいんだよ! あんたたち、今こいつらに利用されようとしてたんだぞ!!」


「「え…?」」


 驚きの声を上げたのは、ユディと、そしてジャンティオール自身だ。

 ウェイスノーは、ジャンティオールの様子に苛立ったようだった。


「ジャン! お前今自分が何をしようとしてたか、マジでわかってねーのかよ!? ニーサンとネーサンは、一般人だぞ!? 簡単に巻き込もうとしてんじゃねーよ!! 1級案件だぞ!!? お前がやろうとしたのは、体のいいことを言って関係ねー一般人を死地に向かわせる卑怯者の行為だぞ!!」


「……!! あ……」


 ジャンティオールは、殴られた時よりも衝撃を受けたような顔をした。

 ウェイスノーは、すぐに他の騎士たちも睨みつける。


「いや、まだジャンはマシなほうだ、どうせ憧れが先立って、後先考えてなかっただけだろうからな! 最低なのは、てめーらだよ!! 大体どんな話がされたのかは想像がつくぜ、ジャンを止めろよ!! 俺らが先に命張らずに、何が騎士だってんだ!!?」


 騎士たちは、ぐっと声を詰まらせた。

 しかし、一歩前に出る騎士も居る。


「だが、もう、何人もやられているんだ、隊長だって…! もう、打つ手がないんだよ…!!」


「騎士王はどうしたんだよ!! あの人がこんな事件を知って、じっとしてるわけねーだろ!?」


 ウェイスノーの言葉に、別の騎士が首を振った。


「おそらく、情報が途中で止められている。まず間違いなく、騎士王まで報告が届いていないだろう」


「……はあ!?」


 ウェイスノーは、あまりのことに、二の句が継げないでいる。


「理由は、今お前が言った通りだよ。あの方が知れば、必ずこっちへ来てしまう。それを防ぐために、上が止めているんだろう。いや、止めるどころか……。実は今、海峡大橋が封鎖されてしまっているんだ」


「な……」


「上は、この宿場町に、ヤツを閉じ込めるつもりだ。住民を犠牲にして。俺たちも命令に従って、こうしてこちら側の扉を閉じることしかできなかった」


 ウェイスノーは、乱暴にリコリネを振り払うと、怒りに任せて、ガンと閉じられた扉を殴りつけた。


「どこまで腐ってやがる……!!!」


「……すまない。住民には家から出るなとは伝えている。本当に今、ギリギリの状況なんだ。各街に増援の応援を要請して、今に至っている」


「あ、あの、先輩、す、すみません…!!」


 おそらく応援として駆け付けたのだろうジャンティオールは、目に涙を溜めながら立ち上がり、ウェイスノーに謝った。

 ウェイスノーはそのまま、ゴツンと額を、閉じた扉に当てて、なんとか落ち着こうと深呼吸をする。


「………いや。先に、ユディのニーサンと、リコリネのネーサンに、謝るべきだろう。俺も、すまねえお二人さん、いきなり割り込んだ上に、乱暴に振り払うなんてしちまってさ…」


「いえ、私のことはお気になさらず。ジャン殿もです」


 リコリネは、本当に気にして無さそうに即答した。

 ユディもそれに頷く。


「それよりも。何が起きたんですか? 僕たち、今来たばかりで…」


「……今すぐ回れ右して帰れ、って言っても、無理そうか?」


 ウェイスノーは、困ったような顔で、改めてユディとリコリネに向き直る。

 ユディもリコリネも、硬い表情で頷いた。


「まあ、そうだろうな…。くそ、戦力はこれだけか、モタついてると犠牲が出る、マジで頼るしかねーのかよ……!!」


 苦悶に満ちた表情を浮かべながら、ウェイスノーは辛そうに眉間のしわを深めている。

 ユディは、真剣な顔で、一歩前に出た。


「ウェイスノーさん、どの道僕たちは、この先に向かう用事があるんです。言ってください。きっと手伝えることがあります」


「ウェイスノー殿。いかな淫祠邪教の徒が待ち受けていようとも、必要とあらば私は立ち向かう所存です」


 リコリネの中で、邪教の使途が相手というシナリオが勝手に出来上がっているようだ。

 たぶん、『地上最強の騎士』のストーリーにそういう場面があったんだろうな…とユディは心の中で冷静に判断する。



 ユディたちも、そして騎士たちも、今や全員がウェイスノーに注視していた。

 いきなり現れた彼が、この場の全権を握っていると言わんばかりに。


 ウェイスノーは、ぐしゃぐしゃと頭を掻いて、長く息を吐いた後。

 意を決したように、顔を上げた。


「出たんだ。―――『皆殺しのキルゼム』が」


「キルゼム!」

「一等級の!」


 ユディとリコリネは、ようやく事情を理解した。

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