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モノガリのユディ  作者: ササユリ ナツナ
第一章 ひとりめ
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39鐘の音

 ユディたちは、西の宿に泊まってからは、のんびりとした日々を過ごした。

 しかし、なぜかジャンティオールが毎日のように顔を出しに来る。


「ジャン、騎士の仕事は大丈夫なの?」


 ユディの問いに、ジャンティオールは顔を赤らめながら、はにかむように笑う。


「ちゃんと見回り時間の隙間とか、門番の仕事終わりに来てますから、大丈夫っス! ユディさんたちがあと数日でこの街を離れてしまうと思うと、つい名残惜しくなって…足を運んでしまうっス。ご迷惑でしたか?」


 ユディはちょっと驚いた後、照れたように笑う。


「ううん、なんだか…友達ができたみたいで、嬉しいよ」


「友達……」


 ジャンティオールは、びっくりしたような顔で、ユディをじっと見た。


「じゃあこれからは、ユディ君って呼ぶっス!」


「あははっ、だったらジャンは僕に対して敬語もやめないとね!」


 笑い合うユディとジャンティオールを、リコリネとリルハープはあたたかく見守った。




 ジャンティオールに休日が訪れると、遊びの誘いにきたりもする。


「ユディ君ユディ君、今日はジブンと遊ぶのと、リコリネさんに鍛えて貰うジブンを観察するのと、どっちがいいっスか?」


「何その不自由な二択!」


 考えてみれば、友達ができたのは生まれて初めてのことで、ユディはくすぐったい日々を過ごす。


 リコリネは、日記を書き貯めておきたいので…、とユディを遊びに行かせた。

 一緒にギッコンバッタンをしながら、ジャンティオールとは色々なことを話す。


「ユディ君は何のために旅をしてるっスか?」


「何のためって…どうしたの、急に」


「いや…。ユディ君が、ずっとこの街にいてくれたら、ジブンはすごく嬉しいなって…」


「………」


「あ、ごめん、真面目に受け取らなくていいっス! でも、旅人さんなら、たまにはこの街に寄ってくれたら、嬉しいなって…」


「…そうだね。全部が終わったら、ここは通り道だろうから、ちゃんと顔を見せに来るよ」


「ああ、そうっスよね、よかった、ここが必ず通らなきゃダメな立地で!」


「でもジャンはずっとこの街担当なの? 騎士って、移動とかがありそうな印象なんだけど」


「あー、確かにたまに移動があるっス。でもそれは、隊長格とかの、偉い人だけなんで。偉い人があんまり同じ場所に居続けると、魔が刺した時にそれがまかり通ってしまうからって理由らしいっス。ほら、ジブンみたいな立場だと、強行されると上には逆らえないから…」


「なるほど…。でもそうなると、ジャンは隊長格とかを目指してないってこと?」


「そ、それは、カッコいいし、できたらいいなとは、思うっスけど…!! でもやっぱり、今はまだ遠い遠い目標に感じるっス。でもでも、必殺技名はもう考えているんス! くらえ、シュプリッツクーヘン!」


「名前から先に考えるもの!?」


「へへー、こないだ、寝てる時にふと思いついた技っス。ちょっとカッコいい響きだから、必死に書き留めたんス!」


「あははっ、確かに一撃必殺な感じの名前の響きだね!」


「ジブンは目にもとまらぬ連撃なイメージをうけたっス! あーあ、リコリネさんくらい強くなれたらなあ。海賊船を真っ二つにしたとか!」


「あれねえ、なかなか信じて貰えなくて困ったんだよね…」


「そりゃそうっス! うちのとこの騎士団でも『まさか』って感じで、ウェイスノー先輩からの情報ってのがまた信ぴょう性を薄れさせたというかなんというか」


「ええ? ウェイスノーさんってそんな立ち位置なの?」


「飄々としてるじゃないっスかー。まあ、ジブンは結構お世話になってきたんで、やる時はやる人って知ってるっスけど」


「ああ、それはわかるなあ。僕もウェイスノーさんには、決めるときは決めそうな印象を持ってるよ。…そうだ、話は変わるんだけど、リコリネが甘いもの好きだから、何かお土産を買って帰ってあげたいんだけど、なにかないかな?」


「それならおすすめのパン屋さんがあるっス! 宿の食事で出るパンとは一味違ってて、シナモンシュガーとかが、噛んだ時にザクザクいうくらい甘いやつとかがあるんスよー」


 ジャンティオールとは、本当に他愛ない話ばかりをした。

 ユディはそれが、なんだか楽しかった。



-------------------------------------------



 リルハープが、木の実をハチミツで炒ったお菓子を気に入ったので、ユディはこれでもかというくらいそれを買い占めておく。

 あとはいつも通りの旅支度をするだけだ。

 そして、いよいよ出立の時が訪れた。


 ジャンティオールは、わざわざ休みを貰って来たらしく、涙ぐみながら西門の方まで見送りに来てくれた。


「ユディ君ユディ君、あの、気を付けて…! 次は大滝の村っスよね? ジブンたくさん情報集めたんスけど、なんでも最近、道中で行方不明者が出てるとかいう話なんスよ…!」


「え!? いきなりな話だね…?」


 驚くユディの隣で、リコリネは淡々と聞き返す。


「注意喚起も特にされていないということは、ようやく表立ってきた情報ということですか?」


 ジャンティオールは、神妙な顔で頷いた。


「まさにそうっス。最初にうちのとこの騎士団に来たのが、荷物を取り扱う運び屋がまだ辿り着かない…という捜索願いからっス。そうしたら、ここ数か月で何人か、海峡大橋を通ってこちらへ来たはずの人が行方不明になっているとか。逆に、こっちから海峡大橋の方へ向かう人も、ちらほらと居なくなっているようなんス」


「それは、かなりの事件に聞こえるんだけど…!?」


「いえ、盗賊海賊待ったなしのご時世っスから、悲しいことに、年に数人なら普通にあり得る数字っス。それに最初の行方不明者が出てから、念入りに人の出入りを照合してみても、きちんとこの大河の街に辿り着ける人は居るんス。だから断定をするには判断材料が足りないってことで、混乱を避けるためにも、上の人は様子見をしていたとか。個人的な活動ならともかく、騎士団なので、腰は重いんス」


 ユディの戸惑いに、ジャンティオールは普通に返事をする。

 リコリネは、ふむと考えこむように、フルフェイスの頤に指をあてた。


「それが、ようやく情報が解禁されるまでの事件だと判断されたというわけですか」


「そういうことっス。たぶんここから、たどり着ける人とそうでない人の違いは何なのかとか、街道の調査とか、詳しく動ける段階になって行くんだと思うっス。ごめんユディ君、こんなギリギリになっての情報で…。もっと早く知っていたら、ジブンはユディ君たちの護衛として同行できるように申請してたのに…」


「ジャン…ありがとう。気持ちだけで十分嬉しいよ。僕の方こそ、ジャンの方を手伝えなくてごめんって思ってるから、お互い様だね。僕たちばっかり危ないみたいに心配してくれてるけど、ジャンだって騎士なんだから、危ない所に突っ込んで行かないか、僕は常に心配をし続けるだろうと思うよ」


「! そうっスね、そしたら、本当にお互い様っスね! なんだかスっとしたっス」


 ジャンティオールは晴れやかな笑顔で笑い、片手を差し出した。


「そんじゃ、お互いに気を付けようってことで、いさぎよく送り出すっス!」


「…うん、また会おうね」


 ユディははにかみながら、ジャンティオールの手を握り返した。

 ジャンティオールは、ユディの手を強く握って、離せないでいた。


「…名残惜しいっス」


「…僕も。だけど、行くよ。元気でね?」


 ジャンティオールは言葉も返せずに、ただ、くしゃりと顔を歪めて笑った。

 ユディはそっと手を離し、背を向けて歩き出す。


 何度も振り返った。

 そのたびに、ジャンティオールが遠くで手を振ってくれているのが見えた。


「…ねえ、リコリネ」


「はい」


「お別れすることに慣れる日って、来るのかな?」


「…正確なところを申し上げますと。『来ないでほしい』と思いますね。そういったことに慣れないでいる方が、主らしいと思いますので」


「そういうもの?」


「そういうものです。もちろん、私の中にも葛藤はあります。そういったことに慣れて頂いた方が、主は生きやすいのではないかと、ちらりと考えてしまうからです。主にとって負担のない方がいいとは思うのです。ですが我が主は、そういえば自分からモノノリュウの退治という、生きにくい道を選ぶ人だったなあ…と思い直しましたので、やはり意見は変わりません」


 ユディは困ったように微笑んだ。


「生きにくさで言うと、君も負けてないと思うけどね?」


「従者は主に似るということでしょう」


 しれっと答えるリコリネに、ユディはため息をついた。


「僕が、君を従者だなんて思ったことは一度もないって、わかってるくせに」


「…ふふ。線引きは、厳しい所で…ですよ。では、行きましょうか。人攫いの根城へ」


「リコリネの中で勝手に修羅ストーリーが膨らんでいます~~!?」


 それまで黙していたリルハープが、思わずユディの胸ポケットから顔を出した。

 リコリネは、ハッとする。


「…そうでした、無事に大滝の村までたどり着くのが一番でしたね」


「まったく、リコリネは油断をするとすぐに人修羅になるのですから~~」


「主を惑わす羅刹を斬るためならば、私は何にでもなりましょう」


「もーー、リコリネ、また僕を戦闘シミュレーションの中で殺すのはやめてよ?」


「何を言うのですか、主。主に降りかかる火の粉を想像するのは、防衛の上でとても大事なことなのですよ」


 いつものように雑談交じりで、街道沿いを歩いていく。

 ユディは最後に一度だけ、ちらりと大河の街を振り向いた。

 もう、水位の観測塔のてっぺんしか見えないくらい遠い。


 別れに慣れる日は来なさそうだが、リコリネとリルハープと過ごす時間を大事にすることならできるな…と思った。



-------------------------------------------



「地図上で見たら、貝の村と大河の街の間よりは近く見えたんだけどなあ…」


「ですね。やはり潤の大陸は大きいということですか」


「なんだかんだで数日は経過しているのですが、見えませんね~~、大滝の村~~…」


 リルハープはいつものように、パタパタと上空を飛んで様子を見に行く。

 しばらくして、不思議そうな顔をして戻ってきた。


「ご主人サマ、おかしいです~~っ、道が二手に分かれています~~!」


「…ええ?」


 怪訝な顔をしながらも、とりあえずリルハープの案内に従って、ユディとリコリネは先へと進んでいく。

 やがて、道案内の看板が立っている三叉路にたどり着いた。

 全員で看板を覗き込むと、「↑この先を北 大滝の村」と書いてあるだけで、西に延びた道の説明はなかった。

 ユディは首を傾げる。


「本当だ。北に大滝の村があるのは合ってるはずなんだけど、悪戯ってわけじゃないよね…?」


 リコリネはしばらく考え込んだ後、なるほどと呟いた。


「わかりました。旧街道ですね」


「旧街道…って?」


「かつてはこの西の方角にも街や村があり、そこに向けて伸びていた街道があったということです。今では使われなくなったため、このように看板を立てて案内をしているのですね」


「あ、なるほど! わざわざ道を埋めるのも経費が掛かっちゃうからか」


「そうなります。となると、この西の方角には廃墟がある可能性が高いですね。廃墟には、盗賊などが居つきやすくなるという話ですから、ひょっとしたら行方不明騒ぎに一役買っているのかもしれません」


「ええ…? そうなると、ちょっと悩むね。このまま通りすぎてもいいのかなって」


「ご主人サマはお人がいいのですから~~っ。リルちゃんは、わざわざ危ない目に合いに行くのはお勧めできません~~。それに、こういうときのために騎士団が居るのですから、そのお仕事を奪うのもどうかと思いますよ~~!」


「…確かにそうですね。主が被るリスクを回避するのも、騎士の務めです」


 リコリネは、何かを思い直すように背筋を伸ばした。

 ユディは、素直に頷く。


「そうだね、わかった。じゃあ、北へ行こうか」


 その時だった。



   リーンゴーン、リーンゴーン―――



 遠くから、とても大きく澄んだ鐘の音が、空をすべるように降ってきた。


 「え?」という顔で、ユディたちは辺りを見渡す。


「なんでしょう~~、お昼の鐘でしょうか~~?」


「…あ、そっか、時間帯的にはそうだね。そういえば叡智の街でもお昼に鐘が鳴ってたなあ…。ライサスさん、今頃どうしてるだろ。ちゃんとお昼食べてるかなあ、あの人」


「久々に思い出しましたね~~、もはや懐かしいです~~っ。というか今の音、西の方から聞こえてきませんでしたか~~?」


 ユディとリルハープが話し合っている横で、リコリネは無言で一歩を踏み出した。


「リコリネ…?」


 ユディは思わず、リコリネを目で追う。

 いつもの全身鎧の姿では、なかなか変化を見破るのは難しいが、今回は歩き方に違和感を感じた。

 いつも凛とした姿勢で、確たる足運びを見せる姿が、そこにはなかった。

 ふらりと、何かに引き寄せられるように、リコリネは西に続く道へと歩き出す。


「…様子が変です~~!」


 リルハープはあわあわしながら、リコリネのフルフェイスの前をパタパタと飛び回る。


「リコリネ、どうしたのですか、リコリネ~~!」


 ユディも急いでリコリネの隣まで走って行き、覗き込む。


「…聞こえていない?」


「ご、ご主人サマ、どうしましょう~~! まるで操られているみたいです~~!」


 リルハープからはいつもの勝気な様子が失せ、泣きべそをかきながら、ひたすら狼狽している。

 リルハープのその言葉で、ユディはようやく理解した。


「あ、そうか、僕にはなぜか精神的な攻撃が効かないんだっけ? でも、これって、どういう…」


 数歩歩いたところで、ユディはバッと道の先を見やった。


「―――!」


「ご主人サマまで、何かあったのですか~~!?」


 凍り付いたように動かなくなったユディに、リルハープはいよいよ本格的に泣きそうだ。

 ユディは首を振るう。


「違うんだリルハープ。この先…かなり遠くの方に、モノオモイの気配がある―――!」


 リルハープは息をのんだ。

 

「リコリネ、リコリネ!」


 ユディが肩をゆするもリコリネの歩みは止まらない。


「ご主人様~~、リルちゃんに考えがあるのです~~!」


 身振り手振りを交えて説明するリルハープにユディは息をつく。


「音には音ってことだね…うーん、他に手はないか。ごめん、リコリネ!」


「行きますよ~~っ! てりゃーーっ! リルちゃんキーーック!!」


   パッコーーン!


 清々しい音がした。


 リルハープの蹴りをもろに受けたフルフェイスは、衝撃で仰け反った状態になると、たっぷり数秒ほど、そのままの姿勢で硬直している。


 ユディとリルハープは、固唾を飲んでリコリネを見守った。


「……はっ、私は、一体…?」


 我に返ったリコリネは、きょろきょろと周囲を見渡す。


「リコリネ、よかった!」

「リコリネ、おかえりなさい~~っ」


 ユディとリルハープは、やんやとリコリネを取り囲む。

 リコリネは、まだ戸惑いの渦中にいた。


「なんでしょう、ぼんやりとしてしまって…? ひょっとして私は、何かご迷惑をかけてしまったのでしょうか?」


「ううん、むしろリコリネのおかげで、僕はモノオモイの気配に気づけたよ。一緒に西側の道を進んだのが良かったみたいだ」


「そうですそうです、リコリネのお手柄です、偉いですよ~~っ。リルちゃん鼻高々です~~!」


 ユディとリルハープの笑顔を見て、リコリネはほっとした。


「モノオモイ…というと、先程の鐘の音が何か関係しているのでしょうか?」


「たぶんそうだと思う。この先に何かがあるのは間違いないよ、行ってみよう。リコリネは大人しくしていていいからね」


 ユディは、表情を引き締めて、リコリネを守るように、先頭を歩き出す。

 リコリネは、数秒間立ち尽くした後、居心地が悪そうにユディの後ろをついていく。


「……主。失態を晒しておいてこう言うのは気が引けますが…。私が守られる立場というのは、その……恥ずかしいのですが…」


 すると、ユディは意地の悪い顔で振り向いた。


「そう言うと思った」


「! 主は一体誰に指南を受けているのですか、意地の悪さがパワーアップしています!」


「あははっ! 憤懣やるかたないって感じの君が見たくなってさ、思った通り、可愛いね」


 リコリネは二の句も告げずに、悔しそうにうつむきながらついていく。

 リルハープは二人の様子を見て、とても上機嫌だ。


「まったく、のんきなものですね~~、この先に何があるかもわかりませんのに~~」


「メリハリだよ、メリハリ。ちゃんと引き締めるときは引き締めるからさ」


 リコリネに何事もなかったことが嬉しすぎて、ユディはテンションが変になっていることを自覚していた。


 しかし、覚悟していたほどの距離は歩かずに済んだ。

 道の先に、街が見えてきたからだ。


「あれ…? こんなところに街って、地図にはなかったと思うけど…」


「門番が居ませんね、無防備な街です」


「リコリネはいつも気にしてる内容が無骨すぎます~~っ」


 不思議がりながらも、3人は開きっぱなしになっている街の門を素通りした。


「!?」


 即座にリルハープは、ぴゃっと飛んでユディの胸ポケットに潜り込む。


 子供たちのはしゃぐ声、商売人の客引きの声、荷車を押す人足達、散歩を楽しむ老夫婦。


 目の前の光景は、人通りがあり、活気にあふれる街でしかなかった。


 ユディもリコリネも、入り口近くにある街の案内看板の前で、茫然と立ち止まる。


 その看板には、こう書かれてあった。



   『ようこそ、大滝の街へ!』



「大滝の…街? 村じゃなくて?」


「幻の精霊につままれたような気分ですね」


 ユディもリコリネも、首を傾げることしかできない。


「ええと…。とりあえず、廃墟に盗賊団が居ついていて…っていう話じゃなさそうだね?」


「そうなりますね。行方不明者は、大滝の村と間違えてこちらへ来てしまったということでしょうか…?」


「でもでも、この案内板によると、ちゃんとこの街にも滝があるようですよ~~」


 こそっというリルハープの言葉に、どれどれと案内板を見直す。


 ここは川沿いの、しかも下流にできた街らしく、巨人の階段のような地形で、川上から滝が降りてきているようだ。


「あ、この中央にあるのって、『水脈みおの鐘』って書いてあるよ」


「水脈の鐘ですか、風流ですね。さしずめ音の通り道に適した道筋を示す鐘…ということでしょうか。道理で遠くまで音が響いたわけです」


「恋人の待ち合わせスポットとかになりそうな響きです~~っ、見てみたいです~~!」


「よしよし、じゃあせっかくだし、様子見がてら、ぐるっと回って滝を見てから、鐘の方に行ってみようか」


「は~~い♪」


 ユディはすっかりリルハープに甘くなっていて、最近では彼女の願い事には決して嫌とは言わなくなっている。


「って、すっかり観光気分になってたよ、ダメダメ、気を引き締めないと…!」


 ユディは一度首を振って歩き出す。


「申し訳ありません主、私も少し楽しくなってきていました」


 リコリネもしっかりと背筋を伸ばしてついていく。




 しかし、浮足立った彼らは気づいていなかった。

 全身鎧のリコリネという珍しい姿を、通りすぎる人の多くが、一度も振り向かなかったことに。

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